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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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水中の城

 ルカ王女は湖に向かって歩いていく。

 気づかなかったが足元には階段がある、それを下りて湖に入っていくルカ王女。

 そしてそのまま頭まで湖の中に沈んでいった。

 ……、……、……。


「ってちょっと! 早く来なさいよ!」


 頭をニュっと出してきて俺たちに怒る。

 その姿は軽くホラーである。


「いやちょっと無理があるといいますか……、なんでそんな遠慮なく湖の中に沈んでいけるんですか」

「貴方達に渡したイヤリングを私も着けているのよ、だからこうして水の中に入れるの」

「なるほど、分かりません」

「はぁ……歩きながら説明してあげるから、まずは騙されたと思って入ってきなさい。大丈夫、死にはしないから」


 ほんとぉ? でもこうしていても埒が明かないし腹を括って入るとするか……。

 恐る恐るまずは足を入れる、おお? 今度は腰まで、あれあれ? あっという間に頭までボチャン。

 身体が水で濡れた感触が一切無い、それに息も普通に出来るし会話も出来る。

 水の中は、陸の上と一切変わらない様子で俺達を迎え入れてくれた。


「ほらね、大丈夫だったでしょ?」

「凄い……どうして」

「それはさっき渡したイヤリングの力よ。それはね、ウンディーネ様の魔法の力で作られているの。それのお陰で、こうして水中での息も出来るし、会話も、それにこんな事も出来るの」


 そう言ってルカ王女はジャンプをした、けれどそのまま地面には降りず止まっている。

 いやこれは水中で泳いでいるかのようだ。


「こんな風に自由に泳いだり……よっと、こうして歩いたりも出来るのよ。凄いでしょ?」

「お、俺も出来ますか!?」

「もちろん、浮かぶ姿を思いながらジャンプしてみなさい」


 ドキドキと期待に満ちた状態でジャンプをする。

 足は地面につかずそのまま俺は浮かんでいる。

 おおおー!浮いてるわ俺!


「あートージずるいよボクもやるー! えいっ!」

(ワタクシ)もちょっと……。えいっ」

「ふっふっふ、これくらいで驚くのはまだ早いわ。水の都と言われるアクアヴェネツの魅力はまだ沢山あるんだからね。さっ、楽しんだしそろそろ行くわよ?」


「うわー見てみろよシャルル! ほらほら、このまま動けるぞーははは!」

「ボクだって……ほら! 一回転したよ!」

「中々面白いですわね……」

「もういいから早く来なさい!」







 水の中を歩くという摩訶不思議な体験をしている俺達は、忙しなく周りをキョロキョロしている。

 家があり、店があり、そして人がいる。

 俺達と同じように水中を歩き、時には俺達の真上を泳いでいく人もいる。

 家があるので当たり前だが、ここ水の中で生活をしている人達は沢山いるみたいだ。

 ここに長く居ると本当に水の中ということを忘れてしまうくらい、周りの人達の雰囲気は陸の上そのままでいる。

 そんな中をルカ王女は城の方向にひたすらに歩いている。

 そういえばあの城、陸にあった城と似ているというか、瓜二つじゃないか。

 わざわざ同じ城を水の中に建てるとは、俺の中の常識なんてあって無いようなものだな。

 しかし、ルカ王女はどこまで歩き続けるのだろう。

 宿屋なんて特にこの辺には見当たらないし、むしろ歩き続けるにつれ段々と民家と人が少なくなっていっている。

 さすがに心配になったのでルカ王女に尋ねる。


「あのルカ王女、宿屋を紹介してくれるのでしたよね?」

「そうよ? 部屋は大きくて快適で、美味しい食事が三食出てきて、オマケに料金はタダ同然! そんな素晴らしい宿屋を貴方達に特別に紹介してあげるのよ」

「失礼ですけどルカ王女、あまりにも怪しいですわよその宿屋」

「まぁまぁ騙されたと思ってついてきなさいよ、悪いことなんてこれっぽっちも無いんだから」

「ボクは美味しいゴハンが食べられるなら何でも良いなぁ。」


 約一名は全然気にもせず料理の心配をしている。

 俺はリュリーティアさんと目配せで意思の疎通を図るが、絆のレベルが足りなかったので、あなた何変な顔してますの? みたいな目で見られてしまった。

 仕方ないので諦めてそのまま大人しくついていく。


 それから歩く事十分程、ようやくルカ王女は立ち止まった。


「ふぅ、お忍びだから迎え用の水馬車を呼べないのは大変だったわね。さてと、ようやく目的の場所に着いたわよ」

「はぁ、それで宿屋は何処ですか?」

「何言ってるのよ。だから目の前にあるじゃない」

「はい?」


 目の前って、いや城しか無いじゃないか。

 周りを見ても家一つ無い。

 あるのは白く立派な外壁と鉄の城門くらいだ。

 どこに宿屋の看板があるというのか。


「闘司あなた察しが悪いわね〜。だから、貴方達の泊まる宿屋はここ、この城よ」

「またまたご冗談を……何処にもピンク文字の看板なんてありゃしないじゃないですか……」

「闘司さんピンク文字の看板なんてガラシャの宿屋だけですわ、しっかりしてください」

「えっ!? ボクたちこんな大きな城に泊まっていいの? ルカ王女ありがとー!」

「どういたしまして、シャルルは察しが良いみたいね。それじゃあ立ち止まってないで早く中に入りましょ、貴方達とお話もしたいしね」


 ええ……城……本当にここに?


 そしてルカ王女は普通に城門横の扉から中へ入っていく。

 その途中、屈強そうな兵士がいたが、ルカ王女を見るや否やガッチガチに全身力が入った様子で敬礼を始めた。


「お勤めご苦労様です、あっ、この方達は私のお客様なので失礼な事はなさらないように。それでは城の皆に伝えておいてください」


 兵士はそう言われると大きく返事をして全速力で走り出した。

 そのまま城内に連れていかれ、大きな広間に案内される。

 そこには水を使った装飾や小さな噴水まで置かれていて、真ん中に一際目立つ銅像が置かれている。

 その銅像は右手を高く掲げ、その手からは水が出ていて身体の周りを流れている。

 生き物のように全身を流れる水のベールは一種の神々しさすら感じられ見蕩れてしまう。


「綺麗ですわね……」

「その銅像はね、ウンディーネ様を模して作られたの。そしてその全身を流れる水には水の魔法が込められているのよ」

「銅像を見て感動したの初めてですよ。そうだルカ王女、この銅像の写真を撮ってもいいですか?」

「写真? もちろん好きなだけ撮って構わないわよ」

「ありがとうございます!」


 カメラを取り出して銅像を写真に収める。

 写真と生で見るのとでは神々しさを感じられなくて違いがあるけれど、こんな物があるという思い出を形に残すために写真は欠かせない。

 忘れずにシャルルも一緒に映り込んでもらう。

 何枚か写真を撮ってカメラをしまう。


「満足したかしら。それなら貴方達の泊まる部屋に案内するからついてきてちょうだい」








「この部屋が貴方達が寝たりする部屋よ」


 案内された部屋は部屋と呼んでいいのか分からないぐらいの広さで、しかもなんかやたらと高そうな絨毯だったりベッドだったりが置いてある。天蓋付きだぞあのベッド。


「もし不満なら他に部屋はあるのだけど」

「いいえ、全く不満などありません」


 キッパリとお答えしておく。

 この部屋で不満を垂れるやつなんかいたら毎朝タンスの角に小指をぶつける呪いをかけてやろう。


「そう、なら良かったわ。それじゃあ……貴方達って宿屋を探していた以外に用事ってあった?」

「いえ、これと言ってありませんですわ」

「やった! だったらさ、私とお話しましょう、ね?」

「良いですよ、こっちがお話したいくらいでしたので」

「じゃあじゃあ私お菓子とか持ってくるから適当に座って待っててちょうだい!」


 ルカ王女はパッと喜んだ顔をして物凄い勢いで部屋を出ていった。

 残された俺達はお言葉に甘えて人生初の高級そうな椅子に座ることにした。

 シャルルは天蓋付きベッドにダイブしている。

 ボヨンと一度跳ね返した後そのままシャルルを飲み込むかのように沈んでいくベッド、とても気持ちよさそうにシャルルは飲み込まれていく。

 さてさてルカ王女は何で俺達なんかと話しがしたかったのだろう?

 旅人だから色々な所の話を聞かせてもらえると思っているのかな、だとしたらとんでもなく申し訳ないけど。

 イヤリングも貸してもらって寝泊まり出来る場所も借りていざお話だの場面でガッカリされて出ていけコノヤロー! みたいな展開にならないだろうか。

 もしかしていきなり連行されてそのまま獄中生活に突入してしまうのでは!?


「闘司さんその百面相は面白いですけれど、シャルルさんが寝ちゃいましたわよ」

「何と……まあ寝る子は育つって言いますのでそのまま寝かしておきましょう」

「なんて言いつつカメラを取り出すのですね。ダメですわ、(ワタクシ)に寝顔取らせてくださいまし。闘司さんばかりはズルいですわ」

「えー、俺も堪能したいのにー」

「まだまだ機会はあるんですからいいじゃないですの」


 くっ、仕方ない。ここは譲ってやろうじゃあねぇか。

 リュリーティアさんはシャルルを撮るのに没頭してしまったので俺は静かにルカ王女を待つことにしよう。

 そのまま待つこと十分程……まだ来ない。

 このお城はデカそうだったし移動も大変なんだろうそうだそうだ。

 それから待つこと二十分程……静かなものだ。

 リュリーティアさんも流石におかしいと思ったのか探しに行かないかと提案してくる。


「でも勝手に出歩くのはマズイのでは?」

「そうですけれどこのまま放ったらかしにされるよりは建設的ではないですの?」


 このままじっとしているよりは良さそうではあるけれど……どうしようかな。

 そうだ、俺達はルカ王女の客人として招かれたんだから、城内を歩いても大丈夫なのか。

 不審者としては扱われないし、何よりもっと城というものを見てみたい気持ちもある。


「リュリーティアさん、探しに行きましょう」

「そんな少年みたいな目をされても、目的はルカ王女なのですわよ?」

「分かってます、分かっていますよ。そのついでにちょっと城内見学するだけですから」

「気持ちは分からなくはないですけど……はぁ、とりあえず行くなら早く行きましょう」


 シャルルは起こすのは可哀想なのでそのままにしておく。











 という事で俺とリュリーティアさんは扉を開けてルカ王女の捜索を開始した。

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