おるすばんとおてつだい。 終
次回更新も三日後になります。
サイゾウが作ってくれたお昼ゴハンを全て食べ終えて満足していると、お話を終えたハナとヤエが調理場に戻ってきた。
「うぅ、酷い目にあいましたぁ……。」
「何が酷い目ですか。シャルルさんが望んだからってお客様に仕事を手伝わせるなんて……。」
「おかえりハナー。」
「はいただいまです、ってシャルルさんそのお料理、もしかしておと……サイゾウさんが作ってくれたんですか?」
「うん! サイゾウの料理とっても美味しかったよぉ〜。ありがとうサイゾウ。」
簡単な物だってサイゾウは言っていたけどそんな事全然無かった。
一つの料理にしても味付けがしっかりしていたりと細かい気遣いをボクは料理から感じ取っている。
でもサイゾウは照れ屋さんなのか、お礼を言うと顔を赤くして逸らしちゃうけどね。
「あっサイゾウさん照れてる、なんか可愛い〜。」
「うるさい……。」
「あれどこ行くんですか?」
「買い出しだ……。誰かさんのせいでな……。」
「うぐ……すみませんでした。」
痛い所をつかれたとばかりに唸るハナ、そしてサイゾウはそのまま調理場から去っていった。
「うふふ、シャルルさんが褒めるから照れくさくて逃げたわねあの人。」
「サイゾウのゴハン本当に美味しかったよ。ボクもアレぐらい上手く作ってみたいな。」
「練習なされば出来るようになりますよ。それよりも、ハナから事情を聞きました。仕事を手伝ってもらったそうで……ありがとうございました。」
「ううんいいのいいの! それにハナの着物をボクが濡らしちゃったから……それで何かしたいって思っただけなんだよ!」
そう、ボクがイタズラをしなければというだけだったんだから、ヤエにお礼を言ってもらうワケにはいかない。
「それにボクはハナと一緒に宿屋の仕事のお手伝いが出来て楽しかったよ?」
ハナがボク達みたいなお客のために、毎日あんな仕事をしているんだと気付けもしたからとても良かった。
「お優しいのですね。」
「そうかなぁ。 あっ、それにまだお仕事があるならボクお手伝いしたいな、ダメかな?」
「うーん……。」
「お願い、ねっ?」
「分かりました……。そこまで仰ってくれるなら、お願いします。ハナ、くれぐれも無理はさせないように。」
何とか頼み込んでみたら、ヤエは少し考えた後お手伝いをすること許してくれた。
ヤエがハナに念を押すかのようにそうも言った。
「女将にそう言われたら若女将としては頷くしかありません、という事でシャルルさん、この後も宜しくお願いしますね。」
「はーい!」
ぐー。
大きな音がした、ボクのお腹かと思ったけど今お昼を食べたばっかなので違うと思う。
ハナの方を見てみる、少し顔が赤くなってる。
「お掃除の前に、私もお昼いいですか……。」
サイゾウはしっかりとハナの分のお昼も用意していたようで、それによりハナは無事にお昼を食べ終わったので、いざお仕事へと挑んでいく。
まずはさっき不思議なお店で洗濯と乾燥をしにいったタオルが、終了の時間となったらしいので回収しに行くことになった。
ガラガラと扉を開けて、最初に通った温泉街の道を再び歩いていく。
今度は嫌なおじさんがいなかったので少しホッとしちゃった。
そのまま歩くと、まだゴウンゴウンと常に音が鳴っているんじゃないかなと思うお店に戻ってきた。
「えーとえーと確かここの、ありましたありました。うん、洗えてますし乾いていますね。」
既に止まっている機械からタオルを一枚取り出して確認をしている、ボクも一応確認するべくタオルを手に取ってみる。
「すんすん……ふわぁ。いい香りがするし濡れてないや、この機械本当に凄いね。」
「ウチにも欲しいのですがいざ使うとなると音が気になってしまって……、くつろぐ場所でこういう音が鳴っているとお客様は安らげないのではと思って買えませんね。」
なるほど、そういうものなんだねぇ。
「それじゃあお店に戻りましょ、きゃあっ!?」
「どうしたのハナ!?」
ハナが小さな悲鳴を上げたのですぐに振り返ると、そこには大きな人が立っていた。
「ごめんごめん、驚かせてしまったようだね。」
「あれ、グリンダル?」
そこに立っていたのは、大きな大きな身体をしたサラマッド族長のグリンダルだった。
やっぱりその背の大きさは普通じゃないみたいで、グリンダルは身体を90度とまではいかないけど曲げないと立っていられないらしく、なんだか辛そうに見える。
「ぞ、族長様でしたか! 驚いてしまい失礼しました!」
「いやいやいいんだよハナくん、僕がこんな体勢でいるのが悪いんだから。それより、二人が一緒とは思わなかったね。あれ、ということはシャルルくん達はココノエ宿屋に泊まっているのか。それはいい選択をしたと僕は思うよ。」
「うん、とっても素敵な宿屋だよ。」
「そんなシャルルさんったら、というよりシャルルさんと族長様がお知り合いなのが私には驚きですよ! 一体どういったご関係なのでしょう?」
「うーん、話してもいいけれどまずはここから出た方が僕は話しやすいかな。」
あららそうだった、ごめんねグリンダル。
タオルを入れたカゴを手に持って急いで店を出ることにした。
グリンダルがどうしてボク達と出会ったのかその経緯を歩きながら話すと、ハナは驚きながらも手を合わせてはしゃいでいた。
「へー! シャルルさん達は族長様だけでなくアクアヴェネツの王女様ともお知り合いなんですね! もっと普通の方達かなと思っていたけれど、とんだ大物さんだったんですね!」
「そんなことないよ、それに凄いのはトージやリュリーティアだもん。」
「ふふふ、君がいなきゃあの二人は凄くなれないと僕はそう思うよ。」
「どういうこと?」
「それは僕からは言えないさ、とにかくシャルルくんも凄いということさ。」
うむむよく分からないなぁ、でもボクも褒めてくれてるんなら嬉しいな。
「他には、他には何かありますか!?」
「そうだね、他には勇者と出会ったり……。」
ハナはグリンダルに他の話しがないかと聞いている。
それを聞く度にハナは様々な表情を浮かべて話しに聞き入っている。
ふっふっふ、手紙に書いてあること以外にもボク達は凄いことをしているんだぞぉー、それをハナに聞かせたらどんな風になるかなぁ?
「そちらにおられるのは族長様ではございませんか、お久しぶりでございます。」
話も大体終わりココノエ宿屋の前まで来ていざ入ろうとすると、隣から大きな声で話しかけてくる人がいた。
「うん? おや、君はたしか……そう、イヤーミナくんだったね。そうだね、君がサラマッドに初めて来て以来だっかな会うのは。」
「申し訳ありません、何度も伺おうとは思っていたのですが私の店の経営などでその時間が取れず……。あっと、すみませんがまだ他のお客様がいらっしゃるので、それでは族長様これで失礼します。……ちっ。」
いきなり話しかけてきて、いきなりいなくなってしまったイヤーミナ。
それに最後の方はハナを睨んでいた気がする、今のはあんまり気分がよくないぞ。
ハナもそれに気がついていたのかさっきまでの楽しそうな表情が、浮かない顔になってしまってる。
「ハナくん、もう宿屋の目の前だぞ? まだまだお仕事があるんだろう、シャルルくんと頑張ってくるといい。そうだね、シャルルくん。」
「っ! そうだよハナ、まずは早くこのタオルを運ばなきゃ! それにサボってたら……ヤエにまた怒られちゃうぞ〜?」
さすがはグリンダル、ハナの変化に気づいてすぐに気を逸らしてくれた。
ボクもそれに乗っかって浮かないハナを元気づける、それに気づいたのかどうなのか、ハナは少し空元気ながらもさっきの様な楽しい笑顔へともどった。
小声でグリンダルにお礼を言っておく。
「グリンダルありがとう。」
「なんのことだか? ほらほら、僕の事は気にしないで早く戻るといい。それじゃあシャルルくんとハナくん、また会おう。それと闘司くんとリュリーティアくんにも宜しく伝えておいてくれ。」
「はい、族長様ありがとうございました!」
グリンダルはハナのお礼にニコリと笑って返して、大きな背中をボク達に見せながら上の町へと向かっていった。
「族長様はやっぱり優しい人だなぁ……。」
「そうだね。」
「あっ、シャルルさんもそうですよ? ありがとうございます。」
「うーん、なんのことだか?」
ボクもグリンダルみたいになっちゃった。
ちょっと問題もあったけど、その後も色々な仕事を手伝ったりして今日限定のお手伝いは終わりを迎えた。
「ふぃー、疲れたぁ。」
「お疲れ様ですシャルルさん、それとありがとうございました。これをどうぞ、果実水です。」
お仕事を終えたのでサクラの間で倒れるように転がると、ハナがテーブルに果実水を持ってきて置いてくれた。
それをグイッと飲んでいく、冷たい果実水が火照った身体を冷ましていくのを感じて心地がいい。
「ぶはー! この一杯のために生きてるー!」
「ふふっ! 何ですかそれ?」
「この前トージがお風呂上がりにやってたやつ! こう、腰に手を当ててグイッと。」
「それ、ウチのお父さんもたまにやってます!」
「そうなの? ボクもこれからやっていこうかな……?」
「シャルルさんだと似合いませんよ、ふふふ。」
果実水を飲み終えたのでまたゴロリとタタミに寝転がる、窓から少し赤みがかった陽が差し込んできていた。
「それじゃあ私はお夕食の準備がありますので、恐らくそろそろヤツシロ様方も帰ってこられるのではないですか?」
「どうだろう、トージとリュリーティア楽しんできたかなぁ。」
「きっと楽しめたと思いますよ、でも次はシャルルさんも一緒だともっと楽しめると思います。」
「えぇそうかな?」
「はい! だって今日一日シャルルさんと一緒で私はとても楽しかったですから! だからきっとヤツシロ様もそうです!」
ハナが自信たっぷりにそう言ってくれる、そう言われるとボクもなんだかそう思えてきちゃう。
なんだか早くトージ達に会いたくなってきちゃった、早く帰ってこないかな?
「おーいシャルルー、ちょっと助けてくれるかー? リュリーティアさんが重くていたたっ! えっなに!? 起きてないのに無意識で俺に攻撃したのこの人!? こわっ!!」
噂をすれば、玄関の方から声が聞こえてくる。
「トージだ! 帰ってきたみたいだね、ボク行ってくる!」
「はい、お出迎えしてあげてください。」
トージ達は今日一体どんな事をしたのかな、ボクはハナと色んなお仕事をしたんだって話したい、聞いてもらいたい。
みんなで楽しいことや面白いことを分け合いたい。
「シャルルさんたら、今日一番の笑顔を浮かべてましたね。なんだか少し妬けちゃいます。」




