シュルト城下町の教会
熱を持っていた身体も少し落ち着いてきたのでさっき考えていた予定を提案してみる。
「なぁシャルル、教会とか興味あるか? 俺ちょっと行ってみいんだけど良いかな?」
「うんボクはオッケーだよ」
「そうかありがとう、リュリーティアさんも良いですか?」
「私も反対する理由がありませんし大丈夫ですわよ。……それにあの商人ももしかしたらいるかもしれないですしね。」
良かった特に問題は無いようだ。
最後何か言っていたけど気にしないでイイだろう。
それでは教会に向かってレッツゴーだ!
目の前に建つ建物は教会とは呼べるが、外観は少し危なげな感じであった。
壁にはヒビが入っていたり、窓は拭かれていないのか曇っているし、庭には草が生え散らかっている。
しかし植えられた花はかろうじて枯れていなく、ここだけは手入れがされているようだ。
隣には教会より少し小さい建物があるがアレは何の建物だろうか。
とりあえず教会のドアを叩き来訪を伝えてみる。
反応は、ない。
「これ入っても大丈夫なんだろうか……」
「いいんじゃないですの? 教会は祈る場所、祈りを捧げる人を拒絶するなんて神への冒涜でしょうし。こっちにも本物の神様がおりますし平気ですわ、ほらボサっとせず入りましょう」
「祈りってなにすればいいのかなぁ?」
おおよそ祈りを捧げる態度ではない二人組の後に続いて中に入る。
中は広く、来た人が座る長椅子がいくつか並び、天井などにはステンドグラスで絵のようものが作られている。
荘厳な雰囲気とはこういうものなのだろう。
主祭壇には剣を掲げた男の像がある、コレは……、勇者ってやつか?
「は〜、これは凄いなぁ……」
「これは前勇者の像ですわね。勇者ミスミと言って、魔王討伐だけでなく、未知の技術、未知の料理などを広めた方と聞きましたわ。コロッケを広めたのもこの方と聞きました、偉大な方ですわ」
ミスミ……、みすみ……、三隅、いや三住か……?恐らく日本人なんだろうなぁ……。
なんでポンポン日本人召喚されるかなぁ……、いや俺は転生ってやつか。どっちでもいいわ。
コツコツと足音が聞こえてくる、その音の方向から現れたのは眼鏡を掛けた神父であった。
「おや? これはこれは、我が教会に足を運んでくださるとはありがとうございます。それで、今日はどう言ったご要件でしょう? 寄付ですか? お祈りですか? はたまた懺悔ですか? そ・れ・と・も、寄付ですか?」
おっ、これは面倒臭そうだ。帰ろう。
踵を返して立ち去ろうとすると肩を掴まれた。
に、逃げられない!?
「おやぁ残念ですねぇもうお帰りになってしまうんですか? まだ私達は邂逅して分も経たないではないですか。より親密になるためにお話を致しましょう、ええそれが良いと神も仰っております!」
神様そう言っているなら許しませんよ。
本当に逃げるのは気が引けるので仕方なく抵抗をやめる。
「そうですねお話をしましょう。俺は八代闘司、貴方は?」
「ああ、これは失礼しました! 私はこの教会の神父をしております、オグマと申します。そちらのお二人は?」
「ボクはシャルル!」
「私はリュリーティア・アルチュセール。リュリーティアとお呼びください。」
「これはこれは、宜しくお願いします。む? ……シャルルさん、アナタ……?」
オグマさんがシャルルをジロジロと見ている。
おいこら、やめろなさい。
オグマさんはシャルルを少し見たあと信じられないという様に質問した。
「あ、アナタ、ジン様の加護をお持ちなのですか……? どうやってその加護を、いやアナタは神人なのですか?」
「え? この加護は神様からもらったんだー。あっ神様ってのはジン様のことじゃなくて神様の神様のことだよ! 闘司とボクとリュリーティアの友達なんだ! だからボクはシンジンってのじゃないよ。」
シャルルの説明は分かる人には伝わるがそうではない人には一切伝わらないので困ったものだ。
しかし見ただけでシャルルがジンの加護を持っているなんて分かるものなのか。こちらの世界の神父という職業故の力なのかな。
リュリーティアさんは加護を持っているという事に少し驚いていたし、誰にでも分かるものじゃないって事なのか。
「創造神様の神様……? そんな、そんな事があるんですね……」
「あーオグマさん? 信じられないと思いますがほぼ正しいのでどうか怒らないでください」
「怒る……? 何を仰るんですか! こんな、こんな素晴らしい奇跡のようなことをどうして怒れるのでしょう!! 神人でもない者が加護を持ち、あまつさえ上位の神様と交流をしているなんて事実!! 奇跡と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょう!? ぜひ、是非とも詳しくお話をして頂きたい!!」
何かイケナイスイッチを押してしまったようでさっきより面倒臭さが上がっている。
リュリーティアさんも、コイツ黙らせてもいいですわよ? みたいな感じで俺を見なくて大丈夫ですから。
とりあえず落ち着いてもらおう。
「オグマさん、お話するのは構いませんが条件があります」
「なんでしょう!? お金以外なら何でも構いませんよ!」
「お金はとりませんよ……。えっとですね、まず他の人に話を広めないことと、この教会の事について教えてくれるならお話しますよ」
「そんな事でいいんですか? なら全然大丈夫です!」
「分かりました、じゃあ座って話しましょうか」
長椅子に座り話をする。
俺が異世界人とかは話すと面倒臭そうだったけど神様を語るには必要なので省けなかった。
「なるほど……そんな事があるのですね」
「ええ、信じてもらえますか?」
「もちろんです。貴方の今の話を信じないということは神を信じないということ。神父である私にそんな事出来ません。しかし闘司さんも神様と交流があるぶん特殊な方だったのですね……。リュリーティアさんは何かあるのですか?」
「私はただの一般騎士ですので」
「そうですか……それは残念です。さて、それでは今度は私の番ですね? この教会の事についてでしたね、包み隠さずお話致しましょう。何から話しましょうかね……」
教会のことを条件として出したがそこまで聞きたいことが思いついていないので適当に質問してみる。
「じゃあこの教会は建って長いんですか?」
「そうですねこの町の今の王が即位してすぐに建てられましたのでざっと三十年程でしょう。私は十年前にここに来たので詳しい年数は把握しておりませんが」
「ちなみに、ここにはオグマさんお一人なんですか……?」
「いえ、独りというわけではありません。大切な家族が七人もおります」
「へぇ大家族ですね、どちらに居るんですか?」
「今は、ここには……」
悲しそうな顔をして俯いた。
あっ……これは聞かない方がよかったか……。
「今は隣の孤児院におりますので、ええ」
「帰ります」
「ああごめんなさいちょっとしたジョークです! ゴホン、えー隣の孤児院には我が教会に捨てられていた子供たちが七人おります、それが私の大切な家族です。しかし最近は寄付が少ないのもありますが、厄介な方が来て教会の周辺で問題を起こすので、それが原因で教会に訪れる方が減ってしまったのです。なので少しばかり孤児院の経営が厳しい事になっていまして……。いつでも! 寄付を受け付けていますよ!」
「そういう事情なら、まぁ少ないですがとりあえず銀貨八枚を……」
「おお八枚も! 貴方達に素晴らしき神のご加護があらんことを!」
にゅっと何処から取り出したのか募金箱みたいな箱を取り出してきたオグマさん。
準備万端なその姿勢に感心しつつ銀貨八枚を入れる。
気になった厄介な方というのを訪ねてみる。
「あぁその方たちは、自分はドランの部下だと仰ってまして、周辺の住民を恐喝したりとやりたい放題なんです。本当に困りましたよ……まだ子供たちに被害が及んでいないのが幸いですがなんとかしたいものです」
「あら、そんな事もしていたのですねあのクズトリオは。ふふふまたじっくりお話をしないといけませんわ」
ひ、ひぃ! 顔は笑っているのに目が笑っていないのが恐ろしい!
哀れチンピラトリオ改めクズトリオ、待っているのは絶望だぞ。
「あ、あのオグマさん。実はその厄介な方達については何の因果か俺達、というかそこの騎士様が解決してくれたので安心して大丈夫ですよ」
「それは本当ですか!? おおこの方達にお会いしたのも神の導きあってこそだったのですね。深く感謝いたします。そうだ! 是非孤児院にいらしてください、子供たちもきっと喜びますよ! ささ、こちらです」
そういってオグマさんは俺達を主祭壇の隣の通路から孤児院に案内をした。
通路は綺麗に掃除されていてホコリ一つ見当たらない。
孤児院に近づくと子供たちの笑い声などが聞こえてくる。
扉に手をかけて開けると一層笑い声が強くなるが子供たちが俺達を見ると、ピタリと静寂に包まれてしまった。
だか次の瞬間には雪崩のように子供たちが飛びかかってきた。
「にーちゃんだれー!?」「髪の毛きれー!」「ねぇねぇ遊ぼ遊ぼ!」「くらえー!」「おねえちゃんもきれー!」「なにしにきたの!?」「……あれ?」
「こら、彼等が困っていますよ。みんな静かにして、まずは自己紹介をしましょう」
「おれ、ソル!」
「あたしはアーナ!」
「ぼくはネプト!」
「ぼくはマルス!」
「わたしウェヌス!」
「おれはアポロ!」
「わ、わたしはミネル……」
覚えるのに少し苦労するかなと思ったけどそういえば図鑑があるので助かった。
頭で思い浮かべてみると顔と名前が浮かび上がってくる、本当に便利だこれ。
リュリーティアさんがミネルという少女をマジマジと見つめている。
「アナタ……何処かで……?」
「あ、あの、その……」
「あーリュリーティアさん、少し怖がってますのでそれくらいに」
「こ、怖がってる!? 私そんな怖いですの!?」
「いきなりそんなジロジロ見られたら子供はビックリしちゃいますよ」
「そ、それもそうですわね。失礼しましたミネルさん、ごめんなさいね」
許してくれたのかコクリと頷いて下がってしまった。さすがにいきなり打ち解けてはもらえないよな。
だが他の六人は違う、矢継ぎ早にやれ何処から来たのだ、やれ何しに来たのだと止まらない。
シャルルは早くも打ち解けて楽しく会話している、素晴らしい光景だ脳内保存しておこう。
「ふふふ流石は皆さん、子供たちがもう懐いてしまってますね。ミネルは少し人見知りがありまして……でもすぐに心を許してくれると思いますよ」
「そうだと嬉しいですね」
そう言って俺はわんぱくな男の子衆の相手を始めた。




