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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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サラマッド闘技大会予選

俺の頭は単純な作りをしているようで、特製朝食を食べて身体中から活力が溢れ出そうである。

この有り余るエネルギーを無駄にするのは勿体ないので有意義に使う事にした。


「あははグリンダルよりデカいかなー?」

「うーんグリンダルさんはまだまだ遠いなー。」


シャルルを肩車しながら会場まで歩いている、肩車をして筋力を使うことで予選に対するウォームアップになるし、シャルルを喜ばせるという俺の精神的ウォームアップにもなってるので一石二鳥だ。


「ボクもトージやリュリーティアくらい大きくなったら届くかなぁ?」

「それでも足りなそうだな。」

「じゃあじゃあ三人で肩車すればいいんだよ!」

「面白そうですわね、下が闘司さん真ん中が(ワタクシ)で上がシャルルさんとすればグリンダルさんに届きますでしょう。」

「俺の負担が多いですね……。」

「ちなみに(ワタクシ)(またが)るのではなく立ってやりますのであしからず。」


それは絶対肩が痛いやつですよね俺。

まあ跨られて密着されたら、俺も理性とか何やらを保つのが大変なのでご遠慮したいけど。

しかしシャルルが成長して俺くらいの大きさになるか、きっとその頃には顔立ちも今のあどけなさが残るモノから凛々しいモノになるんだろうなぁ、すっげー見たい。


「闘司さん何か顔が少し気持ち悪いですわよ。」

「将来の楽しみを想像していただけなんですけど……。」

「あらそうでしたか、それなら失礼しましたわ。」


謝られても俺はどういう反応をすればいいんだ。

それより、身長か。

横目で俺の隣を歩くリュリーティアさんを見る、目線はほぼ平行線だ。


「どうされましたの?」

「いや、俺とリュリーティアさんの背丈はどっちが高いのかなとふと思いまして。」

「それなら(ワタクシ)ですわ。」

「即答ですか。」


少しムッとした、いくらなんでも背丈は俺の方が高いはずだぞ、きっと。


「不服そうですわね。」

「そりゃまあ。」

「じゃあ比べてみればいいんじゃない? ちょっと降りるねトージ、よっと。」


シャルルは俺の肩からおりて手を引っ張る、同時にリュリーティアさんの手を引っ張って両者を背中合わせにくっつける。


「むむ……一緒、あれ少しリュリーティアが、高いかな?」

「そんなバナナ!?」

「バナナケーキは美味しいですわよね。」

「美味しそう〜。」


寒いギャグを殺してほんわかな空気を出すんじゃありません!

待て待て、俺がリュリーティアさんより小さいなどあってはならない。なんでかって? みみっちい男のプライドだよコンチキショー!


「待つんだシャルル……その判定は正確ではない。」

「潔くないですわよ闘司さん、なにが正確ではないと仰るのですか?」

「リュリーティアさん、その靴を脱いでもらえますか?」

「闘司さん……?! 公衆の面前で性癖暴露しないでいただけます……?」

「だぁーらっしゃい!! その靴こそが俺とリュリーティアさんに差を生む元凶! それを除けば俺の勝ちは揺るがないはずです!」


靴底を見るに多少ではあるが厚底と思われる、これさえ無くなれば判定は覆るはずだ。

リュリーティアさんは俺の迫力に押されたのか渋々靴を脱いでくれる、ぐっ……タイツ越しなのに足が綺麗だと分かるなこの人。

いかんいかん今は勝負の世界、色香に惑わされるなど愚の極み。

再び背中合わせで並んでシャルルに比べてもらう。


「んんー、トージ……いやリュリーティア……これは、一緒だね!」

「なんだと……。」


背伸びしながら手を伸ばして俺とリュリーティアさんの頭を行ったり来たりして確かめてくれる。

だが何回確かめても結果は同じようで変わることはなかった。


「一緒ですか、そうだと思いましたわ。」

「さっき自分だと即答したじゃないですか。」

「過去は振り返りませんわ、それにしても闘司さんはなんで背丈に(こだわ)りますの?」

「だって、……じゃないですか。」

「なんです? 聞き取れませんでしたわ。」

「だって、背が高い方がカッコイイじゃないですか!!」


恥ずかしい……こんな事を大声で言ってしまうとは……。


「ぷっ……あはははははは! くっふふふふ……ハーハーハー……。」

「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!? 結構大事なことなんですよ!」


涙が出るほど可笑しかったなんて……うぅ、凄い(へこ)むぞ……。


「ご、ごめんなさい。決して侮辱(ぶじょく)して笑った訳ではありませんの、ただそんな事で拘るのが面白くて……。」

「面白がってるじゃないですかぁ……。」

「ふふ、すみません。ただ闘司さん、これだけは覚えておいてください。」


まだ少し目尻に涙を残しながら、こちらを向いて綺麗な笑顔で言い切る。




容姿(みてくれ)の格好良さより、芯ある生き方を志す人の方が、(ワタクシ)は格好いいと思いますわよ。」




ピンとは来なかった、しかし心にズンと(えぐ)りこまれた。

芯ある生き方か……それはどういうことなのだろう、今の俺は出来ているのかいないのかそれすら分からない、分からないがその生き方を目指したくはなった。

だってそうだろう? こんな素敵な人がこう言うのだから、目指す理由には充分だ。


「あと強い人もカッコイイですわ、なので闘技大会頑張ってください。」


なんかもう色々台無しだぁ。

予選頑張るか……。








鉱山町をぐるりと回って裏側の闘技大会会場へとやってきた。

時間にはまだ余裕があるけれど、参加者と思われる屈強な戦士達が付近に集まっている。


「うへぇ……素人ながらも殺気のような圧をあそこから感じるんですけど……。」

「あの程度の殺気なら、キングワータイガーの方が格段に濃密な気を放っていましたわよ。」


さすがにあんなデカブツと比べちゃダメだと俺は思いますけども、それよりリュリーティアさんの声が思ったよりも通ってしまい、少し挑発した発言に怒ってる感じの人とかがこちらを睨みつけてくる、やだ怖い。



「キングワータイガーが何か知らないが、こんなチンケな殺気に関しての部分はは同意見だねリュリーティア。」



後方頭上からいきなり声を掛けられる、一瞬グリンダルさんかと思ったけれどあの人はもっと上から声が飛んでくるから違うな。

ということはつまり。


「連敗の方ではありませんの。」

「リュリーティアさん、それはあまりにも失礼が過ぎるのでは……?」

「別に気にしちゃいないよ、次勝てばいいだけさ。それより闘司とリュリーティアは酒場で会ったけどシャルルはサラマッドに着いて以来だねぇ、元気してたかい?」

「うん! もうモリモリ元気が溢れてるよ!」

「あっはっは、そうみたいだね!」


マリーさんは大きな手でワシりとシャルルの頭を掴み、グワングワンと揺らして回す。


「うわー! 目が回るやめてー! あはははは!」

「はいはいごめんよ。」

「それで? どういった御用ですの?」

「いやなに、予選でコロッと落ちていなくなるんじゃないよと応援しにきてやっただけさ。」

(ワタクシ)はコロッといなくならないので……なるほど、つまりは闘司さんの応援ですか。」


実力に見合った自信をお持ちで羨ましいですよリュリーティアさん、その通りだと俺も思いますけど。


「リュリーティアは相変わらずだねぇ、だからこそ早く本戦で闘いたいってもんだよ!」

「ブロック分けは抽選なのによくそう思えますわね。」

「これは勘だけど、リュリーティアとは本戦で同じブロックになりそうな予感がするのさ。まあ別に一緒じゃなくても、結局決勝で一緒になるんだからどっちでもいいんだけどねぇ。」

(ワタクシ)もそんな気がしますわ。それと、ウチの闘司さんは見た目より手強いので油断しない方がよろしいですわよ?」


見た目より……俺もっと筋肉つけようかな……。


「どっちにしろ楽しみなのは変わらないね! さて、アタイはそろそろ行くとするかね、アンタ達は早く受付で選手確認を済ませてきなよー。」

「マリーまたねー!」


マリーさんは手をブンブンと振りながら立ち去っていった、シャルルも負けじとブンブンと手を振っていた。可愛い。


「ではマリーさんも仰っておりましたし、受付で確認を済ませてしまいましょうか。」


前回参加登録をした場所と同じところに受付はあった、受付の人も同じ人で俺の顔を見て軽く頷きながら二人分の確認を済ませてもらい、本日の内容を教えてもらう。


「予選の内容ですが、試合をしていただきます」

「試合、というと……。」

「はい、ご想像通り戦闘を行っていただきます。しかしご安心を、予選はたった一戦の敗北で落ちることはありません。」


なにもご安心してはいないです。


「こちら側で無作為に相手を選ばせていただいた三名と試合をしていただきます。そのうち二勝してもらえれば本戦へと進めます。逆にいきなり二敗すると、残り一戦残っていようがその時点で本戦には出場出来なくなります。」

「えっ!? む、無作為にですか?」


それは、ちょっと困るぞ。だってもしリュリーティアさんと当たったとしたら、なんというか残念な空気が流れそうじゃないか。

しかし受付の人は軽く笑って、俺の考えを呼んだかのような言葉を発した。


「族長様からは闘司様とリュリーティア様の振り分けを、本戦だけでなく予選の分まで宜しくとお伝えされております。なのでその心配は杞憂ですよ。」


そうだったのか……それにしてもグリンダルさんは闘技大会に詳しいな。

いや族長だからと言われたらそれまでなんだけど、予選の内容まで把握しているものなのだろうか。

でも闘技大会に対してホクホク顔で経済がどうのこうの言っていたから、それぐらいは知っているに決まっているか。


「後は以前お話した戦闘時のルールが予選にも適用されます、もう一度お聞きしますか?」

「いや、それは大丈夫です。」


たしか武器は持ち込みNGで大会側の武器を使用、魔法使用は可で武器に付与は無し、相手をノックダウンか降参を申告させるだったな。


「承知しました、それでは予選が開始されるまでもうすぐだと思いますので少々お待ちください。」

「はい、ありがとうございます。」


受付から離れてリュリーティアさんに今の内容を伝える。


「なるほど、分かりやすくて助かりますわ。三人くたばらせるだけなんて楽勝ですわ。」

「いやいや話を聞いていましたか? 二勝したら本戦出場なんで、三人くたばらせる必要ないですから……。」

「ちっ……。」


今この人舌打ちしませんでした?


「まぁこんな内容でしたら本戦出場は確定ですわね、ハナさんのお食事の活力が有り余りそうですわ。そうですわ闘司さん、予選前に手合わせしません? 本気で。」

「嫌ですよ!!」


手合わせなんて冗談じゃない、そんな事したら疲労で予選の試合に負けるのが確実だ。

大体リュリーティアさんは楽勝でも俺にとっては一戦一戦が本気なのだ、次戦に向けての温存だって出来やしないんだぞこっちは!

常に相手より強くなれるといっても、本気で頑張って相手より格上レベルになれるのだから辛いものだ。

ジワジワと迫るプレッシャーなどに溜息をついていると、袖をクイクイと引っ張られる。


「トージ、カッコイイところ見せてね!」

「ちょー頑張りまぁっす!!」

「チョロ過ぎですわね。」


うーん、今ならなんでもやれる気がしてきた。






「はーはっはっは! シャルルぅ、俺の勇姿をしっかりと見ておけよォ!」

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