素敵な宿屋と美味しいゴハン
ガラッドさんの案内でとっておきの宿に着いた。
外装は白を基調として屋根と窓枠は共に赤レンガのような色合いだ。
こまめに補修とかしているのであろう、とても清潔感溢れる素敵な宿屋だ。
そこに味わいある長方形の木の看板が扉のすぐ上に取り付けてある。
何故かピンク色のペンキで店名が書かれている
[ガラシャの宿屋]
ガラッドと妻であるサシャが経営する宿屋。
朝昼は夫ガラッドは門番の仕事があるため妻が主に業務をこなす。夫婦共に料理を作るのだが宿泊客からはとても好評を得ている。
店名は2人の名前からもじって付けられた。
ピンク色の文字は宿泊客からは不評である。
ちなみに夫婦生活はラブラブだ。
スキルの力で良く知れたのは良かった。
若干いらない説明も入っているけど神様がくれたものだし不具合もあるのだろう。
「どうだ? 外観から見てもいい宿屋だと分かるだろう。よーしここに泊まるといい。それしかないぞ、うんうん」
「ハハッソウデスネ。ステキナヤドダナー」
「だろうだろう! ようしそうと決まれば早速中に入ろうじゃないか! おーいサシャ、お客さんが2名きたぞー!」
ガラッドさんは俺の肩をガシリと掴み逃がさないぞとばかりにそのまま店内に連れ込んだ。
シャルルも遅れて付いてくる。
「いらっしゃー……ってアンタ! 何でここに? 仕事はどうしたのよ!」
「仕事? してるじゃないか、ほらこうしてお客様を2名ご招待してきたぞ」
「バカ違うよ、門番の仕事だってのよ! さっさと戻って門番してきなさい!」
「いやでもサシャ」
「いいから早く!」
「はい……」
「うむ、いってらっしゃいアナタ、気をつけるのよ」
ガラッドさんは少し肩を落として門の方向に戻っていった、なるほど夫婦のパワーバランスがすぐ分かった。
さっきの説明文にガラッドさんは奥さんに尻に敷かれてるってのを追加しておいても良いのでは。
「さて、ウチの人がゴメンなさいね。あの人たまにこういう事をするのよ」
「いえ大丈夫です。たしかに宿屋を探していたのでガラッドさんに紹介されて丁度良かったです」
「あらそう? うふふありがとうね。じゃあ改めていらっしゃいませ、ガラシャの宿屋にようこそ。もちろん泊まっていくのよね、何泊の予定かしら?」
うーん、そういえばとりあえずシュルト城下町を目指していただけだし、次の目的地も決めてないからどうしようかな。
「とりあえず一週間お願いしてもいいですか? その後は決まったらまたお願いしますので」
「ええいいわよ。じゃあ一週間で二人、銅貨四十二枚ね。」
「リハート貨幣でも大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫よ。この町はリハート、プル、ライン貨幣が同価値だから覚えておくといいわ。まぁリハートはどこもほぼ同じ価値だから問題ないわね」
貨幣の種類が増えた、これは覚えるの面倒そうだけど図鑑があるから平気かな。
神様から貰ったリハート銅貨を渡す。
「はい、確かに頂いたわ。それじゃ部屋はその階段を上がった二階の二零六号室よ。鍵は、これね。食事は朝夜はこっちで出すわ。昼は銅貨一枚で出すけど外で食べても全然構わないわよ。二十三時以降はお店を閉めちゃうからもし外出したかったら、夫を叩き起して構わないわ。こんなもんかしらね、分からないことがあったら聞いてちょうだい。とりあえず夕食までまだ三時間ほどあるから、それまでゆっくりしててちょうだい。」
「えー、まだ三時間も待つのー? ぼくお腹すいちゃったよぉ……」
それまで空腹からか、やけに静かだったシャルルが起動した。
「あらうふふっ、アナタ喋れたのね? お名前は?」
「ボクはシャルル! ねーねー何か食べられるものないかなぁ?」
「こらこらサシャさんを困らせちゃダメだろシャルル、ああそういえば俺の名前は八代闘司です」
「大丈夫よ闘司くん。ねぇシャルルくん、美味しいもの食べたい? お夕飯前だからあんまり多く作れないけど」
「おいしーもの!? うんもちろん食べたいよ!」
「よーしじゃあオバサンちょっと張り切っちゃおうかな」
「いいんですか? ありがとうございます」
ガラッドさん同様、サシャさんもいい人なんだなぁ。
するとサシャさんは俺の隣に立ちシャルルに聞こえないように耳元でこそりと言った。
「銅貨一枚」
ちゃっかりしている、流石商売人だよまったく。
まぁシャルルが喜んでるのでもちろん払わせていただきますけどね!
「毎度ありー」
「絶対美味しいのを頼みますね」
「それは任せなさいな、闘司くんの分ももちろん作ってあげるわ」
楽しみにするとしよう。
サシャさんが厨房に入ってから三十分ほどすると、甘い香りが漂ってきた。
「くんくん、うわー甘くていい香りだぁ」
「ああ、お菓子とか何かを作っているのかな?」
香りで期待が少し高まってきてちょっとソワソワしていると、サシャさんが二つのお皿を持ってきてくれた。
これは、なんていったか……そう、タルトタタンだ。
「うわぁおいしそー、ね、ね、これってなーに? リンゴ?」
「そうよ、これはリンゴにカラメルを絡めて焼くタルトタタンっていうモノなの、甘くて美味しいわよぉ」
良かった、こっちでもタルトタタンなのか。
一見すると焦げてるように見えるが、カラメルはしっかりと光沢をはなちそこにチョンと乗せられたアイスのようなものが熱で少しずつ溶けていく。
ホットケーキにバターを乗せたときのようなあの感じだ。
香りだけでなく見た目も食欲をそそる本当に美味しそうな一品だ。
語彙力少ないながらもいい解説が出来た気がする。
あぁシャルルはもう食べている、俺も無駄な解説なんかしないで早く食べよう。
「いただきます。はむっ……うむ……むっ! っん、美味い!」
「ふぉんと、むぐむぐ、おひぃしぃ、むぐむぐ、ねぇ!」
はぁーん、食べながら喋るのはお行儀悪いですよと言おうとしたけど、ハムスターみたいで可愛いぃ!
ちょっと口の端にアイスがくっついているのが尚のことグッド!!
シャルルはそのままハムスターみたいにタルトタタンを堪能し、俺はタルトタタンとシャルルを堪能出来たので最高でした。
「「ごちそうさまでした!」」
「はーいお粗末様ねー。お皿はそこに置いといてくれれば洗っておくから、お部屋見てらっしゃいな」
「「はーい」」
息ピッタリで返事をする俺達はお言葉に甘えて荷物を持って部屋を見に行くことにした。
たしか階段上がって二零六号室だったな。
シャルルは走って先に部屋に向かっていった。
「ああ、シャルル! 鍵が無いと入れないぞ、ほら!」
「おっとっと、ありがとー。」
鍵を投げて渡した、受け取ったシャルルはそのまま二零六号室に向かって入っていった。
俺も遅れて向かうと、ボスんという音が聞こえてくる。
シャルルがベッドにダイブしている音だった。
「とーう! わははーフカフカだー!」
「こらこらシャルル……俺にもやらせろー! とぉー!」
「うわーい!」
俺もそのままベッドにダイブをかました。
「あーホントフカフカだ……やばい、眠い、このままベッドに飲み込まれる、助けてーシャルルー」
「もうしょうがないなートージは、そーれ!」
シャルルに腕を引っ張ってもらい無事救助された。
立ち上がってそのまま窓を開けて外の景色を見てみることにした。
窓を開けると沈みゆく陽と城下町が見えた。
中々に見晴らしが良く、色々見渡す事ができる。
「おぉー、夕陽かぁ。絶景かな、絶景かな」
「ぜっけい?」
「綺麗な景色って事だよ」
「なるほどぉ。絶景かな、絶景かな!」
あそこに門が見えるってことは、あっち側には、おっあったあった。あれが騎士団の宿舎か。
んで、その近くにあるあの見るからに城って感じが王城なんだろうな。
色々見る場所がありそうだし、明日はシャルルと城下町探検をするとしようかな。
「シャルル、明日はこの町を探検するとしよう」
「探検? いいねやろうやろう!」
ついでに買い物も済ませておこうかな。
そう考えていると下の階からサシャさんからそろそろ夕食なので降りてきてねとの声がかかった。
シャルルはゴハン! と言いながら元気よく下に降りていく。
タルトタタンがあんなに美味しかったし、夕食に関しても期待は出来そうだ。
素敵な宿屋の美味しいゴハンに思いを馳せて俺も下の階に降りていった。




