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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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古き砂の国・2

 歩みを遅めて物思いに耽ける、目の前で見事な脚線美とホットパンツが揺れるこの光景は砂漠の中のオアシスのようだ。

 丈としては従来より少し長めなので際どさが減っているはずなのだけれど、着る人の素材のレベルが高すぎて逆に扇情的になっている。

 ヒップラインが出そうで出ないこの感じ、俺は好きだ。



「スケベ……隣を歩きなさい、隣を」



 露骨に見ていたら怒られたので素直に隣へと並ぶ、だがしかし!

 ホットパンツとは反対に黒のキャミソールの丈は短くなっていて、もうなんか凄いヤバみ溢れるへそチラをしているのだ!

 更にはその服の構造によりデコルテ、つまりは首から鎖骨といった胸元付近までの露出が多い。

 白い肌はキメ細やかで思わず見蕩れてしまうが、これが仮に日に焼けたとしてもまた趣が深いものになる。

 なのでつまり結論をまとめると抗えない、もう視線が上がったり下がったりしちゃう。

 とても暴力的な組み合わせだなぁ、グンボさんとお酒を飲みかわしながらこの服について熱く語り合いたい。


「少しは加減を知りなさい」

「あ、待ってください目だけはアバー!!」


 手刀が目を掠る、これによって視力だけが一時的に奪われることになった。

 見えない……オアシスが蜃気楼となってボヤけていくよぉ……!


「まったくもう……ミネルさんが呆れてゴミを見るような目をしていますわよ」

「そ、そんなことは、ないことも無いかもしれません」

「ぐぅ……紛らわしい言い方だけど声が冷たいので何となく思いが伝わってしまった。自重します」

「でもリュリーティアのその格好、なんか新鮮でいいね。綺麗だよ!」

「ありがとうございますシャルルさん。闘司さんの下卑た視線さえ除けば快適でいいですわねこの服、しかも動きやすいですわ」


 ビュッと風を切る音と共に高く振り上げられた脚、あーいけませんリュリーティアさんその服でその蹴りはいけません!!

 自重すると言ったばかりなのに興奮が治まらない、このままでは砂漠にぶっ倒れるのも時間の問題だ。

 一度落ち着くために魔法で氷を作り出して布に包む、それを首に掛けて涼を感じることにした。


「あー、冷たくて気持ちいい」

「トージずるーい、ボクにもちょうだい」

「あの、わたしも欲しいです」


 同じように布に包んだ氷を二つ作って渡す、気持ちよさそうに声を上げて肩に掛ける姿は面白い。

 リュリーティアさんだけは何故か睨みつけるようにこちらを見詰めていた。


「最初からそれをこちらに寄越していれば……こんな服を着なくて済みましたわねぇ……」

「ヒィッ……顔が怖い……。今作りますのでどうかご勘弁を……」


 視線で殺されそうなので素早く同じものを手渡す。

 しかし受け渡しの際にさっきの手刀のダメージが残っていたのか、リュリーティアさんとの距離感が掴めずに手と手がぶつかってしまった。

 その拍子に布に包まれていた氷が宙を舞う。



「きゃっ……ひゃん……んんっ!」



 氷はまるで生き物のようにリュリーティアさんの鎖骨からお腹、太ももへと滑るように落ちていって砂に飲まれた。

 露出した服が災いしたのか素肌に直接氷が触れた時に漏れた声、それはなんとも甘美で……魅惑的な響きを持った……。


「リュリーティアさん、今のは事故です」

「ええ、分かっております」

「そうですよね、だからその手に持っている剣は俺の幻覚ですよね」

「幻覚ですわ」


[攻撃を確認、スキル発動、能力値上昇]


 能力の向上により知覚できるリュリーティアさんの攻撃、剣の腹で殴ろうとして顔面に迫りくるのを俺はただ待つことにした。


「さっきの声、とてもエロか……ウゲェっ!?」


 砂漠のベッドは実に熱く息苦しいものであった。






 砂漠を派手に転がって充分に懲りたので落ち着くことにした、しかし砂漠を歩き出してから時間が経つけど未だに目的地へ辿り着かないな。

 休憩を挟もうにもこんな何も無い場所で身体が休まるかどうか不安だ、仕方なく足を動かす。


「もう少しの辛抱ですわ、後少しで着くはずです」

「変わり映えしない景色なのによく分かりますね、何か目印でもあるんですか?」

「勘ですわ」


 一気に心配になる言葉を頂いた、でも地元民の勘だから見当違いの方向に行っているなんて事はないのだろう。

 それに今は見えないけど、ついさっきまで前を歩いている人が複数居たので大丈夫のはずだ。


「あれ、何か見えてきたね」

「ホントかシャルル、何が見えるんだ?」

「うんとね、緑っぽいの」


 緑っぽいのとはなんだ、疑問を浮かべながら目を凝らして遠くを見てみるとたしかに緑っぽいのがあった。

 なんだあれ、色合いが植物のような緑をしているぞ。


「もしかしてアレがグノームス王国ですか?」

「いえ、グノームス王国は見える場所にあるものではないのです。ふむ……なるほど、そういう事でしたか」


 納得したように呟いているけれどこっちは何一つ分かってはいない、更に近づいてみたら気づいたけれどその緑は植物の葉の色で間違いなかった。


「へー、こんな砂漠の真ん中に生えるなんてよっぽど強い植物なんですね」

「そうですわね、かなり大きくなっていてビックリしましたわ」

「え、どういう植物か知ってるんですか?」

「はい、目的の場所ですから」


 目的の場所? つまりは……あれって国樹か!?

 でも……どこかおかしくないだろうか、葉っぱの全体の位置がほぼ地面の砂と同じ高さにあるのだ。

 よっぽど枝がしなだれているとかではない限りあんな地面スレスレになるとは思えない。

 距離による錯覚かなとも思ったが、シャルルも俺と同じ風に見えていたので勘違いではなかった。


「不思議ですか? いまに分かりますわよ」


 焦らされているなと思いながらもその言葉の意味をすぐに理解することになる、近づくにつれてその一帯の特殊性が明らかになってきたからだ。



「大穴から国樹が伸びてる……?」



 広大な砂漠に信じられない大きさの穴が空いていた、それはシュルト城下町を丸ごと入れられて尚且つ余りある規模の大穴。

 そこから巨大にして神聖さを感じさせる国樹が、国の支柱にならんとするように天を目指して穴から伸びている。



(ワタクシ)が居た頃はここまで伸びていませんでしたわね」

「そう、なんですか……。もしかしてこの穴の下が」

「はい、グノームス王国となります」



 確かめたいという欲求が溢れてくる、自然と先へ先へと走り出して穴の端まで辿り着いていた。

 下を覗き込むようにして顔を出してみると、大小様々な建物と人が織り成す一つの国がちゃんとそこにはあった。


「本当にこんな所に国が……凄いな」

「と、闘司さんそんなに身を乗り出したら危ないですよ?」

「あ、あぁそうだよな……ありがとうミネルちゃん」


 危ない危ない、こんな高いところから落ちたらひとたまりもないからな。


「ふふ、ご安心なさいなお二人とも。仮に落ちたとしても砂壁の中からカナデンシスが出てきて助けてくれますわ」

「ちなみにどんな風に助けられますか?」

「先端の二本の触手で掴まれるかあの大量のヒレで鷲掴みですわね」

「本当にありがとうミネルちゃん……!」

「いえ、わたしも気をつけます……!」











 想像するだけで身の毛がよだつ思いを味わわないために、俺とミネルちゃんは決して落ちないようにと固く誓い合うことにした。

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