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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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監視・2

 とりあえず見張れるポイントはありました、確かにありましたわ。

 宿屋内も全部ではないですが何とか伺えますし、外出する所も確認することは出来ますわ。

 でも真正面はダメでしょうに。

 正確には彼等の部屋が二階の部屋のどこかだったらほぼ真正面になってしまいますの。

 監視は出来ますけど相互監視みたいな状況になったりしません?

 朝日を浴びに窓に向かったらご対面みたいな事になりませんのこれ?

 しかしここ以外はありませんし、何より割と部屋は綺麗ですし過ごしやすいのですわ……。

 そして、なんといってもここの借りる費用があまりかかりませんの、これはとても重要ですわ。

 ケチだとお思いでしょう、ええ分かっておりますわ。

 でも1リハートを笑うものは、(ワタクシ)が抹殺しますわ。

 もちろんお金をかけるべきところには惜しんではいけませんの、そこは勘違いしてはいけません。

 いけません、少し考えがズレてきましたわ。

 とにかくここの他には無いということです。


「ん? ひゃわ!」


 何でですの、何で目の前の部屋に彼等がいるんですの!? 神のイタズラ!? 咄嗟に隠れてしまいましたが、もしや気づかれてしまったのでは?

 そーっと窓から顔を出して様子を見るとどうやら気づいてはいなかった。

 どうやら町を眺めているのですわね。

 あら? 部屋に戻っていきましたわ、助かりました……。

 ぐー。


「お腹……空きましたわ」


 ウッカリしていました。夕食の用意をしていなかったですわね。

 どうしようかと考えていると、宿屋から漂う美味しそうな香りが食欲を更に刺激してくる。

 たしかガラッドさんが食事だけでも構わないようなことを仰っていましわね……。

 はっ……ダメよリリィ! 何で監視対象と接触する危険があるのにわざわざ行きますの?! ダメですわ、ダメですわ。

 ダメ、ですわ。ダメ、でもないですわ。ええ、大丈夫ですわ。

 そうです、別に見つかっても問題ないですわ! (ワタクシ)が向かいの部屋を借りて監視しているなんて事を彼等は知らないですもの!

 ええむしろ彼等と話をして目的を探る方が確実性がありますものねきっと。

 決して漂う美味しそうな香りに思考停止した訳ではありません、ありませんの!!

 そうと決まれば善は急げですわ! 迅速に行動すべし!








 宿屋の前に来ましたけれど少し冷静になりましたわ、ダメですわよ。

 やはり対象に接触するのは愚かですわ、匂いに釣られてやってくるなんてマヌケじゃないですの!


「あれ? 副団長殿ではないですか、来てくれたのですね!」


 この声は……ガラッドさんですわね。

 やってしまいましたわ、ガラッドさんの宿屋ですしそりゃあ帰ってきますわね。

 どう致しましょう、気絶させましょうか?


「あら、お仕事はもう終わりましたのね」

「ええ本日もあの二人以外は特に何も無かったですよ。それよりもですね、もしかして宿泊する気になったのですか? それともお食事を? 今夜はサシャが当番なのですが彼女の料理は絶品ですよ。もちろん私のも負けてませんがね、はははは!」


 絶品……。


「あ、あらそうなのですね。絶品なのですね。ちなみに、今晩の食事のメニューをお聞きしても宜しいですか? その……参考までに」


 決して絶品という言葉に揺らいだわけではない。

 ただすぐそばから漏れる美味しそうな匂いの元を調べたいだけなのだ。


「ええ構いませんよ。たしか今日は、ポトフとコロッケでしたかね。野菜の甘みが溶けだしたスープとサックサクのコロッケはもうたまりま」

「行きましょう。ガラッドさんがそこまで(ワタクシ)をお誘いくださいますもの。ええ人の好意は喜んで受けるべきだと祖母も言っておりましたわ。そうと決まればこんな所で立っている場合ではございません。迅速に行動すべし! ですわよ」

「えっ? は、はいそうですね。どうぞどうぞガラシャの宿屋へ。おーいサシャ! お食事のお客様がお一人だぞ!」



 ……何も言い訳はしませんわ。

 ただしひとつ言わせてくださいまし。









 (ワタクシ)コロッケが大好きなんですもん!!

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