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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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弱いが強い

 一軒家の大きさを超える物体が派手に転がっていく。

 それだけで近くに建つエルフの家を粉砕し、土埃を盛大に巻き上げていく。

 ド派手に吹っ飛んでいったマウントグリフォンを呆然とした顔で見る俺とシャルル。

 何が起きたのかさっぱりと分からない俺たちに代わって、周りのエルフ達が説明してくれた。


「おい何だ今の。あの人間がマウントグリフォンを吹っ飛ばしたぞ」

「何か魔法でも使ったんじゃないのか?」

「いや、あの人間はスライムに負けたって聞いたぞ、そんな奴がマウントグリフォンを吹っ飛ばせるか?」

「魔法って言ったってシャルルが使ったのよりも強い魔法を使ったって事か?」

「知るかよ!」


 うーん、信じられないけど俺がやったらしいことは分かった。

 シャルルを庇おうとした時にぶつかったのだろうけど、そうだとしても俺がミンチになっているはずではないだろうか。



 いや、待てよ?

 これってもしかしてスキルの力なんじゃないか?

 ベビースライムにやられたお陰で忘れそうだったけど、相手より少し強くなるってはずだから今の俺はマウントグリフォンより少し強い状態なんだ。

 よしよし、そうと分かったら気持ちが少し楽になる。


 まだ舞う土埃の中から叫び声と鳴き声が同時に聴こえてくる。

 どうやらまだマウントグリフォンは倒れていないようだ、大変面倒なことに。



「シャルル、アイツは俺が倒す」

「えっ? いやトージ、その……大丈夫? どこか頭とか打ってない?」


 たった今、心に傷を負いました。


「とても信じられないのは分かる、でも実は俺には隠された能力があるんだ。それを使えばあんなヤツ楽勝さ!」

「だ、ダメだよ! もう殆ど村の人達は森に避難出来たからトージも一緒に行こう? とてもじゃないけど勝てないよ……だから、ね?」


 シャルルは俺がベビースライムにやられた所を見ているから俺の身を案じてくれているのだ、信じられないのも無理はない。

 正直あの長老たちのところに戻ると、捕まって生贄にされるんじゃないかと心配なので戻りたくはない。

 マウントグリフォンと戦う方が精神的にマシなのだ。


「シャルル、俺がアイツを吹っ飛ばしたの見ただろ? 俺ならアイツと渡り合えるんだよ。」

「いや、でも」


 キュロオオオオオオという鳴き声と共に土埃が吹き晴れた。

 マウントグリフォンが羽ばたいたことによる風のせいだ。

 どうやら相手さんは話し合いの時間はくれないようで、すぐにでも襲いかかってくるようだ。

 俺はシャルルを守るように前に出る。



「クソっ! シャルル、さっきみたいな魔法ってまだ出せるのか?」

「えっ……う、うん大丈夫だよ! でもどうして?」

「俺がアイツの攻撃を受け止めて動きを止めるから、その間に出せる限り魔法をアイツの首に集中させて欲しいんだ」

「……分かった、トージを信じるよ!」


 マウントグリフォンが浮かびながらまた鉤爪をこちらに向けて飛んできた。

 今度は逃げはしない、シャルルが俺を信じて魔法を放つ準備をしているんだ。

 本当はとても怖い、怖いがシャルルの信じると言ってくれた時の瞳がキラキラしていた。していたのだ。

 俺を助けてくれたこの子の期待を裏切るなど死んでもできない。

 頼むぞ神様特製スキル、一度死にかけたが今こそ[ステータス変動]の真価を見せる時の筈だ。

 覚悟決め目をしっかりとマウントグリフォンへと見据えて、鉤爪を掴むように両手を構える。



 しっかりとマウントグリフォンの鉤爪の片方を掴み受け止めることが出来た。

 ズシンと大きな音を立てて衝撃が地面にも伝わっていきそのままへこんだ。



「フンッヌガアァアア!!!」



 気と力を抜くと押し潰されそうなので全力でいないといけない、しかしすかさずもう片方の鉤爪で俺を潰そうとしてくる。



「エアスラスト!!」



 シャルルの周りから風が吹いたと思った時には、マウントグリフォンの首から血が噴き出した。

 そのまま倒れることは無かったが、もう片方からの鉤爪は飛んでこない。

 そして攻撃の手が緩んだのを俺は見逃さない。

 掴んだ鉤爪を地面に叩きつけるように振るうと、その巨体は見事に地面に落ちた。

 まだ生きているのが見て取れたので、俺はマウントグリフォンの首を素早く掴み渾身の力で引っ張った。



「ギュロォェエ!」

「ひぃいいいいいい!」



 シャルルの魔法で傷ついていた首は、俺とマウントグリフォンの悲痛な叫びと共にそのまま胴体とサヨナラをする形でちぎれた、自分でやった事とはいえ中々にグロテスクな幕切れになった。



「トージ! トージ!!」

「あぁ……シャルル、やっ……」

「凄いよ!! トージ、ホントーにカッコイイよ!」



 はわわ、美少年が涙を浮かべながら抱きついてくるとは何だこれ、何だこの。

 あぁスリスリしないで心臓の鼓動(ビート)を刻みまくってしまう。

 いやいや待て待てこの子は男の子、男の子なんだ落ち着け、クールダウンだ。


「いやシャルル、シャルルがいなかったらアイツは倒せなかったんだよ。だから俺とシャルルが凄いんだ、だろ?」

「うん! でも、どうしてトージはあんな力を隠してたの?じゃなきゃあの時ベビースライムに……はははっ」


 俺が森で助けを求めた時を思い出したのか、途中で笑い出すシャルル。


「これには色々訳があってだな……」

「トージって弱いのに強いんだね!」


 矛盾してるがあながち間違ってはいない。


 弱いが強いか……今回は何とかマウントグリフォンに勝てたが、ベビースライムに負けてしまうようなこのスキルの危うさは、何としても神様に調整してもらわなければいけない。切実に、なるはやで。












 まぁ今は勝利の余韻と、美少年の温もりに浸ってもいいだろう。

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