人質救出・城奪還作戦
ルカ王女の魔法により裏口まで敵に見つかることなく進められた。
「じゃあここからは先に行ってもらうわ。城の造りはアクア城と全く一緒、城内図は持ってるわね?」
「はい、持ってきています」
「よし、上に三つの尖塔があるのだけれど恐らく人質はそのどれかにいるはず、なので私とシャルルはそこに向かう。そのために闘司達は広間や廊下を思う存分に暴れ回ってちょうだい」
城の上にある尖った所か、そこそこ広いしわかり易いので人質を閉じ込めておくには良い場所という理由だな。
「念の為にもう一度だけシェイドコートをかけておくけど、効果は最初の戦闘が始まるまでと思ってちょうだい」
「ありがとうございます」
「シェイドコート……! よし、じゃあ死なないように好きなだけやってきなさい!」
「さぁ行きますわよ闘司さん。楽しい楽しい時間が始まりますわ!」
臨戦状態のリュリーティアさんはすぐさま飛び出してしまったので慌てて後ろを追いかけていく。
「闘司、それにリュリーティア、頼んだわよ……」
我等好き放題コンビは最初の獲物を捕捉した。
廊下を巡回する魔物が三体。
一体は目玉が大きい魔物で、パタパタと飛んでいる。
残り二体は同じ魔物で、花のような姿で葉っぱが手、根っこが足となっている。
姿はメルヘンチックだけど顔がラフレシアのように開き、牙がゾロリと生えている。
「アーリマンとヒューフラワーですか……私がヒューフラワー二体を引き受けますので、闘司さんは飛んでいるアーリマンをお願いしますわ」
「せめてもう少し情報をいただけますでしょうか……?」
「アーリマンは目玉が弱点です。剣で刺せばピューっと綺麗に吹き出ます」
何が!? いや何か分かるけれども綺麗に吹き出ますって……ああ! もう行っちゃったよ、くそ俺も行かなきゃ!
リュリーティアさんは静かに、けれど素早くヒューフラワー一体の背後につく。
気づかれないよう剣を抜き刀身を撫でる、すると剣がほのかに赤く光る。
そのままヒューフラワーを斬ると、ボッと燃え上がり一瞬で灰になった。
それに気づいて襲いかかるもう一体のヒューフラワーも同じように斬り捨てて灰にする。
「闘司さん!」
おっとと、見ているだけじゃダメだ!
いきなり現れた敵に驚いて慌てているアーリマンに向かって俺は剣を突き立てた。
「グギィッ!!」
「うわっと!」
剣は目に刺さりはしたけれど、アーリマンはまだ生きている。
バサッと羽ばたき俺を振り払うがまだ剣が刺さったままで苦しそうにしている。
仕留め損ねたか。
「なら……!」
俺はアーリマンの目玉に刺さっている剣目掛けて上段蹴りをする。
狙い通りに蹴りが剣の柄に当たって、そのまま深く突き刺さりアーリマンは死んで地面に落ちた。
ピュー。
「まあ倒せたので良しとしましょう」
「うーん、やっぱり剣はまだ慣れませんね……」
「実戦で使っていけばより早く上達していきますわ、さっ次に行きますわよ」
アーリマンから剣を抜く、ピューピュー。
いけないいけない、何でかシュルト城下町を思い浮かべてしまった。
気を取り直しリュリーティアさんを追いかける。
廊下を進むとアクア城にもあったウンディーネを模した銅像がある広間に出た。
そこには魔物が十体ほどいた、ヒューフラワーやアーリマンが数を占める中で一匹だけ雰囲気が違う魔物がいる。
一つ目の巨人で手には棍棒を持っている。
「あれは……キュクロップスですわね。オツムは馬鹿ですが棍棒を振り回す馬鹿力は脅威ですわ。馬鹿力の棍棒に当たれば大怪我必至です。という事で闘司さん、周りは全て始末しますのでキュクロップスをどうぞ」
「どうぞって……ああもう俺の決定権が無い!」
どうぞと言った後すぐに飛び出したリュリーティアさんは、キュクロップスの周りにいる魔物達を一掃していく。
俺は倒されて開かれていくキュクロップスへの道を走り抜けていく。
キュクロップスは俺に気づき棍棒を素振りして迎え撃とうとしているので、お望み通りに正面から挑む。
攻撃の範囲に入るとすぐさま横から棍棒が唸りを上げてやってくる。
覚悟を決めて腰を落とし立ち止まる。
「フッ!! んぬぐぐ……だらっしゃー!!」
「ガァ!?」
横からくる棍棒を身体を張って受け止める、そしてそのまましっかりと掴みキュクロップスから奪い取ってやった。
「よいっしょー!」
まさか取られるとは思っていなかった様子のキュクロップス目掛けて、バットを振る要領で振り抜き、足を砕く。
膝から崩れ落ちて倒れたキュクロップスに追撃で何度も何度も棍棒を振り下ろす。
「うわっとと!? おぉ……倒せたのか」
キュクロップスが死んだことにより能力値が元に戻ったようで棍棒を落としてしまった。
だけど倒したことで、棍棒を受け止めた時に出来た傷と若干の痛みが綺麗サッパリ無くなった。
自動治癒スキル様々だ。
「キュクロップスと正面からやりあうなんて……ウィガー団長みたいな事をしますのね」
「けしかけた本人が引かないでください。アレしか思いつかなかったんですから。というかウィガーさんも今の出来るんですか……」
「それに傷まで消えて、やっぱり強力な魔物は闘司さんに全部お任せするに限りますわね」
役に立ててるのは嬉しいけど毎回ヒヤヒヤしてるのだから程々にしていただきたい。
広間の敵を全滅させたので次に向かおうとする。
「っ!? 闘司さん!!」
突如リュリーティアさんは叫ぶと俺を引っ張り銅像に身を隠した、だが次の瞬間ウンディーネの銅像は爆発し粉々に砕け散った。痛い痛い欠片が頭が。
な、なんだ!? 何が起こったんだ!
「おいおい不意打ちしたつもりだったんだぜぇ? 意外とやるじゃねぇか」
広間に響くなにかムカつく言い方の声、ホコリを払い声の方を見る。
そこに立つのはヒト、だけれど違う。
角が生えて背中には蝙蝠のような羽が生えているのをヒトと分類していいのかな?
「不意打ちにしてはお粗末なんじゃありませんの?」
「ほぉ……言うじゃねえか」
「闘司さん……」
リュリーティアさんが視線を逸らさず声を落として俺に話しかけてくる。
「ちょっと協力してやらないと難しそうですわ……」
「あいつそんなに強いんですか?」
「私よりは恐らく」
なんだって、リュリーティアさんより強い?
それは……不味いな。
「申し訳ないですが闘司さんには結構頑張ってもらいますわよ、私は援護に回ります」
「っ……分かりました。おい、そこの変な奴! お前は誰だ?」
「あぁん? 雑魚に名乗る名前は持ってねぇよ、テメーからぶち殺すぞ!」
[敵意を確認、スキル発動、能力値上昇]
相手は睨みを利かせ俺に威嚇してくる、スキルの発動を確認。
「ん? テメー今何しやがった!? こいつ急に強く……チッ! 狸野郎かよ。まぁいい仕方ねぇから教えてやるよ、オレの名前はジェミニ! 偉大なる魔族様だ!」
「魔族!? ていうとつまりお前が人質を取って立てこもっている奴ってことか?」
「ああそうだ、まぁもう一人いるけどな。でもそれは知らなくて大丈夫だぁ……今ここでオレが殺してやるからな!!」
ジェミニは叫び、突っ込んでくる。
こちらも剣を構えて戦闘態勢に入る。
「闘司さんいきますわよ!」
「はい!!」
闘司達のあとに城内に侵入した私達救出チームは上へと向かう階段を目指していた。
闘司達のお陰もあってか、進路にはほとんど魔物はいない。
順調に上へと昇れる階段の前まで来れたが、その階段には二体の見張りが立っていた。
「止まってシャルル……キュクロップスが二体か」
「うわー大きいヒトだねぇ」
「ヒトじゃないわ魔物よ。それじゃあ一体ずつ分け合いましょう、私が合図したらシャルルは手前のを、私は奥のキュクロップスを倒すから」
「うん、任せてよ!」
「他の魔物にバレないよう静かにやるわよ……いくわ!」
合図と共に私とシャルルは飛び出す。
キュクロップスは私達に気づいたようで棍棒を振り回し寄ってくる。
「デカくて邪魔なのよさっさとどきなさい! アクアジェイル!」
キュクロップスの体全体を水の檻が閉じ込める。
必死に逃れようと暴れているが水の檻はそんな事では消えない、やがて息が出来ずだらんと手足から力がなくなり溺死した。
「シャルルそっちは……うわぁ……」
シャルルの方を見ると五体綺麗に分かれたキュクロップスが地面にあった。
「楽勝だったねー」
「はは、そうね……」
自分もそうだけど加護持ちはやっぱりおかしいわね。
とにかく見張りを倒したことで階段を使えるようになった。
そのまま階段を昇っていく。
階段を昇りきり少し長い廊下を進むと3つの扉がある大広間に出た。
幸いここには魔物の見張りはいなかったので右側の扉から調べていく。
「誰かいますかー? おーい」
「誰もいないわね」
今度は真ん中の扉を開けると、中には老人やメイドいった人質がいた。
扉が開き怯えていた人質のみんなは私の姿を見ると安心したようで、涙を流したりする者もいた。
「みんな! 怪我はない!?」
「おお王女様……! 助けにいらしてくださりありがとうございます……。大丈夫です、ここにいる子供や大人達に怪我人はおりません。ただ……」
「ただ?」
「ぎゃあああああああ!! いだいいだいいだいぃ!!!」
「「!?」」
「ああ……すまない、すまない助けてやれず……許しておくれ……」
まだ見ていない隣の部屋から絶叫が聞こえてくる、その声を聞いた途端老人は震えだしてしまった。
これは話をしているよりも急いで隣の状況を確かめなくてはならない。
シャルルと共に部屋に突入する。
その部屋には悪臭が漂っていた、部屋は所々に赤色の液体が飛び散り、至る所に異様な器具が沢山置いてある。
「おやおや? キミたちは誰かな、人質の中にはいなかったはずだけど」
声を掛けてきた男は、壁に磔にされて手足に寸銅釘が打ち込まれている男性を弄んでいた。
手には小さな刃物を持っており、私達に声を掛ける間にも男性を傷つけて悲鳴を楽しんでいる。
「アンタ何やってんのよ!!」
「先に僕の質問に答えておくれよぉ、まあいいや今はねお医者さんごっこをしているのさ」
楽しそうに笑顔で刃物を指揮棒のようにしている。
気持ちの悪い雰囲気を醸し出すその表情は、こいつは狂っていると告げてきてくれる。
「これの前は処刑人ごっこをしていたんだけど、アレはダメだね。アッサリと殺すのはつまんない。ギロチンとかは殺す前は泣き叫んで面白いんだけど、一度刃を落とすとそれでお終いなんだ。だから今のお医者さんごっこは割と気に入ってるんだぜ?」
「こいつ……!! 人の命で遊んでんじゃないわよ!!」
「やだなぁ人間だって魔物相手に似たような事をやっているじゃないか、一緒だよ一緒。最終的に殺すところに差異はなーい」
ダメだこいつと話しているのは私の精神衛生上よろしくない、それに早くしないと男性の身が危ない。
「ん? なに、やるの? 今の患者のオペが終わるまで待ってほしいんだけど……」
「シャルル、本気でコイツをやるわよ」
「うん。ボク、本気でやる」
「あれあれ、そこの坊やも僕を? 困ったなぁ、兄さんが侵入者を倒してくるまで面倒はゴメンだったのに。ふぅ、仕方ないからやってあげるよ。ああそうそう、僕は偉大なる魔族の一人、ジェミニだ。兄さんと同じ名前なんだぜ、最高だろ?」
無視してジェミニとの間合いを取る。
シャルルも同様に間合いを取る。
「なんだいなんだい、戦闘のマナーがなってないなぁ。まっいいや、それじゃあ新しい患者になってもらうとするよ!」
コイツは全力で容赦なく倒さなければいけない。




