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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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お料理教室



 マリンさんに調理場を借りていいかと相談したところ快く了承してくれた。

 調理場へ本日購入した食材を並べていく。


「では、リュリーティア・アルチュセールのお料理教室を開催いたします」

「「いぇーい!」」

「本日お作りしてもらうのは、焼き魚、煮付けの2つです」

「「いぇーい!」」

「そんなに難しい事ではありませんのでしっかり学んでいきましょう」

「「いぇーい!」」

「うるさいです」

「「いぇーい……」」


 怒られてしまった。

 まずは手洗いをしっかりと行い衛生面に気をつけよう。

 煮付けを先に行うということで魚を取り出す、指示されてまな板に取り出した魚は。


「カレイ……いや、ヒラメ?」


 目がハート型になっているのがヒラメで、目が出っ張っているのがカレイだったか確か、ということはこいつはヒラメか。


「このお魚はオリーブフラウンダーという魚です」


 全然かすっていない。

 もういいよ俺の中ではヒラメなんだよこいつは……。


「先にオリーブフラウンダーの下処理を致しましょう。ウロコと粘膜を取り除いてから煮汁を作ります。という事でこちらをどうぞ」

「これは、何ですか?」

「スチールウールという物です。流水で流しながら擦るとウロコと粘膜の両方が取れる優れものですわ」

「面白そう! よーしやるぞー!」

「オリーブフラウンダーの口の歯は鋭いので擦る時は気をつけてくださいねシャルルさん」

「はーい」


 流水で流しながらスチールウールで軽くゴシゴシ。

 ポロポロとウロコが落ちていくのはちょっと面白い。

 あっという間にウロコとヌメリが無くなった。


「では内臓を取り除いていくのですが魚を捌くのは少し難しいのでこれは(ワタクシ)が致しましょう。なので闘司さんとシャルルさんには煮汁を作っていただきます」


 リュリーティアさんは大将に教わったコツを存分にふるってみたいようだ。

 俺とシャルルは煮汁を作るために、水、酒、みりん、しょうゆ、砂糖、ショウガを用意した。

 三人分のヒラメを煮ることが出来る鍋に、用意したものを入れて鍋に火をかけた。


「沸騰してポコポコなったら、シャルル隊員は報告をするように」

「はい!」


 煮汁の見張りをシャルルに任せて俺は片付けをする。

 片付けをしているとどうやらリュリーティアさんがヒラメの下処理を終えたようだ。


「さすが大将は専門家ですわ、いつもよりとてもスムーズに内臓を取り除けました。そちらもそろそろ煮汁ができそうですか?」

「はいっフットーしました! ポコポコしておりますトージ隊長!」

「よーし、では一度火を止めるのだ。気をつけろよー」


 ちょうど煮立ったので一度火を止め、下処理の終わったヒラメを皮を上にして入れていく。

 入れたら皮が剥がれにくくなるように一度煮汁をヒラメにかけて、もう一度火をかける。

 また沸騰したら落し蓋をして15分ほど煮立たせれば完成となる。


「では今度は焼き魚を作りますがこれはすぐに作れます。なんせ焼くだけですので。という事で使うお魚はコチラですわ。オンコロヒンチスマソウです」

「は?」

「オンコロヒンチスマソウ」

「魚ですか……?」

「見ての通りお魚です」


 見た目は魚だけどなー、名前がなー……。

 いや俺も元の世界のどこかで見たことある魚ではあるんだけど、そんなに詳しくないからなぁ。

 背に黒い斑点と黒のラインみたいな模様が特徴の魚。

 大きさも三十センチに満たない大きさだ、うん分からない。


「オンコロヒンチスマソウ、略してオンちゃんは塩焼きにして食べるのが一般的でとても美味しいです。この調理場にはグリルがありますのでそこにぶち込みましょう」

「オンちゃんに突っ込むのか、ぶち込むにツッコミを入れるのか迷いどころです」

「オリーブフラウンダー同様、スチールウールでヌメリを取ります。軽く擦るだけで大丈夫ですわ」

「なるほど、ではシャルル隊員やるぞ」

「はい隊長っ」


 流水で流しながらスチールウールで擦る、以上。

 内臓と血合いを取り出すので一旦リュリーティアさんがオンちゃんを捌く。

 尾の方から包丁を少し刺してゆっくり頭の方に割いていく。

 喉の膜みたいなところから頭に向かって割く、切った喉の部分に指を入れてエラを掴み、そのまま引っ張るとズルルと内臓が綺麗に全部取れた。

 今度は血合いを取るために爪で背骨に沿った部分をゴシゴシと掻いていく、最後に流水で流すと赤黒いのが取れて綺麗な身となった。

 他の二匹も手際よく内臓と血合いを取り除く。


「これでグリルにぶち込みオンちゃんを地獄の業火で焼き殺すのですが、その地獄の業火の前に敵に塩を送るという意味を込めてシャルルさんこれを」

「お塩をかければいいんだね! パラパラ〜」


 敵に塩を送るとはそういう使い方なのだろうか。

 背、腹と軽く塩をまぶしてグリルにオンちゃんが投入された。

 中火で十分焼けばオンちゃんの塩焼きが完成だ。


「これでオリーブフラウンダーの煮付けとオンコロヒンチスマソウの塩焼きの完成ですわね。お皿を用意して出来るのを待つとしましょう」

「「はーい」」

 

 グリルからパチパチとオンちゃんの断末魔が聞こえてくる中お皿を用意していった。








 出来上がった料理を部屋へと持ち帰りテーブルに並べて夕飯のお時間だ。

 焼き魚は焼きたてが美味しいので速やかにいただくとしましょう。


「「「いただきます」」」


 塩をまぶされ身を焼かれたオンちゃんは食欲をそそる匂いを放ち、死んだ瞳で俺と目を合わせている。

 箸で食べようとつつくとパリパリという小気味よい皮の音が鳴り、白い身をさらけ出した。

 早速その身を口へと持っていく。


「はむっ……むぐ、むぐ……」


 美味い。塩をまぶして焼くだけというシンプルな調理だからこそ、魚本来の旨みを感じ塩がそれを援護する。

 皮も侮るなかれ、パリパリとした食感だけでなくほんのささやかな苦味が、魚の旨みと合わさって絶妙な味へと変わるのだ。

 良い、とても良い。

 黙々とオンちゃんを食べることものの数分で食べ終えてしまった。

 味が良かったからこそ、もう少し食べたいなと思ってしまう大きさだったのが残念だ。


「お次は煮付けだな〜」


 ウキウキと心の声を口に出してしまう程に期待が高まっている。

 しっかりとしたオリーブフラウンダーの身を箸で掴み食べる。

 やはりオリーブフラウンダーはヒラメの身と同じように食べごたえがある。

 これがもしカレイとなると身は柔らかく甘味を感じるのだ。

 煮汁の甘辛い味を、ほぐしたオリーブフラウンダーの身がしっかりと絡み口に運んでくれる。

 一緒に煮込んだショウガと共に食べるのも、ショウガの香りが抜けたりして味に飽きがこない。

 三人とも一欠片も残すことなく完食をいたしました。



「「「ごちそうさまでした」」



 どこかの店で出されていると言われてもおかしくない美味しさであった。

 三人で分担して後片付けをしていく。


「捌くのを除けば簡単な料理でございましたでしょう?」

「まあ焼くだけ、煮るだけでしたので。魚を捌くのがすぐ上達するコツとかは無いんですか?」

「コツコツ練習することですわ」

「やっぱりそんなものですか。じゃあ今度魚料理とかする時は、俺とシャルルで練習だな」

「バンバン三枚に下ろしてやるぞー!」

「怪我だけはしないでくださいね」


 話をしながらだからかあっという間に後片付けも終わった。

 という事でこれをもってリュリーティアさんの第1回お料理教室は終了だな。


「ではではリュリーティア先生、本日はお料理のご指導ありがとうございました。またよろしくお願いしますー」

「しますー!」

「こちらこそ、お料理を楽しくするなんて久しぶりの事でした。またよろしくお願いします」






 美味しい料理で活力もついたし、料理の練習だけじゃなくヌシ釣りの練習も頑張るぞー!

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