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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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ウンディーネの加護

 毎秒チラ見を繰り返す、いやもはやチラ見ではないことをしているウンディーネ。

 チクチクと刺さる熱い視線を避けようと、神様は俺を盾にして後ろに回る。


「闘司さん、そこをどいてもらえない?」

「チミ、ワシを裏切るなんてことはしないじゃろ?」


 神様と神様の板挟みになるなんて、世界中探しても勇者を差し置いて俺だけではないだろうか。


「あぁんもう、創造神様はどうして御姿をお隠しになられるんですか!? このウンディーネ、創造神様がいかなお姿であろうとも想い、愛し、お慕い申しあげますので!」

「愛するとかはいいんじゃけどお主の愛はちぃとばかし重いのよな……」

「いや俺の背中で小声でボソボソ言わずに直接言ってくださいよ」

「チミは鬼かっ!? ワシとて言ってはいけないことは弁えておるのじゃぞ!」

「創造神様とその様に密着なさって……!」


 昼メロで見るような嫉妬に狂った感情を、ウンディーネから隠すこともせずにぶつけられる。

 きっとハンカチがあったら噛み締め出すくらいだ。

 だかウンディーネは急に何かを閃いたようで、俺に笑顔を向けて語りかけてくる。


「闘司さん、アナタは魔力はあるけど魔法が使えないようね? もし、もし良かったら私、ウンディーネの加護を授けてもいいのだけれどぉー?」


 違う、これは和合ではない、買収だ。

 舐めやがって、俺がそんな簡単に力に釣られて屈するわけないだろ!!


「えっホントですか!? どうぞどうぞ」

「チミ裏切りおったなー!! 薄情者がー!!」

「うるせー! この前のくしゃみのお礼だコノヤロー!」

「ま、待つのじゃ! 押すでない、押すでない! そ、そ、そうじゃ!? ワシも加護を授けられるのを忘れておらんか!? ほら、シャルル同様チミにも好きな数の加護を与えるぞ!?」

「えー、そういうのズルっていうかー、いけないと思いますー。はいどうぞ、ウンディーネ」

「ありがとうございます♡」


 ズズいと背中に隠れる神様をウンディーネに差し出す、さすがにタックルはしなかったが神様の腕に絡みつきホールドした。


「うふ、うふふふふ。創造神様ぁ、ああ創造神様のお腕! 体温を感じ、匂いを感じ、力を感じます。ふふふふ、あっと、闘司さん約束を守るわ。はい」


 仰々しい段取りとか一切無しに、軽く手をかざす動作で俺の身体が淡い水色の光に包まれる。

 光が収まると身体の内に流れる、冷たいけれどどこか暖かい力を感じる。

 これは加護の力と判断していいのかな?

 試しにウンディーネが使っていた水の槍を一本作ってみる。


「おお? おおー使えたぞ、スゲー!」


 サイズは小さくあまり鋭利な感じではないが、たしかに水の槍を生み出すことが出来た。

 俺、初めて魔法を使ったんだ……!!

 嬉しくなって何本も水の槍を生み出していく。


「ウンディーネ、その、そんな密着されるとな……ほれ、熱いじゃろ?」

「いいえ全然! はっ……もしかして創造神様はお熱いのですか!? 申し訳ございません今すぐ私の体温を下げさせて頂きますので!!」

「いや、違うんじゃ……ちべたいのう……。ん……? おいおいチミチミ、そこら辺にしておかないと危ないぞ」

「あら、闘司さんったら……加護は与えたけど魔力量が劇的に増える訳じゃないのに。いけない、そろそろ生命力を使っちゃうわ」


 調子に乗って魔法をバンバン使っていると、急に身体が怠くなり眠気が襲ってきた。

 あれ、俺いま倒れていってない?

 視界が暗くなりゆっくりと地面が近づいて、俺はそのまま眠りについてしまった。







 前にも一度体験したことある超高級低反発まくらのような感触、頭にあたるこの感触は。


「シャルルのお膝っ!!」


 気絶からはガバっと起きるのがテンプレだろうけど、俺くらいになると膝枕から離れず目をカッと開くだけになる。

 予想通り俺を見つめている、深い緑色のガラス玉と目が合った、可愛いぜ。

 そのシャルルの顔からニュっともうひとつ顔が出てくる、この少しお怒りな金髪美女は……。


「やあリュリーティアさん、素敵な朝ですね!」

「朝ではないですしまだ夕刻にすらなっておりません。まったく、起きて早々言うことがそれですの?」

「いやぁ……あははは。それで、俺はどうしてこんな事になっているんでしょうか?」


 二つの金髪から目を外して周りを見ると、ルカ王女とウンディーネに絡みつかれた神様がいる。

 そうかそういえば俺、魔法を使っててそしたら何故か急に眠くなってそのまま……。


「闘司さんは魔力の枯渇、及び生命力を使用したことによる疲労で倒れたのですわ。前にお教えしたことを、忘れておりましたわね?」

「あっ、そうかだから急に身体が重くなって……。心配をお掛けしてすみません」

「いいのですわ別に。それよりウンディーネと戦闘してその程度で済んだとは良かったですわね。仮にもあの方は八神ですのよ?」

「いやー防戦は出来たんですけどいかんせん魔法がダメだったので危なかったです……。でもピンチになった時に神様が来たのでそんなに傷は負わなかったですよ」

「神と競り合う時点でおかしいのですけれどね……」


 リュリーティアさんが呆れ顔でもありながら俺の心配をしてくれたのは少し嬉しい。


「本当に闘司さんったら私の攻撃を避けるんだもの、最初は少し驚いちゃったわ。やっぱり……創造神様のスキルって素晴らしいぃんですねー!!」

「俺と話すか神様にマーキングするかどっちかにしてください」

「ではマーキングの方で」

「さいですか……」


 少しでも長く傍にいたいようで、俺が気絶してもなお離れないのだという。

 神様も神様で逃げようと思えば逃げれるのに、なんやかんやくっつかれたままでいるのは優しさだろう。

 ウンディーネはそれを感づいて利用している節があると思うがな!

 てしてし。

 シャルルが俺の頭を軽く叩く、効果音すら可愛い。


「ね、ね。トージも加護を貰ったんでしょ? いいなーいいなーちょっと見せて見せて!」

「シャルルさん、闘司さんは今起きたばかりで疲れておりますのよ? やめておいた方が良いですわ」

「えー……ダメ、かな?」


 キュルルンとおねだりポーズを決めるシャルル、計算ではなく恐らく素での行動だ。

 まあ計算でも素でもどっちでも構わないが、今すぐ俺は魔法を使ってもいいぞ!!

 おねだりポーズを真正面から受けたリュリーティアさん、おもむろに荷物からマナキャンディを沢山取り出し……。


「闘司さん、あーん♡」

「いや待って待ってくださいその量は一口で入るものではあっやめてくだはぶふぉっが!!」

「ごっくん♡」


 ごっくんなど生易しい表現なんてものじゃない、詰め込まれたマナキャンディを噛み砕かせるべく、俺の頭部を手で力一杯挟み込んだのだ。

 削岩機の如く砕かれていくマナキャンディ、俺の歯が無事に耐えられたのは奇跡と言って差し支えないだろう。

 力技により俺の魔力が回復していくのが分かる。

 これなら魔法を使えるよ、あががが……。


「これで使えますわね。さあシャルルさんのために早く何か魔法をどうぞですわ」

「イエスマム!!」


 恐怖政治により俺は水の魔法を試みる。

 さっきは水の槍を作ったので違う魔法にチャレンジをしてみよう。

 何かいい魔法は……そうだ、水じゃないけどルカ王女みたいな魔法を試してみよう。


「じゃあシャルルいいか? いくぞー……アイスソード!!」

「おおーカッコイイー! 氷の剣だー!!」


 それっぽい名前を付けて氷剣を作り出してみた、案外上手く出来たようだしそれに掴んだ手が全然冷たくない。

 溶ける感じも無さそうだし魔法ってのは面白いなぁ。


「へへへ、どうだシャルル!」

「よーし、ボクも……ウインドソード!」


 風がシャルルの手元に集まり剣の形を作り出す、あれ? 俺が作った感じよりとっても格好よく形成されなかった?

 それに……質っていうのか力があるっていうのか、とにかく俺のより綺麗な剣に見える。


「どうだートージ!」

「す、すごい強そうだ……」

「秒で負けましたわね。仕方ないですわ、シャルルさんと闘司さんでは魔力量も魔法の練度も違いますから。加護のみではそこは覆せません」


 なるほど、魔法に慣れしたんだシャルルと魔法が一切無かった世界の俺ではそういう差があるのか。

 要はひたすら練習すれば良いんだな!


「闘司はウンディーネ様の加護を攻撃に使うより、回復とかの付与魔法に使った方がいいんじゃない? 攻撃魔法はシャルルとかリュリーティアの方が使えるみたいだしね」

「あーそうですね、その方が良いかもしれません。それじゃあえっと……えい」


 鞭で擦られてヒリヒリしている鼻を治すように水の魔法をやってみる。

 小さく手が水色に光り、その手を鼻にかざす。

 ヒンヤリとした感触の次に湿ったような感じがすると、ヒリヒリとした痛みが消えた。


「おー痛くなくなった!」

「闘司の自動治癒は闘司本人だけでしょ? ならリュリーティアとかシャルルが怪我した時に回復薬とか無かったら困るだろうから、そういう魔法を練習しといて損は無いわよ」


 リュリーティアさんがジェミニにやられてしまった時も気絶してて困ったし、そういう時のためにこのウンディーネの加護があると心強いな。






 そうして何回か魔法を使った所でまた魔力が無くなるといけないとのことで、これでお開きすることになった。

 ウンディーネは神様から離れたくなくて号泣をしていたが、神様がまた来てやるからと(なだ)めて渋々了承した。

 ということで俺達もアクア城に帰るため帰り道を歩く。


「あれあれ? 今日は仲良く手を繋がないのかしら?」

「えっ……!? いやまー、その、ねぇ?」

「はい? まーそうですわね、その、ですわね」

「答えになってないわ」

「うーんボクはそうしたいんだけど、トージとリュリーティアが恥ずかしがるんだもん」

「あらあらぁ? ってことは私がいるからかしらぁ? それならゴメンなさーい、今から私が一人で帰っても良いのよ?」

「大丈夫てす」「結構ですわ」

「かー! 三人の輪の中に私は入れないわー! 残念だわー!」


 とても面倒臭い王女様を放っておいて先に行く。

 だが、まわりこまれてしまった!


「いやー逃げなくてもいいじゃない! いいのよ? そういう仲睦まじい感じとか私は大好きよ? ほらほら私は居ないものだと思ってさ、ささどうぞ!」


 王女にあるまじき煽りにイラッとした俺とリュリーティアさん。

 互いに目を合わせ頷き行動を開始する。

 リュリーティアさんが素早くルカ王女の足を担ぎあげる。


「えっちょっと? なになにぃーっ!!?」


 ブランブランと揺れる上半身をすかさず俺が担ぎ上げる。

 イッツァ神輿スターイルゥ!!


「「わーっしょい! わーっしょい!」」

「馬鹿共コラやめなさい! やめろってー!」


 聞く耳を持たずそのまま民家や人気が多くなってきたところを、ルカ王女を神輿スタイルのまま闊歩(かっぽ)していく。

 何事だとざわめき集まり出す人達の前で公開処刑。


「「わーっしょい! わーっしょい!」」

「あははー! わーっしょい! わーっしょい!」

「ねぇ、人見てるから!! 私は王女よ!? お願いだから止まってってばぁ!」








 そのままヤケクソでアクア城まで神輿を貫いてやった。

 この日を境にルカ王女は冷やかしをしなくなった。

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