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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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アクアヴェネツ出発と

 今日はアクアヴェネツを()つ日。

 サラマッドの族長宛の封書を届ける馬車に乗せてもらい運んでもらうのだ。

 別にいいと言っていたのだけれど皆が見送りに来てくれたみたいだ。


「それじゃあ族長によろしくね。もし何かあったら私の名前を出せば無碍には出来ないと思うから」

「はいルカ王女、またアクアヴェネツに寄った時はよろしくお願いします」

「闘司さん、リュリーティアさん、シャルルさん、少しの間でしたがルカ王女のお相手をありがとうございました」

「マリンの料理美味しかったよ、また来た時は美味しいの楽しみにしてる!」

「ふふ。はい、その時はシャルルさんの期待に答えられる料理を作りますね」

「来年は俺がヌシを釣るからな、必ずまたヌシ釣り大会に来いよ!」

「今度は(ワタクシ)が釣り上げますわ。それよりヌシって、来年には現れるものなのですね……」


 思い思いの会話を数度交わして出発の時となる。

 御者がパシンと馬に鞭を打って馬車は進み出した。


「皆さんありがとうございましたー! 必ずまたアクアヴェネツに来ますねー!」


 俺は大きな声と大きく手を振って皆に別れを告げる、同じようにシャルルとリュリーティアさんも手を振っている。

 少しだけだが楽しく過ごせたアクアヴェネツを離れることに寂しさを感じたが、新たに目指す鉱火山都市サラマッドへの期待が寂しさをさらっていった。







 久しぶりの馬車の揺れ。

 時折ゴトンと揺れる馬車、規則的に思えて不規則。

 そんな中、俺は魔法の練習をしている。


「闘司さんもう少し弾力を上げてくださる? 少しお尻が痛いですの」

「わーいボヨンボヨンー!」

「えぇ……もう少しですか? むむむむ……」


 何で魔法の練習になったか理由は簡単、リュリーティアさんのお尻が馬車の揺れに耐えられなかったから。

 ルカ王女が前に作っていた水のクッションなら痛くないんじゃない、とシャルルの発言に食いついたリュリーティアさんは魔法の練習と称して俺にそれを作れと要求してきた。

 でも水のクッションなんて言われてもイメージが湧かないので失敗が続いた。

 そこで俺は俺の世界の、人をダメにしそうなクッションをイメージして作ってみると割と上手く出来たのである。

 そこからは細かな微調整へと移っている。

 シャルルのやつはバランスボール程の弾力にしておいたら遊び出したのでそのまま。


「あっ今回のはいいですわ素晴らしいです」

「それは良かったです……そろそろ魔力が尽きそうな気がしたので」

「自分の限界を感じ取るのも今回の訓練の一つですの」

「それ今考えませんでした?」

「まさか。それにしてもこのクッション、本当に素晴らしいですわぁ……。自分が自堕落な人間になっていく気分になりますのぉ……」


 大変お気に召したようでリュリーティアさんはクッションに飲み込まれるように沈んでいった。


「ねートージ、これもっとボヨンボヨンにできる?」

「えっ……出来るけどちょっと魔力がなぁ」

「そうなんだぁ……」


 ああそんなしょんぼりされたらやるしかないじゃないかまったく!

 なけなしの魔力を振り絞って弾力を増やした水のクッションを作り直す。

 あっこれもう限界だ……。


「あれ? ボヨンボヨンだ! トージありがとー!」

「ああ、良かったなシャルル……だけど俺は少し寝るよ……。」


 二人のクッションにかまけて俺自身の分を作っておかなかったのは失敗だったなと、揺れる馬車でそう思いながら寝転がり、眠りについた。







 何やら話をしている声が聞こえてきて目が覚めた。

 馬車は止まっているがサラマッドに着くにはまだ早すぎるはずだ。

 何があったのかとリュリーティアさんに尋ねてみる。


「何か問題でも起こったんですか?」

「いえ、馬車から出てないので事情が分かりませんの、でも慌てた様子は無いので魔物などではなさそうですわ」

「そうなんですか、シャルルは何か分かるか?」


 とりあえずシャルルにも聞いてみる、するとシャルルは頷いて答えた。


「えっと聞こえてくる会話によるとね、道の真ん中で倒れてる人がいるんだって。そのせいで馬車が通れなくてどうしようって言ってるよ」


 これは驚いた、同じ場所にいる俺には外の会話なんてそんな詳細に聞き取れないぞ。

 美少年は何もかものスペックが違うんだなぁ。

 それより人が倒れてるならどうして早く助けてあげないんだろう。

 もしかして護衛の人は封書とかの関係で迂闊(うかつ)に行動出来ないとかか?

 それなら仕方ない、タダ乗せしてもらっていて悪いし俺達が動くとするか。


「リュリーティアさん、ちょっと様子を見に行きましょう。シャルルは残っててもらえるか?」

「はーい、二人とも気をつけてね」


 倒れている人を助けるべく馬車から出て御者と護衛の人の元に向かう。


「あのー、人が倒れてるって聞こえたんですけど大丈夫ですか?」

「ああこれは申し訳ありません。そうなんです、実はそこに人が倒れているんですが、少しばかり面倒な輩でして……」


 面倒な輩?

 護衛の人が指さす先を見ると、そこに倒れていたのは鎧を着けた女性の姿。

 傍らにはその女性の背丈と同じ大きさの斧が落ちている。

 なるほど、普通の人ではないんだな。

 ああいう戦える人が倒れてるって事は、何か厄介事の予感がして助けづらかったのか。


「確かに少し怖い人ですね……。でもさすがに見捨てて置けないので俺が助けてきますよ」

「あっいえそういう面倒じゃなくて……」


 女性の元に走っていく、後ろから何かを言っていた気がするがそれは後で聞くとしよう。

 近くに寄ると分かったがこの女性、俺の身長より大きいみたいだ。

 それに大きな斧を使うくらいだからだろうか、二の腕とかの筋肉が発達しまくっている、まるで女性版マサさんだ。


「もしもしー、大丈夫ですか?」

「うぅん……シをくれ……」

「なんですか?」


 よかった、意識は普通にある、それに見たところ怪我とかも一切無いようだ。

 何かうわ言のように呟いているので更に近づいて耳を寄せる。


「メシ……メシをおくれよぉー!」

「っ!?」


 女性がいきなり俺に掴みかかってきた。


「闘司さん!」

「あーリュリーティアさん大丈夫です! 大丈夫ですから剣を抜かないでください!」


 慌てて斬りかかろうとするリュリーティアさんを止める。

 いきなり掴みかかられはしたがスキルの発動は無かった、つまり攻撃ではなく敵意もない。

 でも女性の力は強く振放すことも出来ないので仕方なくもう一度聞き返す。


「なんて言いました?」

「お腹がすいたんだよ……お願いだからメシをおくれ……」


 どうやら空腹で倒れていただけのようだ。

 なるほど護衛の人が言いたかった面倒とはそういうことだったのね。






「本当にその女性も一緒にサラマッドに連れていくのですか?」

「はいすみません……もし問題が起きたら全部俺達の責任にして構いませんので、だからどうかお願いします!」

「ふぅ、分かりました。ルサ・ルカ王女様が信頼している人達がする事です、私共もその行いを信頼致しましょう」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 護衛の人を説得してどうにか謎の女性をサラマッドまで連れて行けることになった。

 正直そこまでしなくてもいいのではと思ったけれど乗りかかった船だ、最後まで面倒を見ようじゃないか。

 リュリーティアさんに手伝ってもらい馬車に乗せる。


「「せーのっ!」」


 ぽーんと放り投げる。

 少々荒々しい乗せ方だけど怪我とかしてないみたいなので大目に見てもらおう。


「うわぁ、この人だーれ?」

「腹ぺこモンスターさんだ」

「ナイスネーミングですわ」

「お腹空いたよォ……」


 おっといけない、何か食べさせなきゃ。

 えっと……マリンさんが作ってくれた昼食があったなそういえば。


「結構楽しみにしてたんだけど……仕方ない」


 俺の分の昼食を女性の目の前にチラつかせる。


「クンクン……ガァウ!!」

「うわぁお、獣だ……」


 ひったくるように昼食を奪われ獣のように食らいついていく女性。

 あっという間に全てを食べ尽くして美味しさの余韻に浸っているのであろう、幸せそうな表情をしている。

 ああ、俺も食べたかったなぁ……。

 腹が膨れて元気が出たようで、グッタリしていたのが嘘のように身体から筋肉と力が溢れてる。


「いやぁすまないねぇ! アタイとした事がサラマッドに着く前に食料を全部食べちまって困ったところだったんだよ! アンタ達は命の恩人さ!」

「そんな大げさな……。」

「いやいや本当に助かったよ! それに耳に入っていたけどアタイをサラマッドに連れてってもくれるんだろ? いやー世の中捨てたもんじゃないねっ!」


 肉体に比例した声量と快活な性格は図々しさも愛嬌にしている。


「それよりこの時期にサラマッドに行くってことは、アンタ達も参加するんだろ?」

「参加? 何かやってるんですか?」

「ああ、近くにサラマッドで闘技……おっと忘れてた。名前を聞いていなかったね、アタイはマリー。アンタ達の名前はなんだい?」


 すっごい気になる事を言いそうなところで名前のことを言ってくるとは、中々にマイペースな人だな。


「えーと、俺は八代闘司です。こっちの美少年が」

「シャルルです! こっちの美女が!」

「どうも、美女のリュリーティア・アルチュセールですわ」

「闘司に、シャルルに、リュリーティア……よっし覚えたよっ! うんうん……、そこの二人は分からないけど、リュリーティア、アンタ強いね?」

「あら、見る目がありますわね」

「ったり前だよ! こちとら闘うのが生き甲斐だからね、強いやつを見るとビビッとくるのさ。いやーそうかい、今年のサラマッドは楽しくなりそうだねぇ!」


 マリーさんは一人勝手にワクワクしている。

 さっき言い損ねた所をもう一度聞いてみる。


「あのマリーさん、サラマッドで何か催しでもあるんですか?」

「ありゃなんだい、もしかして知らなかったのかい?」

「まあサラマッドは初めてなもんでして……」








「今度サラマッドではね、闘技大会が開かれるのさ!!」

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