返済の折には・2
フラウさんの借金問題が思わぬ形で解決してしまったけど、まだ聞かなければならない事があった。
オグマさんの教会の件だ。
それをドランに伝えてみると少し予想していた感じの答えが返ってくる。
「いや、その教会は確かに権利を買えないか頼んださ。なんせ寄付はあるっつっても管理が厳しそうだったし、あそこには孤児院もあるだろ? そこの可愛い子供たちが貧しい思いをしてもらいたくなくて話を持ちかけたんだ。でも神父さんに断られちまって仕方なく諦めたんだよ、でも何か力になりたくてな、あの三馬鹿共に周囲の人達に寄付を頼めるかお願いできないかって言ったんだよ。もちろん俺も匿名で寄付したぞ」
「そう、だったんですね……」
「それなのにあの三馬鹿は何を勘違いしちまったのか、俺があの教会で商売するために教会が必要だなんて思って、挙句の果てに住民に寄付をお願いするんじゃなく恐喝までしやがったときたもんだ……頭いてぇ……」
ドランは頭を抱えて物凄く苦悩している。
なんかとても可哀想に見えてきた。
「いや、たしかに俺も前にアイツらにちょっとした場所が欲しいっていったんだよ……俺の個人的な趣味のためにな? それもあって勘違いしちまったんだろう……」
「個人的な趣味?」
「まぁ、その、あーもういいか、迷惑かけたようだし全部話すよ。部屋を見ての通り俺はな、可愛いものが好きなんだ」
それはこの部屋でよくわかる。
「そして可愛い子も好きだ、男女関係なく」
それは一部わかる……はっ!? これが似てるって言われる原因か!?
「んで……そういった可愛い子が可愛いものを着て接客をするような店を持ちてぇな、どっかにそんな場所ねぇかなとかをアイツらに……話したから多分こんな事に」
「アホですわね、どちらも」
手厳しい……。
しかし話を聞いて俺は段々とドランに親近感を得ていった。
可愛い子が可愛いものを着る、その思想は賞賛して拍手を贈るべきだろう。
俺もまたさっきのドランのように同士を見る気持ちで見てしまう。
「今度またその教会に手土産を持って謝罪しに行くとする……」
「貴方の顔を見ると子供達が怖がるのでマスクでもしていきなさい」
毒が絶えないなリュリーティアさん。
ドランも子供達が怖がると言われてそれを真に受けている。
マスクは噴水広場に売っているのか? とリュリーティアさんに聞いているし。
何だか凄い肩透かしな気分だ。
悪党だと思っていたドランは全然悪いヤツじゃなく、むしろ善行をしていた。
根本的な原因が全部あのクズトリオのものだったとは。
でも本当に良かった、争いは起きなさそうだしこの事実をオグマさんたちが知ったらきっと安心してくれるだろう。
報告をするために皆に帰ろうと告げるとドランに呼び止められた。
「ま、待ってくれ! 一つだけ頼みがあるんだ!!」
「頼み?」
「えっと、そのだな、シャルル、くん」
「なぁに?」
なんかモジモジしながらシャルルを見つめている。
リュリーティアさん、ステイ。俺も辛うじて攻撃をしていないので耐えてくれ。
やがて意を決したのか話し出す。
「シャルルくんの写真を撮らせてもらえないかしら!?」
俺達は一階に連れてこられた。
そこからドランは何も無い壁を押す、すると壁がドアのように開きその奥に部屋が現れた。
中にはビッシリと色々な種類の服が置いてある。
ドランが着るには小さくて、かつ女性の服もあるこの部屋は先程のピンクの部屋なんかとは比べ物にならない衝撃だ。
「なんだ……ここ?」
「アタシのコレクションよ、いつかここにある服を来てもらってお店をして欲しいと思っているの。ささっシャルルくん、こっちに試着室があるから早速着替えて撮影させてちょうだい!」
「はーい!」
スタスタとカーテンで仕切られた部屋に入っていくシャルル。
すぐさまドランは険しい顔をしながら服を選んでいく。
数着を持って試着室のシャルルに手渡して、今度は何処から持ってきたのか三脚とカメラを取り出してきた。
ちょくちょく思うけどファンタジーを保つ気のない文明の主張は何の陰謀なんだ。
ミスミか? 勇者ミスミの仕業か?
「着替え終わったよー」
「はーいじゃあ出てきてもらっていい?」
カーテンがシャッと開けられるとそこには天使がいた。
水色のシャツに白のジャケット、紺のスラックスを着ている。
そして胸元にはワンポイントアクセサリー、サングラスがかけてある。
可愛らしいシャルルとは違う少しワイルドでカッコイイ服装のギャップは簡単に俺の心を抉ってくる。
「いい! いいわ! すぅばらしぃ!! 少年の少し背伸びした感じがよぉーく出ているわ! ほらほら早速撮っていくわよォー!!」
「いぇーい!」
撮る度に様々なポーズを決めていくシャルルに目を離せない。
あっ素敵。うーん、エロティック。
そしてまた試着室に入っていった。
今度はどんな服装なのかと期待が高まる。
ドランは撮った写真を興奮したように見ている。
リュリーティアさんとフラウさんも服を眺めながらこれが似合うのでは? と会話をしている。
シャルルはいま、この場の皆を魅了しているんだ!
末恐ろしい子だぜ全く。
「次はこの服だよー」
次に着ていたのは緑を基調とした服装だ。
長袖の少しゆったりとした服、その上に枯れ草色の上着を着て、下は上より少し明るい色をしたズボンを履いていて、さらに深い緑色のマントを羽織っている。
これは、エルフ!
いやシャルルはエルフだけど、これは俺が思い描くエルフの服装だ!
何の違和感もないこの親和性、イッツァファンタジーワールド!
へへ、ドランおめぇ……やるじゃねぇか。
また試着室に戻っていくシャルル。
今度はリュリーティアさんたちのコーディネートだ。
「う、うーん、これでいいのかなぁ」
少し戸惑った声を出しながら現れた。
そこに立つのは、少女であった。
薄橙のワンピースを着たフリフリのスタイル。
いやこれ女性用じゃないのか?
「素晴らしい可愛さですわ」
「ええそうね、リズに負けない可愛さだわ」
分かる。これ麦わら帽子を被せよう、向日葵持ってさ。
ドランも特に口を挟まず一心不乱に写真を撮っている。
鬼気迫る迫力は一介の戦士のようだ。
そうしてその他にも色々と着替えた所で終了のベルがシャルルのお腹から鳴った。
「むーお腹空いたぁ。トージゴハンー」
「そっかもうお昼過ぎていたか、それじゃあそろそろ出るか」
「えっ! シャルルくんもう行っちゃうの……? また、また来てくれないかしら?! ねっ?」
「んー、トージどうする?」
「ふむ……、俺達三日後にこの町を出るんでそれまでにはまた来ますよ」
「ほんと? 信じるわよ? 絶対よ?」
「その代わりちょっと頼みが……ごにょごにょ」
「うふふ……もちろんOKよ、むしろお願いしたいくらいだわ」
ふふふ、旅の楽しみが一つ増えたってもんよ。
リュリーティアさんが訝しむ視線を向けているけど無視無視。
部屋を出て出口へと向かう。
「あっちょっと闘司君、忘れ物よ……」
そう言ってサッと渡された封筒の中には……。
「こ、これは!?」
「ふふふさっき撮った写真よ、ちょっぱや現像したの」
「ドラン……いや、ドランさん……」
「ドランで構わないわ……闘司」
グッ。
無駄な言葉を交わさず固い握手をして俺達は盟友となった。
さてと、だいぶ過ぎてしまった昼飯はどうしようかと考えているとフラウさんがお店に来て食べていってと提案したきたので遠慮なく行くことにした。
「今日は助かったわ、ドランさんがああいう人だったなんて知らなかったから。今まではあの部下の人達と借金の話をしていたのだけどね、部下の人達が話すドランさんはとっても恐ろしい人だって口を揃えて言うの。だから今日はここまでくるのがとても怖かったのよ、私だけじゃなく闘司くん達が危ない目にあっちゃうってね。でも余計な心配だったわ、ふふ」
不安が無くなって今までの肩の荷がおりたのかフラウさんはとても穏やかな顔をしている。
「ついでに借金も無くなりましたしね」
「それは流石に悪いから少しづつではあるけど返していくわ、断られても無理やり返しちゃうわ」
フラウさんは律儀だなぁ。
でもそこがフラウさんの良いところなんだろう。
そうして話しているとお店に着いた。
鍵を開けて中に入るとリズちゃんが飛び込んできた。
「お母さんおかえり! 大丈夫だった?」
「ええ大丈夫だったわ、ドランさんはいい人だったわよ。」
「えー? 本当に?」
「ふふ本当よ。今度は一緒にドランさんの所にいこっか?」
「うん!」
「それじゃあ、闘司くん達は好きな席で座って待っていてちょうだい。お料理すぐ作るからね。リズ、お手伝いお願いね」
「はーい!」
パタパタとキッチンに入っていく。
今日は窓際の近くにある席にすることにした。
席に着くとリュリーティアさんが俺の目を見て言い放った。
「で? あの時何を頼まれたのかしら?」
「あの時、とは?」
「とぼけないでくださいまし。帰る間際にドランさんと何か話していたでしょう?」
「ちょっとした世間話をば……。」
「あらそう……。私の耳には何か旅、シャルルくん、写真などのワードが聞こえてきましたが?」
ほぼ聞かれているだと!?
結構声量も小さくしかもリュリーティアさんは離れていたのに……なんて人だ。
くっ、まぁ別に話しても大丈夫だろう。
「実はですね……旅をしている時にたまにでいいからシャルルの写真を撮っておいてくれって頼まれたんですよ。んで、後日またドランの所に行ってカメラを受け取ってきます」
「やはりそうでしたか。大体予想出来ていましたけど」
では何で聞いてきたんだ……。
「ではたまには私にも写真を撮らせてくださいね」
「はいはい……ん?」
え? 今なんか気になる事を言わなかったか?
いや聞き間違いだろう、うん。
「えっと……今のはどういう?」
「だから旅の途中たまには私にも写真を撮らせてくださいと言ったのですわ」
「は? 旅の途中……?」
「ああ、そうでした。伝え忘れていましたわね」
「私も一緒に旅をさせてもらいますわ」




