複数人との戦闘
啖呵を切った俺は店の外へと連れ出された。
路地は変わらず薄暗く、ここを通る人もいないので助けを呼ぶのも難しい。
もちろん逃げるなんて死んでもしないがな。
「おいお前、カッコつけたはいいが今になって後悔してんじゃねぇのか?」
「はっ、後悔するのはお前らだよ」
「オイ! こいつを囲め、袋叩きにするぞ!」
そう言うと三角形のような形に連携を取ったヤツらは襲いかかってきた。
[攻撃を確認、スキル発動。能力値、上昇]
警告と上昇を確認、くっそやっぱり俺より強いのか。
[対象変更、能力値、現在値より減少]
は?
[対象変更、能力値、現在値より上昇]
続けて警告と変化が起きる。
い、一体何が起きたんだ!? くそっ考えてる暇はない、今はとりあえず避けなきゃ!
「ぐっ! ……っとと」
「へへ、強がってた割に動きはそうでもねぇな」
何とか視界に映る二人の攻撃は防げたけど、後ろの攻撃は防げなくてくらってしまった。
考えろ考えろ、恐らく今の立て続けのスキルは説明されていた事だ。攻撃や敵意を感知して発動するこのステータス変動は、対象は一つだけだ。三人の同時攻撃により三回分の発動になったんだ。
当たり前だけど三人とも同じ力量って訳じゃないから能力が上がったり下がったりだ。
でも考えればアイツらには力による上下関係があるって事も予想できるぞ。
まずあのよく喋るゲス野郎は間違いなくリーダーだろう。
俺を外に連れていく時に二人に命令していたしな、つまりヤツがこの中で一番強い。
おっと、考えすぎたか。もう一回三人揃って攻撃してくる。
「ふっ! っが!?」
「オイオイ攻撃してこいよお人形さんを殴ってるつもりはねぇんだぞコッチは!」
どうしても常にいる後ろの一人の攻撃が避けれない。
これじゃあいずれやられてしまうと思ったので、まずは後ろの一人を倒すことにした。
いきなり振り返りタックルをする。
不意をつけず取っ組み合いの形になったが少しこちらの方が筋力は上なので力任せに組み倒す。
片腕を素早く取り腕ひしぎ十字をお見舞いした、もちろん遠慮せず折ってやる。
「おーおーやるじゃねぇか、おいクズ! 折れたくらいで喚いてんじゃねぇ! さっさと立ちやがれ!」
「ちょっとは心配してやれよ、折った俺が言うのもあれだけど」
「へっ、回復魔法使ってもらえやすぐ治るんだ。心配するのも勿体ねぇよ」
こいつは本当に……。
とにかく後ろのやつは俺を警戒し始めたのか攻撃に鋭さが無くなってきた。
ノーダメージって訳じゃないけど何とか耐えられる。
次の狙いはもう一人の男だが、コイツはさっきから蹴りを多用してくる。
リュリーティアさんの事もあるし油断は出来ないが、次も蹴りを使ってくるだろう。そこを狙わせてもらう。
またも三人同時攻撃、おれはそれを一つも防御せず、俺の腹に向かって蹴りをしてきた男のスネを狙って肘を突き出した。
見事にカウンターが決まり男が悶絶している、あれはしばらく立てないだろう。
「……っ! へへ、どうだコノヤロー」
「ヒュー。エグイことするなぁ相手の力を利用するなんてよ」
「褒めるなよ、照れてぶん殴りたくなるぞ」
「でもよぉ、防御なんか捨てたらダメージはもろに入るぜ。現に少しふらついてるじゃねぇかお前」
「勿体無いって言ってたのに俺を心配していいのか?」
「もちろん。いたぶる相手が弱ってちゃあ俺が楽しめないだろ? 心配もするさ。」
悪趣味なことだ。
「おっと」
「おいノロマ、気づかれてんじゃねえかよハッハッハ!」
後ろの男が忍び足で攻撃してきたが、スキルの警告で分かっていたので避けて、今度はもう片方の腕を使えなくした。
これで一対一だ。全力でやれば力負けする事はない。
他の二人がやられても余裕の態度を崩さないのは自分が一番強いってことを自覚しているからだろう。
だが残念だったな。気づかないだろうが今は俺の方が少し強いんだ。
「さーてそろそろ本気出してやろうかな」
「さっきまでのが本気じゃなかったのか?」
「殴られてバカになったか? あんな三人で殴ってて一々本気出してらんねぇだろ、疲れるしよ。だがお前は雑魚ながら他の二人を倒したんだ、俺様が直々に本気を出してやるんだよ」
「有難いことだな」
「お前のその余裕ぶった顔を歪ませてピーピー泣かせてやるよ。オラァ!」
小細工なしで殴りかかってきたので正面から受け止めてやる。
そのまま押し返してやると、ビックリしながら手を払い後ろに下がった。
「テメェ……何しやがった」
「何のことかな?」
「とぼけてんじゃねぇ! 何で俺様より……! チッ!」
「おっと」
少し苛立った様子で殴る蹴るを繰り返してくる。
俺も同じように攻撃してくる所に攻撃をして相殺をする。
「ふざっ、けんじゃ、ねぇ、ぞ! なんで、俺の! 攻撃に! ついてこれる!?」
「お前がっ、弱い、からだ! っよ!!」
「ゴェッ……クソ野郎! ゴホッゴホッ!」
一生懸命に攻撃を受け止めつつなけなしの隙を突き、鳩尾に拳を打ち込む。
鳩尾に拳をもらい酸素を奪われて相手の呼吸が荒くなってきた、が同時に俺もさっきから動き続けてゼーゼーと肩で息をしている。
「何でお前みたいな雑魚に追い詰められなきゃなんねぇんだよ!!」
「ははっ……どうしたよ、俺をピーピー泣かせるんだろ……?」
「うるせぇ! ……っ? ……くっくっく。そうだな、そうだったぜお前を泣かせてやるんだった」
なんだ……? 急に表情が変わったぞ。
訝しんだが、特に変わった様子もなくさっきと同じようにまた真正面から向かってくる。
「いくぞゴラァ! 死にやがれ!」
「バカの一つ覚えか? 来い!」
そのまま突っ込んできたのをカウンターを食らわせてやろうと構える。
[攻撃を確認、能力値、現在値より減少]
「えっ……? がっ!?」
警告と共に背中に突然衝撃がはしった。
そのまま前に少し吹っ飛んだところを利用されて顎にアッパーを打たれた。
「へへへっ油断したな。おいクズ! 役に立ったじゃねぇか、後で酒でも奢ってやるぜぇ!」
「な、なにが……」
脳しんとうでも起こしたのか意識が朦朧としている。
後ろを見ると、両腕を折った男がシャルルと同じような緑色のオーラを纏っていた。
ちくしょう……魔法の事を忘れてた……。
何やってんだ俺は。勝てると思って言われた通り油断をしていた。
突如顔を蹴り飛ばされる。
「ったくよぉ手間取らせやがってクソが。お前をぶっ殺して中のガキも始末してやる。お前が突っかかってこなきゃこんな事にはならなかったんだよ!」
そう言ってもう一発蹴りをもらった。
段々と意識を保つのが難しくなって視界が途切れ途切れになる。
くそ、シャルルにぶっ飛ばしてくるって言ったのにこんなザマかよ……。
頼む、誰でもいいからシャルル達を守ってくれ。
神様見てるならお願いだ、シャルル達だけは助けてやってくれ。
また脚を振りかぶってるのが見えた。
そして俺は意識を奪われた。




