反省と紐解き
身体を揺すられている。
名前を呼ばれている。
頬を叩かれている。
水をかけられる。
ちょっとまて。
「ぶわっぷっ! ぶはっ!」
「起きましたわね」
「よがっだよぉドージィー! もうじんだがどぉ!」
「だから息はしているから大丈夫ですと言いましたわ」
シャルルが物凄い顔をしながら俺に抱きついてくる、そしてズビーッ!!
あっこら、鼻をかむんじゃない、拭くな拭くな!
状況がよく分かららないので周りを見てみると、どうやら俺は店の中に寝かされていたみたいだ。
シャルル、フラウさんとリズちゃん、そしてリュリーティアさんが俺の側に居る。
「そういえば……アイツらはどうなったんですか!?」
「私が外に縛り上げておきました、ですので安心しなさい。それよりも……」
「それよりも……?」
リュリーティアさんは俺の前に近づいてきた。
そしてパンと、俺の頬に平手打ちをした。
「事情は全て聞きました、アナタは素敵な事をしたのでしょう。ですが……」
パン! 今度は反対を叩かれる。
「やられては意味がありません」
もう一度。
「心配をさせてはいけません」
そしてシャルルを見て、俺の目を見た。
「約束をしたのでしょう? 負けないと、ぶっとばすと。なのにアナタは負けた、ぶっとばされた。酷いものですわね、シャルルさんはしっかりとフラウさんとリズちゃんを守っていたというのに」
「すいません……」
「すいません? 何故、私に謝っているのですか? 謝るのはこちらのシャルルさんとフラウさんとリズちゃんにです。むしろ私は闘司さんを助けたので謝罪より感謝をされたいですわ」
その通りだ、俺はシャルル達の方を向いて心の限りに謝る。
「ごめんシャルル……約束したのにこんな情けない事になって。そしてフラウさん、リズちゃんも心配させてしまってごめんなさい!」
「ううん……ズズっ、トージにもしもの事が無くてよかったよ、えへへ」
「そうですよ。私達の招いた事に闘司くん達を巻き込んでしまったんですもの。こっちが謝らなきゃいけないのよ」
「あの怖い人たちに立ち向かった闘司お兄ちゃんカッコよかったよ!」
「本当にありがとうございます。あと、リュリーティアさん、助けてくださってありがとうございました」
リュリーティアさんは微妙な表情をしながら礼はいいと感じに手を振っていた。
「感謝してほしいと言いましたが、申し訳ありません。その感謝は受け取れませんわ。だって私、アナタが気絶するまで影で見ているだけで何もしなかったですから……」
「え、そうだったんですか……? じゃあなんで」
「なんでって……といいますか私がなんでと聞きたいですわ! なんであんなチンピラトリオにやられてるんですの! アナタの実力ならあんなの楽勝でしょう!? なのにアナタはチンタラチンタラ戦って、しまいには顎に一発綺麗にノックダウン。アレですの?! 負けたのは昨夜の私との一件のせいですの!? そうなんですのね?!」
「お、落ち着いてください」
チンピラトリオ……。
リュリーティアさんは憤りともどかしさを爆発させている。
確かに昨夜のリュリーティアさんとの戦闘とさっきの戦いを比べるなら大人と赤子くらいの力量差だ。
パワー、スピード、魔法、殺意、どれも比べるのも失礼に値する。
でも殺意に関しては今後も無くしていただきたい、いやもう戦う機会はいらないけれど。
とにかく勝負になりもしないモノだったのだろう、だからリュリーティアさゆさこんなに怒っているんだ、コイツは巫山戯ているのかとも思われたのだろう。
「ええ落ち着いております、甘々スイートミルクを飲んでとても落ち着いております。はぁ……理由が知りたいのです。実力があるのに隠す、命の危険があっても力を出さないその理由を」
「分かりました……。助けてもらっておいて話せない、なんてのは筋じゃないですね。でもその代わりに、正直に全部話しますけど絶対に怒らないですか? 信じられますか?」
「ええ、その目を見れば本気だと分かりますわ。それに嘘だったらまたひっぱたくだけですので」
「分かりました、では」
俺が異世界の人だということ、神様に暇つぶしに転生させられたこと、その時に貰ったスキルのことを包み隠さず全部話した。
[敵意を確認、スキル発動]
直感で頭を後ろに引く。
刹那、顔に豪風が吹きつけてきた、遅れて冷や汗が額から流れてくる。
「あ、危ないじゃないですかぁ!! 今の平手打ちはさっきと違ってマジじゃないですか!? 怒らないって言いましたよねリュリーティアさん!!」
「黙りなさい! どこの馬鹿がそんな話を信じるんですか! そもそも異世界人ってソレは勇者じゃないですの! 神様の暇つぶしで生き返らせられるって作り話過ぎて笑えませんわよ! そしてぇ……常に相手より強くなるスキルぅ? ふぅ……骨の三、四十本は覚悟してくださいませ」
「普通は二、三本じゃないんですか!?」
「闘司さん、人間の骨の総数は約二百本。ちょっと闘司さんを五分の一ほど折るだけですわ」
まるでちょっとお買い物に行くかのようにバイオレンスなことを言わないでほしい。
「はぁ……もう一度確認していいですか?」
「折られないのなら喜んで」
「闘司さんはこの世界の人ではなく、別の世界の人であり、でも勇者ではない」
「はい、俺は別の世界の日本って所にいました。ただの一般人ですし勇者はもう別にいると神様が言っていましたので」
「その神様というのは一度死んでしまった闘司さんを暇つぶしの為にこの世界に生き返らせたと」
「そうですね。天国は何でも揃いすぎて退屈なので暇つぶしに、俺は二度目の人生を謳歌出来るしwin-winじゃ! と」
「そしてスキルを授かった、のですわね? そのスキルが常に相手より強くなれるモノだと」
「不便なく生活出来るようとの事でもらいました。あと他に三つスキルをもらったんですけど……聞きます?」
「混乱しそうなので後々教えてくださいませ……」
そう言ってリュリーティアさんは眉間を押さえてそのまま考え込んだ。
色々整理をしているのだろう、考えが纏まったのか眉を寄せたままの状態で顔を上げた。
「正直アナタが仰る話は納得はできます。別の世界から召喚される、勇者と呼ばれる方は確かにもうおります。ですのでアナタが勇者ではないのは分かります。スキルの件もウィガー団長が俺より強いと仰ったり、あのチンピラトリオに苦戦していたりとなるほどとは思います。ですが、それは神様が本当に居るという前提です。生憎、私は神様など信奉していませんので」
「あ、それは大丈夫かもです」
「はい?」
頭がおかしくなったのかと言いたげな視線は無視して神様にお願いしてみる。
あのー神様、ちょっとだけで良いので来てくれませんか?
待つこと数秒。
「チミねぇ……普通はそんなホイホイと神様は呼べないのじゃよ?」
「あ、どーも来てくれてありがとうございます」
「ひゃっ!? な、な、なん……」
「あら、あらあら」
「白ひげおじいちゃん?」
「あっ神様! おひさだよー!」
「ほっほっほシャルルや、また会ったのう」
パッと俺の隣に現れた神様にリュリーティアさんが驚いている、なんやかんや言いつつも呼んだら来てくれるあたり暇なんだな。
リュリーティアさんだけではなくフラウさんとリズちゃんも驚かせてしまったのは申し訳ない。
とりあえず来てくれたのでコレで納得してもらえるだろう。
「リュリーティアさん、こちら神様です」
「どうも神様じゃ、よろしくのリリィちゃん」
「はい? あ、へ? よろしくですわ……? いやお待ちください、どちら様ですか?」
「じゃから神様じゃって。リリィちゃんは頭固いのう、シャルルなんかすぐ信じてくれたぞ。のう?」
「うん! このおじーちゃんはホンモノの神様なんだよリュリーティア。なんてったってボクにジン様の加護をくれたんだ、凄いよね!」
「照れるのう、ふむ……そうじゃ。フラウちゃんや、ワシにもギガントミートを食べさせてもらえるかな? お代はここの闘司が払うのでの」
何を勝手に注文しているんですかこの神様は、いやお金は元は神様から頂いたものなので別に構いませんけどね。
フラウさんは適応力が高いのか普通にハイと返事をしてキッチンに入っていった、リズちゃんも後ろについていってお手伝いをしている。
ちゃっかりシャルルが一緒に頼んでいたのを俺は見逃さなかった、でもまぁ心配させちゃったしそのお詫びってことで大目に見ておこう。
さてさてリュリーティアさんを納得させられるのかなっと。




