闘技大会参加登録
次回更新も三日後になります。
今日も今日とて晴れやかないい天気、心もつられて晴れやかになっていく。
だがしかし、そんな晴れやかな日であろうとも陰鬱な空気を出す人がいるというのだ。
一体どこの誰だろう。
「そう思いませんかリュリーティアさん?」
「知りませんわよ……うっ……。」
俺とシャルルは起きているのに、まだ布団から抜け出せないリュリーティアさんに問いかけてみると凄い形相で返答された。
それに時折苦しみながら口を手で抑える仕草をしている。
まぁ理由はわかっている、二日酔いだ。
「だから俺は酔いつぶれるまで飲まないでくださいって言ったのにぃー。」
「くっ、腹立つ顔をしますわね……。」
「こらトージ、リュリーティアをイジメない!」
「あぁ……シャルルさんは天使ですわ……。それに、私に非はありますけど闘司さんも同様ですわよ……?」
はて、俺に?
「分からないという顔ですわね……、しかし闘司さんがあの時、審判を引き受けた時点で……ギルティですわ……!うっ……。」
「ほらリュリーティアあんまり動かない方がいいよ……、ねぇトージ……何とかしてあげて?」
くっ、そう言われると俺も少し面白がって勝負を見てはいたけど!
それにシャルル、その懇願の目は今の俺にとても効くから……。
「分かったよシャルル。仕方ない……、上手くいくか分からないですけど少し試してみますね、それではリュリーティアさん少しそのまま寝ていてください。」
寝ているリュリーティアさんに近づく、しかし何故かリュリーティアさんは身構える。
「あの、何でそんな警戒を。」
「何かの実験体にされそうなのでつい……。」
「痛いことはしませんから、それにすぐに気分がよくなりますので……へっへっへ。」
「きゃー! その手のワキワキはなんですのー!?」
「こーらっ!」
「いてっ!」
少し悪戯心が芽生えてリュリーティアさんをからかうと、シャルルにチョップされてしまった。
「ごめんごめん、すぐにやるから。」
「もう、リュリーティア大丈夫?」
「最悪ですわ……、治ったら覚えておきなさい闘司さん……!」
「ひぇっ……。誠心誠意やらせていただきますのでどうかお許しください……。」
今回は俺が上位だぜと思っていたけれどそんな事は一切なく、ドスの効いた声に怯えた俺は綺麗な土下座をしてしまう。
さすがに巫山戯すぎたな、手早く済ませてしまおう。
今度は近づいても警戒されなかったので、そのまま手のひらをリュリーティアさんに向けて軽く集中する。
「えーととりあえず……そうだな、リフレッシュ、だな。」
「今名付けるのですか……。 あら、少し気分が良くなりましたわ……。 何をなさいましたの?」
「前にジェミニと戦った時に、ルカ王女が気絶したリュリーティアさんを魔法で起こした事があったんですよ。それでもしかしたら状態異常を治す魔法があるのかなと思ってやってみました。いやーやっぱり水の魔法でしたね、闇の魔法だったらどうしようかと思いましたよ。」
治癒魔法という枠に状態異常の回復が含まれていて良かった、というか二日酔いは状態異常に分類されるのか。
「なんにせよ、助かりましたわ……。ありがとうございます闘司さん……。」
「トージ凄いや、良かったねリュリーティア!」
「はい、これでお酒をたくさん飲んで二日酔いになっても、闘司さんがいれば安心ですわね……。」
「いやいやアナタね……。」
なに人を便利な二日酔いの薬みたいにしてるんですか。
しかし魔法で少し気分が良くなったとはいえ、リュリーティアさんは完全に回復はしてないようだ。
これも俺の魔法の練度が足りない影響なのだろう。
「冗談ですわよ。さて、少し気分が良くなったら眠くなってしまいましたわ……。このまま私は眠らせていただきます。あ、私の事はお気になさらず出掛けて宜しいですわよ……それでは。」
などと宣言して布団に潜るとすぐさま寝息を立て始めてしまった。
割と体力を消耗していたのだな、このまま寝かしておいてあげよう。
「じゃあ……リュリーティアさんもああ言っていたし、二人で出掛けるか?」
「うん!」
ハナさんにリュリーティアさんの事を一応伝えておいて、俺とシャルルは外へと繰り出した。
「ふっふふーん、ふっふふーん♪」
「どうしたシャルル、今日はご機嫌だな?」
「えっ? あー、あははそうかも。リュリーティアには悪いけど、こうしてトージと二人で出掛けるのって久しぶりでなんか嬉しくって!」
「えっ?」
えっなに、今俺シャルルに口説かれてるの?
なんでそんな思わせぶりな女の子みたいな発言できるの、ナチュラルボーンプレイボーイなの?
勘違いしちゃっていいの? あたし、恋しちゃっていいの?
「いやいや思考の方向性がおかしい……。」
「どうしたのトージ? もしかして……ボクと二人きりは、つまんない?」
「そぉんなことないぞぉー!!? 俺は! シャルルと! 二人きりで! し・あ・わ・せ・だぁー!!」
天地がひっくり返っても有り得ないシャルルの質問に、この俺の喜びようを全身で表現する。
「あははは変な動き! でも良かったぁ、つまんないとか言われたらボク泣いちゃうところだったよ。」
「本当にそれはないから、安心しろ。な?」
うーん、シャルルがこういう事を言うとは……何か不安なことでもあったのか?
とりあえず安心してもらう為に頭を撫でてみる、シャルルは気持ちよさそうに目を細めてくれる。
あ、やだこれ最高、とても可愛い。
「うー、トージー、ボクの髪の毛がくしゃくしゃになっちゃう〜。」
「あはは、ごめんシャルルつい気持ちよくってな。」
ちょっとシャルルの髪が乱れてしまったので手櫛で直す、サラサラの髪の毛は手触りがよく何時までも触れていたいくらいだ。
「はい、直った。」
「うん、ありがとー。」
「じゃあ、今日はどこ行くか……ってそうだ、ちょっとグリンダルさんの所に行ってもいいか?」
「いいよ、でもどうして?」
「うん、そういえば闘技大会の日程とか全然知らないなと思って、マリーさんに聞くのも忘れていたからな。」
昨日聞ければ良かったけど、ああいう状況になってしまいすっかり忘れていた。
それに族長であるグリンダルさんなら闘技大会の事も知っているはずだ。
「そういえばそうだったよ。闘技大会、楽しみだねトージ。」
「だな、その時にはしっかり応援してくれよ?」
「うん! よーし、それじゃあ上の町へとしゅっぱーつ!」
「おー。」
鉱山町の一角、グリンダルさんの家を目指して俺とシャルルは仲良く歩き始めた。
再びのグリンダルさんの家に到着、家主が通れない来客用の扉をノックして在宅かどうかの確認をする。
ノックをしてからすぐに床の軋む音が近づいてくる、そして扉が開かれた。
そこから誰も出ては来ないけれどグリンダルさんが居るということはこれで分かった、扉が開かれたのは招かれた合図と受け取り中に入ることにする。
「お邪魔しまーす、闘司ですー。」
「おじゃましまーす! シャルルだよー!」
中に入って誰が来たかをグリンダルさんに告げる。
「君たちだったか、よく来てくれたね。」
俺達の姿を確認したグリンダルさんは、食器棚から器用に普通の人サイズの来客用コップを取り出して飲み物を用意してくれた。
前回と一緒の椅子に座ることを勧められたのでお言葉に甘えて座る。
「それで、今日はどういった用で来てくれたのかな?」
「はい、今日はグリンダルさんに聞きたいことがあって。闘技大会のことについてなんですけど。」
「ほう、闘技大会に出場するのかい?」
「まあ成り行きで……、俺とリュリーティアさんで出場しようかなと思っています。闘技大会に出るにあたって必要なこととかありますか?」
「なるほどそういうことか。闘技大会に出るには参加登録をしなきゃ出場できないね、その登録をするには……そうだ、どうせなら僕が案内してあげよう。」
「えっ、それは有難いんですけど、いいんですか?」
「暇だからね、よいしょっと。」
前も言っていたな、国のトップが暇なのは……いいことなんだろう、多分。
ルカ王女は忙しそうではあったけど、いやあの人はたまに仕事を放棄してたから比較にならないな……。
折角の飲み物を残すのは勿体ないので飲み干して、先に外に出たグリンダルさんを追いかける。
鉱山町から円を回るように山を横に歩いていく、温泉街から鉱山町に登る途中も舗装されていたが、ここも同じく舗装されて道が出来上がっている。
グリンダルさんの後をついて行きながらその舗道を進んでいくと、大きな三つの建物が見えてきた。
「三つの建物が見えてきただろう? あれが闘技大会を行うための場所さ、両端の二つはAブロックとBブロックに別れた選手達が闘うステージ。真ん中の建物は、その二つのブロックで勝ち進んだ者が頂点を決めるために闘うステージなんだよ。」
言われてみれば真ん中の建物は他より大きく作られているな、それにしてもあんな立派な場所で闘わなきゃいけないのか、まだ始まってないのに緊張してきたぞ。
「数年に一度、闘技大会が開催される度に会場は満員になって大盛り上がり、そして会場付近には色々な出店が集まり収益がたっぷり、サラマッドの経済は潤って族長の僕は幸せさ。」
グリンダルさんはその未来を浮かべてか、ホクホクとした顔をしている。
まあこういう大きなイベントにはそういう効果があるんだろう、俺にはよく分からんけど。
「と、まぁこんな内情を言われても君たちは興味無いか。」
「ボク出店に興味ある!」
「食い物の、だろ?」
「ぶーぶー、そうだけどさ。」
「ハッハッハ、シャルルくんは出店に夢中で観戦を忘れないようにだね。」
「さすがにボクもそこまで夢中にならないよー。」
山を回るように歩いていたのを、今度は建物に向かって降りていく。
その道の途中には、恐らく闘技大会に参加するであろう屈強な人ばかりで溢れていた。
一応マリーさんがいるか探してみたけれど見つからなかった、参加登録はもう済ませてあるのだろう。
「そろそろ登録をするための場所が見えてくるはずだよ。ああ、あれがそうだね。」
指をさした場所を見ると、仮設テントの下にテーブルと椅子が置かれていて人が座っている。
「あそこで名前と闘技大会に参加することを伝えれば完了さ。」
「あの、ブロック決めって抽選なんですか? 出来れば俺とリュリーティアさんは別々になりたいんですけど……。」
「ふむ? うーん……そうか、よし分かった。僕に任せたまえ、キッチリ分けてもらうよう頼んでみるよ。族長権限でね。」
「え、そんな権力を振りかざしても大丈夫なんですか?」
「権力は正しく使うものなのさ。それに僕は普段ワガママを言わない方だからね、たまに言うとみんな喜んで聞いてくれるんだよ、嬉しいことにね。」
「ははは、なるほど。権力は正しく使うもの、そうですねその通りですね。」
「今のは笑うところなのかい?」
どっかの王女様も同じ事を言っていたのを思い出した。グリンダルさん、貴方が思うよりもルカ王女は貴方から影響を受けているみたいですよ。
「ほらほら、早く行こうじゃないか。」
「あっとと、はーい。」
1歩が大きいグリンダルさんを慌てて追いかけて仮設テントの下へと走る。
「こんにちは、闘技大会への出場希望の方ですか?」
「は、はい。」
「では闘技大会の簡単な説明を致します。」
一枚の紙を手渡される、それに目を通しながら説明を受けていく。
内容としてはこうだ。
・闘技大会は予選と本選がある。
これは多くの出場者をふるい分ける為、そして予選を進んだ者が抽選でAブロックとBブロックに分かれてトーナメント方式の本戦へと挑むことになる。
・外部からの武器の持ち込みは禁止、大会規定の武器のみ使用可能。
闘技大会は己の武を賭けた闘いの場とはいえ、興行である事には変わらない。なので死人などを出さないために、大会側が用意した安全性を考慮した武器を使用する。
・魔法の使用は可
魔法も使えてこその武、使用制限などは設けない。ただし武器に魔法を付与するのは禁止とする。これは先の武器の安全性が揺るぐものであるため。身体付与なら可。
・勝敗の決
相手をノックダウン、もしくは降参を申告。会場から逃亡した場合はそこで相手の勝利となる。
・優勝者には賞金と大会優勝者の称号を与える。
本戦で見事頂点を得たら、その武を讃えて大会側から賞金と称号を与えられるとのこと。
・優勝者は前優勝とのエキシビションマッチをしてもらう。
前大会の優勝者と試合をしてもらい、これに勝利した場合は……。
こんな感じだな。
怪我はするかもしれないけど、死ぬ心配は無さそうなのでひとまず安心した。
血湧き肉躍るデスマッチ、とかだったら俺は裸足で逃げ出しているところだったぞ。
というか、最後の項目は図鑑と一緒で謎のままだったな……。
なんかごめんよ、図鑑くん。
[かまへんかまへん]
今、意思の疎通が出来た気がするんだけど。
「以上となります、何か質問はございますか?」
「あっ、日程はいつになりますか。」
「予選は四日後、本選会場で行われます。本選は予選から三日後、つまりは今日から1週間後です。」
なるほど、そんなに期間は空かないのか。
「ごめんよ、ちょっといいかな。」
「族長様ではないですか、どういったご用件でしょう?」
「僕からの個人的な頼みなんだけれどね……。」
グリンダルさんが受付の人にさっきの話をつけてくれている、受付の人の反応を見るに問題はなさそうだ。
「闘司くん良かったね。君とリュリーティアくんのブロック分け、構わないらしいよ。」
「本当ですか? どうもありがとうございます!」
これで闘技大会への出場が確定することになった、やれるだけのことをやって頑張ってみるか。
「それじゃあ登録も終わったしお昼でも食べに行くか。グリンダルさんも一緒にどうですか?」
「いいのかい? それじゃあ君たちともっと話したかったし、ご一緒させてもらおうかな。」
「ねぇねぇどこで食べるの?」
「昨日たまたま入ったお店のシチューが美味しかったんだよ、シャルルはそこでいいか?」
「うん、美味しければ問題なしだよ!」
グリンダルさんも頷いてくれてるので、昨日の酒場へとお昼を求めて歩き出すことにした。
お昼の後も、グリンダルさんの家に行って色々な話をしたりして、今日という日は終わりを迎えた。




