基礎を学ぶ・2
魔法、それは俺の世界ではフィクションの中でしか体験出来なかったもの。
それを俺は今まさに体験しようとしているんだ!
はー、こうすっごい魔法とか使えるようになんのかなー、いやーロマンがあるなーこの世界、最高だぜ!!
小さな樹の下にきたけど、どうやって魔法を使えるようにするのかな。
「先ずは闘司さんには魔法の根源、マナを感じ取ってもらいます。魔法を教えるのはそれからですわ」
「マナ? それって何ですか?」
「魔法を使うには魔力が必要ですが、その魔力というもの自体がマナと呼ばれるもので出来ているのです。世界樹から生み出されるマナが世界全土に満ちていましてそれを取り込んで魔力とし、そして魔法として使いますの」
「なるほど、わかりません」
「とにかく私達は常にマナを感じて生きてきたので体内に取り込む事が容易なのですが、闘司さんの世界にはそれが無いと神様から伺いました。ですので先ずはマナを感じ取ってもらう事から始まります」
つまり、とにかく、なんかマナを感じ取ればいいのか。
「その為にこの世界樹の子ども、樹子のところに連れてきたのですわ。これは、そう、ちっちゃい世界樹だと思ってください。この樹からは微量ですが常にマナを放出していますの。ですのでこの樹の下で練習していただくとスムーズにいくはずですわよ」
「色々聞きたい事が出来ましたけどとりあえず挑戦してみます!」
「よろしい、では頑張ってくださいな。マナを感じ取れたら報告してきてください」
「え? 見ててくれないんですか?」
「この樹の下でならスムーズにいくとは言いましたがそれはこの世界の人の範疇ですので正直時間がかかると思います、ですので私はシャルルさんと紅茶を飲んでゆっくりしていますわ」
「なん……だと……!?」
「では頑張ってくださいませ」
待ってくれよ!! 俺も、一緒に!! お紅茶!! シャルルと!!
リュリーティアさんはシャルルを連れて練習場から出ていってしまった。
即効で終わらせてやるぞぉ!!
「ダメだァ……」
まったくマナなんて感じ取れない。
集中が切れてしまったので樹に寄りかかって休憩をする。
するとリュリーティアさんが歩いて戻ってきた。
「予想以上に苦戦しているようですわね」
「お紅茶……じゃなくて、やっぱりマナなんて分かりませんよぉ……。俺には無理なんじゃないですか?」
「弱音を吐くんじゃありませんの。闘司さんがこの世界で生きていく為に必要な事なのですわよ」
「でも……俺にはスキルがあるし……」
「でもクズトリオにやられましたわね」
「うぐっ!」
痛い所をつかれた。
「そのスキルは強大ではありますが脆さがあります。その脆さを無くすために闘司さん自身を鍛えているのです」
「へ?」
「そのスキルは闘司さんより強い相手に発動するものでしょう? それでもしかしたらと思い、本人を鍛えたらと神様に聞いてみたんですの」
「それって、俺の元の能力を上げてスキルの発動ラインを上げていこうっていう事ですか?」
「察しがよろしいですのね、それとあとは技術を知らないと上がった能力をフルに使えず結局は相手に力負けしますわ」
それは……その通りだ。
たしかに剣を相手よりも素早く振るえるかもしれないけど適当な剣なんて相手には当たらないし、魔力が相手よりあっても使い方が分かってないのでは意味が無い。
マウントグリフォンは魔物で攻撃が複雑なものでなく魔法も使ってこなかったので力押しができた。
でもクズトリオたちは連携をしてきたり魔法を使ってくる、それで背後からまんまと撃たれた。
「武や魔法の頂点を極めろとはいいませんがシャルルさんと安心して旅を続けていくなら闘司さん自信が強くならないといけませんわ、スキルに依存しきるのではなく」
「はは、シャルルを出されると頑張らないとって気持ちになってしまいますよ。……よし! やりますか!」
「単純でよろしいことですわ。でもその単純さ、私は好きですわよ」
「ぶっ!! す、すす、す?」
「なんですのその初心な反応は。そういうのはシャルルさんが似合うものなのです、ほら早くマナを感じ取りなさい」
なんて冷たいリアクションなんだ……。
樹に寄りかかっていた身体を起こそうとすると、樹から不思議な感覚を受けた。
もう一度樹に寄りかかってみる、するとなにか……そよそよ風が吹いているような……それに少し、落ち着く。
「これ……もしかして」
「どうしましたの?」
目を閉じて樹から流れるモノに感覚を研ぎ澄ませる。
それは俺の身体を周り、包み、そして身体の中へと吸い込まれていった。
それからすぐに身体に変化が起きる。
そよそよ吹いていた風のようなものが視えるようになったのだ。
それはライトグリーンのような色をしている。
「あら? 闘司さん、その魔力……ふふふどうやら出来たようですわね。本当にシャルルさんの名前を出した途端成功するのですから面白いですわね」
「いや、今のはそういう事では……」
『今のは一つ貸しということにしておきますね』
「えっ? リュリーティアさん今なにか言いましたか?」
「はい? シャルルさんを出すと闘司さんは変になると言いましたが」
「いやそれさっきと言ってる事が違うんじゃ……そうじゃなくて、一つ貸しとかなんとか……」
「空耳ですわよ、私に対して借りがあるというのなら一つじゃ足りませんもの」
サラッとなにを仰ってるんですか、まぁ本当に恩がありまくりですけど。
首を傾げて樹の方を見ても、樹はザワザワと葉を揺らしているだけだった。
「さて、闘司さんはどうやらマナを取り込めるようになったようですし、次のステップにいきますわよ」
「は、はいお願いします」
「魔法を使うために必要なものですが、魔力の他にもうひとつ必要なものがございます。それは何かお分かりですか?」
「えっと、たしか結果のイメージ……でしたよね? シャルルがそう教えてくれました。」
「その通りですわ。魔力を使い色んな結果を生み出す、それが魔法なのです。なので決まった魔法というモノは基本ありませんの。詠唱は一応ありますがコレは結果を連想しやすくするためにです、だから絶対に詠唱を唱えなければいけないということにはなりません。頭に思い浮かべて魔力を注ぎ実現させる、という事です」
「さっきリュリーティアさんが地面柔らかくしたのも、そうイメージして魔力を使ったのでそうなった、という事ですよね?」
「そうです」
やっぱりそう聞くと何でもありに聞こえてきてしまうな魔法というモノは。
空を飛ぶと思って魔法を使ったら飛べたりしちゃうんだろ?
「付け加えておきますが何でも魔法で出来るなんてことはありませんわよ。死者を生き返らせたり、無くなったものを元に戻すなど自然の摂理を捻じ曲げる事は出来ません。……まぁ神なら別ですけど」
神力に不可能はないってか。
俺を別の世界に生き返らせたり、肉を別世界から持ってくるとか超意味が分からないことが出来るのも神様の力ゆえだ。
「最初は、そうですわね……魔力を手のひらに集めて放つイメージをしてください」
「魔力を手のひらに……集めて、放つ」
体内にある魔力を手のひらに持っていくイメージをしてみると、じんわり暖かくなってきた。
そして集まった魔力を飛ばすようにイメージすると。
ボビュホ!
集めた魔力が手のひらで奇妙な音と小さな爆発になった。
「今のは集めた魔力とイメージのバランスが出来ていなかったのですわ。最初はそんなものです、何回かやれば魔力量とイメージが合わさってきて出来るようになりますわ。あっ、でも闘司さんは今はやり過ぎない方が良いかと」
「何でですか?」
「魔力量が不足するからです。お伝えし忘れていましたが魔法というものは、実は魔力の他にもう一つ使えるものがありますの」
「魔力の他にもう一つ?」
「生命力ですわ。簡単に言えば体力を消費して使えるようになります」
「だとしたら限界まで使ったとすると……」
「衰弱して死にますのでお気をつけください。でも安心して結構ですわ、自分で呼吸を止めて死ぬのが難しいように、死ぬまで魔法を使う前に気絶やらなんやらで身体からストップがかかりますもの」
そっか、それなら練習し過ぎない方が身体のためだ。
身を守る為に魔法を習っているのに魔法で身体を壊すのは本末転倒だしな。
「ということで、残念ですが魔法の実践練習はここまでにしておきましょう」
残念って。
「そうですわ。それなら座学に切り替えましょう。魔法適性の種類や特徴をお教えしますわ。これはシャルルさんもご一緒に学んでもらいましょう」
「それはとても楽しみになってきました」
「はいはいシャルルさんのいる宿舎内に行きますわよ」
リュリーティアさんは若干呆れ顔で宿舎に入っていった。
俺もその後に続いて中に入っていく、まだまだ学ぶ事は沢山だ。




