中休み
次回更新は四日後になります。
読んでくださる方ありがとうございます。
闘技大会予選が終わった次の朝。
お布団から出られない俺の上に、寝ぼけて乗っかるシャルルがいる。
幸せの重みと表現すればいいのか謎ではあるが、嫌な重みではないのは確かだ。
「おーいシャルル、朝だぞ。」
反応は無くて眠ったままだ、しかしそろそろ起きないとリュリーティアさんに叩き起されるので何とかしないとな。
あれ? そういえばリュリーティアさんの姿が見えない、露天風呂にでも行っているんだろうか。
考えていても意味がなさそうなので行動を開始する、まずは上のシャルルをどうにかしよう。
俺の体に横一文字で寝転がっているので、掛け布団をめくり巻き寿司のように丸めて転がしてどかす。
「シャルルの簀巻き姿……写真撮ろう。」
簀巻きにされても起きないで気持ちよさそうに寝ているシャルル、なんか可愛いのでとりあえず写真に収めておくことにした。
複数枚撮って満足したので敷布団を軽くたたんで、室内を軽く見渡す。
「あれ? タオルの枚数が減ってないな。」
タオルの仕舞い場所を覗き込んでみると、昨日確認した時と同じ枚数のタオルが置かれていた。
はて、リュリーティアさんは何処へ行ったのか。
「朝食までには帰ってくるとは思うがな。」
リュリーティアさんなら特に心配をする必要もないだろうけど、まずはシャルルを起こしてしまうか。
簀巻きのシャルルを解放して、ただのシャルルに戻してから揺さぶって起こす。
「うへへ……ボクは出店まだ食べ尽くしてないよぉ……むにゃむにゃ。」
「おいこらシャルル、食いしん坊にも限度があるんだぞ。」
「へぇ……? ああ……おはようトージぃ、そしておやすみなさーい……。」
おでこをペシペシと軽く叩いて起きたと思ったら、また寝ます宣言をされてしまった。
こうなったら最終手段を使う。
「朝ごはん」
「ゴハンっ!! あれ、ゴハンは?」
「はそろそろ来るかもな。」
「トージ、ボクを騙したね!?」
「騙すとは人聞きの悪い、俺はただそろそろ朝食かもなって言っただけじゃないかぁ〜。」
「むぅ……トージ、食べ物の恨みは恐ろしいんだよ。」
「ごめんなさい。」
シャルルは目を妖しく光らせながら歯をガチガチと鳴らしだしたので、恐怖を感じた俺は速攻で折れて謝った。
「あれ、リュリーティアはお風呂?」
「俺もそう思ったんだけど、そうじゃないみたいだぞ。」
「ふーん……。」
急にシャルルが鼻をひくつかせてスンスンとさせ始めた、いやいやそれで分かったらもう犬みたいなものだぞ。
「多分、外に出掛けたんだと思うよ。」
「マジで分かったのか!? 恐ろしや、シャルル。」
こんな朝早くから出掛ける用事なんてあったのかな、それも予選終わって次の日に。
「むむむ、分からん。」
「むむむ、わかんなーい。」
「おお? そうやって真似する子は、簀巻きにしちまうぞー!」
「わはーやめてー!」
「わっはっは。さて遊びはここまでにしておいて、リュリーティアさんを探しに行くか?」
「うん! 消えたリュリーティア、謎に包まれた朝ゴハンの献立、ボクの鳴り続けるお腹、これは難事件になりそうだよトージ……。」
数話で打ち切られそうな内容だ。
シャルルのスーパー嗅覚で外にいる事は分かったのでリュリーティアさんの捜索を開始する。
捜索ってほど真剣に探してはいないがな。
「シャルルくん、ニオイはどっちに向かっているか分かるかね?」
「はい! クンクン、えーと、あっちだよ。」
「ホント警察犬みたいだな……。」
「ケーサツ剣? それって強い!?」
「強いぞ、噛みつかれたらひとたまりもない。」
「剣なのに噛むんだ〜、面白い剣だね〜。」
「いやいや、噛まない犬種はないだろう。」
「え?」
「え?」
俺とシャルルは一体何の話をしているんだろう。
リュリーティアさんへの道のりは迷わないけど、会話は迷宮入りしてしまった。
「そういえばこっちの道って、リュリーティアさんはサラマッドを出てるって事か?」
馬車で通った道を思い出しながら聞いてみる。
「ニオイはこっちに向かっていってるから多分そうだと思うんだけどなー。」
平野へと向かう道には特にお店は無かったはずなので、だとするとサラマッドの外に行ったことになる。
本当に何をしに外に行ったのだろうか。
そんなこんなでサラマッドを抜け外に出て周囲を見てみる、すると平野のある一帯で異様な光景を目にした。
「あ、ねぇねぇトージあれって。」
異様な光景とは、朝日を受けて軽く輝きを反射する綺麗な金と銀が混ざったような髪の毛。
凛とした構え、まるでそこに存在する何かを切り払っているかのように見える、流麗な剣捌き。
そしてある一帯と表現したのには理由があり、地面が膨らみ土を隆起させて円を作りだしているからだ。
しかし普通驚くそんな光景を目にしてもなお、それを行う人物に目が引かれてしまう。
「綺麗だ……。」
真剣な表情をしながら恐らく鍛錬をしているであろうリュリーティアさんの姿は、とても美しかった。
自然と口からそんな言葉が漏れ出てくる、その言葉を聞いていたシャルルがニンマリと笑う。
「な、なんだよシャルル。」
「んふふ別にぃ〜。ほら、じっと見てないでリュリーティアのところに行こうよ。」
そう言ってシャルルはリュリーティアさんの元へ駆け出す、慌てて俺も追いかけることにする。
「おーいリュリーティアー!」
「シャルルさん、おはようございます。闘司さんも。」
「お、おはようございます。」
少しどもりながら朝の挨拶を交わす。俺、変じゃないよな?
「さっきそちらで私をじっと見ておりましたが何かありましたの?」
「気づいてたんですか。」
「それはもちろんです。それでどうされたのでしょう、もしかして朝食のお時間ですか?」
「それもありますけど、リュリーティアさんがどこに行ったのか気になって探しに来ちゃいました。」
「ねえリュリーティア聞いて聞いて! さっきトージがリュリーティアをじっと見ながら、綺麗だって言ってたんだよ!」
「わっそれは言わなくていいよシャルル!」
シャルルの口を塞いでこれ以上喋らせないようにする。
モガモガと何か言おうとしていたが、やがて観念したのか大人しくなったので解放する。
「それはそれは、闘司さんは私に見蕩れていたからそこでじっと見ておりましたのですか。」
「うぐぐ……。」
見蕩れていたのは確かだけど、見蕩れていた本人に改めて言われると恥ずかしくて顔が熱くなってくる。
「至極当然のことでしょうので恥ずかしがらなくてもよろしいですわ、どんどん私を見つめてご覧なさい!」
そう言って俺に向かい両手を広げて受け入れのポーズを決める。
「……リュリーティアさん、そんなキャラでしたっけ?」
「ええ。」
「本当に?」
「……はいですわ。」
「本当の本当に?」
「ああもう分かりましたわ! ええそうです、褒められて照れておりますのよ! これで満足ですの!?」
「ぎゃあ! 危ないから剣を振り回さないでください!」
「まったくもう、突然そういう事を仰らないでくれます!? こちらにも心の準備というものが……。」
「ねーボクお腹空いたー。朝ごはん食べに戻ろうよー。」
ヒートアップしそうなリュリーティアさんをスルーして、空腹の主張をするシャルル。
元の原因はお前なんだけどそこの所分かっているか? いやあの顔は分かっていない顔だな、今日の朝ごはんに想いを巡らせてる顔だ。
そんな発言に意を削がれたのか、リュリーティアさんは落ち着きを取り戻してシャルルの提案を了承した。
「鍛錬より今のやり取りの方が、どっと疲れましたわ……。」
「なんか、ごめんなさい。」
「別にいいですわよ。褒められて、嫌ではありませんでしたから……。」
「えっ?」
な、なんだ今の発言は? それにその照れや拗ねが合わさったような表情はなんですか!?
「なんでもありません。そんな事より闘司さんには後でお話しがありますので。」
お、お話し!? この流れでお話しとは一体どんな素敵イベントが待ち受けているんだ、ドキドキとワクワクが合わさりなんだかワキワキしてきたぞ!
「何をニヤけているのか不明ですが、お話しとは闘司さんがマリーさんに負けたことについてですので。」
とっくん、とても、こわかったです。




