町の探索・2
お昼を求めて噴水広場をグルグルと回る。
「お昼何が食べたいんだ?」
「おっきいお肉!」
ひゅ~ワイルドぉ、ならお肉料理を探してみるとするか。
辺りを見回しそれっぽい屋台を探す、すると袖をクイクイっと引っ張られた。
何かと思い振り返ると大体十歳前後の年齢の少女が看板を持って立っていた。
「あ、あのお肉を、おもとめですか……良ければうちに、あの」
オドオドしながら呼び込みに来た。
看板にはお肉料理のギガントミートと書かれている……なんか凄い名前だ。
シャルルに目をやる。
「キミのお店大きいお肉ある?」
「えっ……あっはい! あり、ます」
「やった! じゃあトージいこう!」
「シャルルがいいならいいよ、じゃあお店に連れてってもらってもいいかな?」
「はいっ! えっと、こちらです」
そう言って少女は俺達を店まで先導していった。
西門の道の方に歩き、噴水広場を出て、路地に入っていった。
陽の光はあまり入らなくて薄暗い路地の隅にそのお店はあった。
お肉料理のギガントミートと書かれた看板は少女が持つものと同じだ。
「これは、また……」
「あ、あの、美味しいですので、ごめんなさい……」
「美味しいならいいんだよトージ、ほらほら入ろっ」
シャルルは特に気にした様子もなく俺を引っ張って店の中に入っていった。遅れて少女もついてくる。
「はーいいらっしゃーい。あらリズ、お客さんを呼んできてくれたのね。あっお好きな席に座って大丈夫ですよ。貴方達の貸切ですものうふふ」
「ねぇねぇ美味しいおっきいお肉をお願いしまーす!」
「まあ、じゃあ当店自慢のギガントミートをお披露目しちゃうわね」
女性はそういうとパタパタと小走りでキッチンに向かっていきその後にリズちゃんがついていった。
俺とシャルルは席に座り料理を待ちながら店内を見回してみた。
いわゆる普通のお食事処だし変なところもない、こまめに掃除されているからなのか床なども綺麗だ。
ただなんと言うか活気が足りない、というかお客が足りない。
耳をすませるとキッチンからの音は聞こえるが広場からの人の声などは一切聴こえない。
正直立地が悪すぎるのだ、路地に入らないと店も見えないし、陽の光が当たっていないちょっと不気味な店に入るには勇気がいるだろう。
リズちゃんがお水をお盆に乗せて持ってきてくれた。
「お水、です」
「ありがとう。ここって昔からやってるの?」
「えと、ワタシが生まれる前からやっていた、みたいです」
失礼ながら驚いた。少なくとも十年くらいはここで営業していたのだ。
きっと俺なんかには想像出来ない経営術とかがあるのだろう、失礼な事は考えないでギガントミートとやらの姿を想像していよう。
ギガントという語感からはパッとマンガ肉が浮かぶ。
あれって中まで火を通すには一体どうすればいいんだろう、弱火じっくりとかで火を通すのかな。
それともレアでも大丈夫な肉を使うのか。
「は~いギガントミートが通りますよ~」
ドンっ。大皿に乗せられた、肉。
俺の顔ほどあるんじゃないかと思うくらいの塊のお肉にシャルルはもう大興奮だ。
「……スゴい、すっっごいよこれ!! ボクこぉんなお肉初めて見たよ! 村でもピギーやコウのお肉は食べたことあるけどこんなに大きくなかったよ!!」
「でしょお。これが当店のウリでもあるギガントミートよ。かぶりついてもイイし、切り分ける用のナイフとフォークもここに置いておくわね」
「ありがとうございます」
ピギーとコウって何の肉なんだシャルルよ。
解けぬ疑問を胸にしまい、まずは肉にかぶりつく。
シャルルももちろんかぶりつく。
「むむ……」
「あが……」
かぶりついた肉を噛み切る。口の中に広がる肉汁としっかりと味付けされた肉は噛むほどに美味い。
かぶりつくこと数口目で俺とシャルルはきっと同じ事を思っているはずだ。
大きすぎてかぶりつくのか中々に難しい。
仕方ないので切り分けて食べ進める事にする。
味の変化にと置いてくれた塩、オニオンソース、ガーリックソースの三種類、とてもたまらない。
そしてサッパリとしたスープが付けられていて飽きがこないようにも配慮されている。
全部食べ切れるか思ったがそんなの全然関係なく二人とも完食できた。
「はははシャルルお前お腹パンパンだぞ!」
「むっふ~お腹いっぱいだよ。ここのお肉とっても美味しいんだもん。また来ようよ、ね?」
「いい提案だぞシャルル、また来よう」
「あらまぁ、満足してもらえたみたいで作った甲斐があるわね。」
「その、ありがとう、ございます!」
キッチンからリズちゃんとお母さんが来て話しかけてきてくれた。
リズちゃんはお母さんの料理が褒められて嬉しかったのかペコリと頭を下げてきた、お母さん想いの良い子なんだな。
「少しお話してもいいかしら? 久しぶりのお客さんですもの」
「ええ構いませんよ」
「まあ良かったわ。それじゃあ貴方達は旅人さんかしら? 長くこの町にいるけど見かけた事ないから」
「つい昨日来たばかりなんですよ。今日は噴水広場でこっちのシャルルと買い物していたんです。あっそういえば、俺は八代闘司って言います。それでえっと、昼食を決めかねていたらリズちゃんにこのお店を紹介されたんです」
「えっとねおかーさん、おっきいお肉食べたいってシャルルお兄ちゃんがいってたからね、ワタシが連れてきたの」
「あらあら商売上手ねリズ、私はフラウという名前よ。こんなお店に食べに来てくれてありがとうね闘司さん、シャルルくん」
「こんなお店だなんて……」
「うんうんケンソンはダメだよフラウ。こーんな大きな美味しいお肉毎日食べてもいいくらいだよ」
「嬉しいわぁそう言ってもらえるなんて。……でもごめんなさいこのお店、もうすぐ無くっちゃいそうなの……」
フラウさんはふわりとしてる優しい笑みから困ったような哀しい笑みになってしまった。
リズちゃんはお母さんの袖を引っ張り母の哀しみを追い払おうと大きな声で言った。
「このお店は絶対にリズが守ってみせる! だってだっておかしいもん、おかーさんは悪いことしてないのに何でお店取っちゃうの! ワタシがあの人たちにお願いしてみるから大丈夫だよ!」
「それはダメ、お願いリズ……このお店が無くなっちゃうのは悲しいけれど、リズが居てくれればお母さんはへっちゃらなの。あの人たちは怖い人達だから近づいちゃダメよ、ね?」
「でもぉ……」
たしなめられたリズちゃんは今にも泣いてしまいそうであった。
「ごめんなさい変な話聞かせちゃって。久しぶりのお客さんで舞い上がっちゃったみたい、もしまた来てくれるならお店が無くなる前に是非いらしてください」
「あの、困ってる事があるなら俺達に言ってください、出来る限りご協力します。こんな素敵なお店が無くなるなんて嫌だし、シャルルが大きなお肉にありつけなくなっちゃいますから」
「お肉のためならエンヤコラだよー!」
「うふっ、ふふふ。えぇありがとう、でもお気持ちだけ受け取っておくわ。私達の問題でもあるしね」
「そうですか……」
そんな困った顔をされては何も言えない。
あんまり他所様の事に首を突っ込んじゃダメか。
「あっ、でもお気持ちの他に受け取っておくものがあるわ」
「何です?」
「銅貨五枚、二人分合わせてね」
なるほどそりゃそうだ。
料理の代金を払い、何かを言いたげなシャルルを連れて店を出ようとした。
が、扉はいきなり勢いよく開け放たれた。
三人のガラの悪い男達が嫌な笑顔を浮かべて入ってくる。
真ん中に立つ男はこちらをじろりと見つめて、フラウさんにこう言い放った。
「ケッ、まだこんなクソみてぇな店に来る物好きな客がいるんだなぁ! なんだぁ? 金で呼んだか? それともカラダか? ひゃはは!」
こいつ……短い言葉でよくもまぁこんなにクズさを出せるなこの野郎。
「でもこの店に出せる金なんてありゃしねーからやっぱり身体か! おいお前そうなんだろ?」
「お願いやめて! この人達はただのお客さんなのよ! 闘司くん、シャルルくんごめんなさい、今日はもう帰って……」
そう言って俺達を帰そうとするフラウさんの腕を男は引っ張った。
「おいおい何だよォつれねぇなあ。俺らとも仲良くしてくれよフラウさ、ん、よ!」
「いや! 離して!」
「おかーさんから手を離して! おねがい!」
リズちゃんが男に飛びかかり懇願した。
「チッ! 邪魔だクソガキ!」
「キャッ!」
「リズ!!」
男は手を振り払ってリズちゃんを引き剥がした。
払った時に当たったのか顔が少し赤くなっている。
頭からブチッと何かが切れる音がしたが気にしない。
「おいゲス野郎、手を離せ」
「あん? なんて言った今」
「性格同様に耳も腐ってて聴こえなかったのか? 手を離せって言ったんだよ、ゲス野郎。ほら、今度は聴こえたか?」
「……テメェ喧嘩売ってんのか」
「ほー売られてるのが分かったのか! それはスゴい!」
「お前オレらがドランさんの部下だと知ってて喧嘩売ってるのか?」
「上司の名前でビビらせようとするヤツは大抵下っ端だと言うのは知ってるぞ」
「本当に威勢がいいな、オマエら、外に連れてけ。コイツをぶっ殺すぞ」
他の男二人が俺の腕を掴み外に連れ出そうとする。
「トージ、ぼくも行くよ!」
「大丈夫、シャルルはフラウさんとリズちゃんを守っててくれ。なーに負けやしないさ」
「……うん、ぶっとばしちゃえ!」
シャルルは拳を突き出して言った。
二人はシャルルの魔法で安全を確保出来たようなもんだ。
なら俺はこのゲス野郎共をぶっとばすだけだ。




