異世界での初めての
ズキリとお腹と背中が痛む。
痛みに反応して目を開けると、深い緑色の輝きと目が合った。
「うわっ!? ぐっ、痛た……」
「あぁ! おにーさんまだ動かない方が良いよ!」
いきなり目が合って驚き、起きようとしたらまた痛みが背中にはしった。確かに動かない方が良いみたいだ。
横になったまま再び輝きと目が合う。
「大丈夫? おにーさんさっき森でベビースライムにやられた……んだけど、覚えてる?」
心配と困惑が混ざった感じの表情で、こちらを心配してくれているこの子はよく覚えている。
スライムに吹っ飛ばされる直前に助けを乞うた、金髪で耳の長い少年じゃないか。
死を覚悟した場面なのでよーく覚えている。
「ここは…どこ、なの? きみは……森で」
「そう! 森から急に声が聞こえたから何かあったのかと思ったら、おにーさんがいたんだよ。で、この戻りの村に連れてきたんだ!」
「戻りの村?」
「うーん、色々説明してあげたいけどまず先に聞いていい? おにーさんもしかして、山から降りてきた冒険者の人?」
「う、うん。いや、冒険者、てのじゃないよ!?」
どうして降りてきたって分かったんだろう。
「えっ? 冒険者じゃないの……? いやでも、じゃあどうしてあんなボロボロだったの? 山頂にいるマウントグリフォンにやられたんじゃないの?」
とんでもない。
そんな恐ろしそうなのに会っていたら、とっくに2度目の人生が早期終了していただろう。
スライムですらあんな強いってのに……。
「いや俺はちょっと、色々あって山の中腹から降りてきて森に入ったんだ。だからその、マウントグリフォンなんてのとは遭遇してないよ。」
「なんだーそうなんだ良かったー! てっきりマウントグリフォンに襲われたから逃げてきて、森で力尽きちゃったのかと思ったよ」
少年はほっとしたようにしてから、また困惑した表情を向けて聞いてきた。
「えっじゃあおにーさんはマウントグリフォンにやられた訳じゃなくて、ホントにあの森のベビースライムでやられたの? 嘘じゃなくて」
「命の危険だったからあの時キミに助けを求めたんじゃないか……。嘘をつく意味もないし」
さっきからこの少年は俺があのスライムにやられた事が不思議らしい。
あれ?そういえば……
「ちょっと気になっていたんだけど、ベビースライムって俺を襲ったあれのことか?」
「おにーさん……ぷっ……はははは! 襲ったってそんなバカな事あるわけないじゃん! あれはじゃれていただけだよ? じゃあおにーさん本気でベビースライムにやられたんだ、あはははっ!」
爆笑である。
笑っている少年には悪気が無く嫌味な感じがない笑い方だけど、ちょっとムッとしてしまう。
だって凄かったんだぞ。吹っ飛ばされたんだぞ!
それにあれってスライムじゃなくてベビースライムだっていうのか?
「はは……あー、ごめんねおにーさん。まさか本当にベビースライムにやられたとは思っていなくて」
「そんなにおかしな事なのか?」
「うん、だって成長したスライムでさえ子供でも簡単に倒せちゃうんだもん。ベビースライムにやられたおにーさんにビックリしちゃうよ!」
マジかよ……。ここの世界の子供が凄いのか、俺が弱すぎるのかどっちなんだ……。
「あれ? もしかして……」
「ん? どうしたの?」
もしかするとコレが神様のくれたスキルの効果じゃないだろうな……?!
スキル[ステータス変動]はたしか相手よりも常に少し強くなるって話だったはずだ。
ここの世界のモンスターの強さは分からないけれど、この世界の子供が成長したスライムを簡単に倒せるってことだから本当に弱いモンスターなんだ。
じゃあ俺の能力はそのとても弱いベビースライムより少し強くなった程度ってことになるんじゃないのか!?
何だこのスキル!? やっぱりやべースキルじゃないか! こんなヤバいスキルむしろ無い方が良いんではないだろうかと本気で思うぞ。
「大丈夫? おにーさん、傷が痛むの?」
少し長く考え事をしていたのと、ダメそうなスキルを貰ったことによる苦悩が顔に出ていたのか、少年が心配してきてくれていた、俺は慌てて答える。
「いやいや違うんだ! えっと、あの森のことを考えていたんだ。いつまでも抜けれなかったのはなんでかなーって……」
「あっそういえば説明するんだったね。えーと、おにーさんがいた森は戻りの森。ここは魔力が集まる地の影響なのか普通に森を進んでも先には出られないようになっているんだ。多分おにーさんは普通に進むだけだったから抜けられなかったんだよ」
なるほど、いや理解も納得も追いついていないし、魔力って。
いやモンスターもいるし異世界だからなのだろうけど、なんだかなぁ。
「じゃあ、どうすれば抜けられたんだ?」
「それは簡単だよ、進んだ道を戻ればいいんだ。進んだ分だけ道を戻っていくと進めるの、だから戻りの森」
「はぁ……?」
そんな3歩進んで2歩さがる的な歌が浮かぶ事を実践できるのか普通。
食料や居住の心配、さらにモンスターに怯えるあの状況下で戻る選択肢は全く出てくるはずがない。
「詳しくは分からないんだけどそうなっているみたい。でー、その森のすぐ近くにあるこの村が、戻りの村だよ!」
何にせよ、命の危機らしき事態があったけれど目的であった村に辿りつけたのは良かった。
おっと忘れていた、この子に助けてもらってお礼も言っていなかったな。
「とりあえず俺を助けてくれて村に運んできてくれたのがキミだったんね、本当にありがとう。ところでキミの名前は? 俺は八代闘司って言うんだけど」
「ぼくはシャルル!よろしくねトージ!」
「ああよろしくシャルル」
パッと明るい笑顔でいる少年にちょっと聞いてみた。
「そういえばシャルルのその長い耳って……」
「ん? この耳? トージもしかして、見たことない?」
「うん。珍しいなっておもって」
「ははっ珍しくもないよー! この耳はエルフなら当然だもん。」
えっ。
エルフ……?




