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苦戦必至の異世界巡り  作者: ゆずポン酢
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シュルト城下町

 結論から申しますとモンスターには一切出会うことはなく、平和にシュルト城下街に着きました。

 へっ、どうだ運命の神様さんよぉ、残念だったな。

 シャルルは魔法を使う機会が無くて少し退屈そうではあったが、町の門を見たらそんなことは飛んでいったようだ。


「うっわー、やっぱり大きいなぁ。マウントグリフォンくらい大きいんじゃないあの門」

「例えがおかしい気がするけど本当に大きいな」


 門だけでこの大きさということは、全体はとてつもないんだなという事が伺える。

 田舎者のように門を見上げていたら門番の人に声をかけられた。


「お前達、旅のものか? シュルト城下町は初めてか。」

「えっいやーはい」

「そうかそうか、ん? お前のその髪と目……そうか東の大陸から旅してきたのか、さぞ長旅であっただろう。そちらのエルフは……もしやアヒロデオト山脈の村のものか!?」

「えっ、う、うんあの村から来たんだよ」

「そうか! 来てもらって早々悪いのだが、ちょっと付いてきてくれないか」


 な、なんだなんだ門番の人が急に慌てだして俺たちを連れていこうとするぞ。

 一体何だっていうんだ、少し問いただしてみるか。


「その、あの村から来たっていうことが何か問題でも?」

「すまない、失礼だとは思うがいち門番でもある私には詳しく事情は分からない、しかし今あの村から来たエルフには丁重に接し、騎士団長の元に早急に連れてきてくれとの御達しが出ているのだ」

「えっ!? 騎士団長?」


 それってかなり偉い人なのでは?

 俺が異世界の人だとバレたからか!? いやでも俺みたいな容姿の人は東の大陸にいるみたいだし、シャルルに関しても本人も何も分からないという顔で俺を見てくる。

 門番の人もシャルルを、村のエルフを連れてくるよう命じられているみたいだし、あの村に何か関連があるのだろう。

 まだ少しの付き合いだけどシャルルが何かをしたなんてのは有り得ないと断言出来る。

 難しい事は分からない、ならば答えは一つ。

 シャルルの身に何か悪いことが起こるのならば俺は命を懸けて守るだけだ。

 そうして覚悟を決めて、今まで考え事で見えていなかった綺麗な街並みを通り過ぎて、これまた豪勢な建物に着いた。


「失礼します、御達しであったアヒロデオト山脈の村のエルフを連れてまいりました! 騎士団長殿にお引渡しをお願いします!」

「そうか、そのまま少しここで待っていてくれ。すぐにお呼びしてくる」


 そう言うやいなや駆け足で建物に入っていく騎士であろう人。

 門番の人はクルッとこちらに向き直るとこう言った。


「この街を楽しみに来てくれたのに突然すまない。しかし危険な事は起こらない筈だから安心してほしい。私は騎士団長殿には少ししかお会いしたことはないが、あの方は正義と信念に充ちた人だ。決して不当な扱いはしないし、誰にもさせない」

「そ、そうですか。そんなに言うならまぁ信じましょう。門番さんは、いい人そうですし。なぁシャルル?」

「うん! 門番さんのこと信じるよ!」

「そうか、ありがとう。あっあと私のことはガラッドと呼んでくれ。それとお詫びって程じゃないが、お前達が観光する時は是非私に案内を頼んでくれて構わない。この街の魅力を存分に伝えてやるぞ」

「ホントですか? よろしくお願いします……っとそうだ、俺の名前は八代闘司(やつしろとうじ)って言います。その時は宜しくお願いしますねガラッドさん」

「ボクはシャルル。よろしくね、ガラッド!」


 そうして自己紹介をしていると、先程の騎士と鎧を着けた壮年の男性、そしてシャルルとは同じに見えるが違う、クルクルとまとめ上げて目を奪われるような綺麗な金色の髪をした女性が現れた。


「待たせてすまない。俺はシュルト城下町騎士団団長ウィガー・ローレッジだ」

(ワタクシ)はシュルト城下町騎士団副団長リュリーティア・アルチュセールですわ」


 そう名乗った壮年の男性と綺麗な美女、騎士団のトップ2人がわざわざ来たのだ。


「早速で悪いが中で話をしよう付いてきてくれ、ふむ、名は?」

「あっ! 八代闘司です!」

「シャルルだよ」

「そうか。では闘司とシャルル、こちらだ」


 そう言うとウィガーさんとリュリーティアさんは俺たちを建物の中に案内した。

 案内中にウィガーさんに教えられたがここは騎士団の宿舎らしい、確かにチラホラと他の騎士の人が見える。

 そうして案内された場所は小さな個室だった。


「ここなら誰にも聞かれる心配はない」


 なに?! 誰にも聞かせられない……つまり俺たちを拷問して悲鳴をあげさせても問題ないとそう言いたいのか!?


「では早速聞かせてもらおう」

「くっ! 俺は絶対に屈しないぞ!」

「何を言っている。あのアヒロデオト山脈のマウントグリフォンの事を聞かせてもらいたいのだ」

「「へっ?」」


 俺とシャルルの声が重なった。

 マウントグリフォン? なんでだ?

 疑問はリュリーティアさんによって解けた。


「先日町で周囲を見張っている騎士から報告があったのです。山脈付近を飛んでいるマウントグリフォンが発見されたと。しかもそいつは通常より大きいサイズとの報告も。そのマウントグリフォンが村に向かって降り立ったので至急救援に行くべきだとの事で。それで討伐の準備を整えていたら、村から貴方達がやって来たので事情を聞こうということになったのですわ」


 なるほどそういう事だったのか。

 ていうかあのマウントグリフォンやっぱりやべーやつだったみたいだ。

 騎士団が討伐に来るほどとは、ホントによく勝てたな俺達。


「して、今村はどのような状況に? 一刻も争うならすぐさま騎士団と医療団を向かわせたいのだ。村の方達のためにも」

「あっそれなら大丈夫だよ?」

「いや、そうなのかシャルル? 君の村は特に損害は無かったのか?」

「ううん、村はちょっと……壊れちゃったけどマウントグリフォンは僕達で倒しちゃったからね!」

「は?」「はい?」


 今度はウィガーさんとリュリーティアさんの声が重なった。

 というかシャルル、あの村ちょっと壊れたんじゃなくてほぼ壊れていたぞ。いや壊しちゃった責任は俺にもちょこーっと、ほんのちょこーっとあるかもだけど。


「いやちょっと待て、お前達が倒したと、そう言いたいのか? 二人で」

「うーん、正確にはほとんどトージが倒したんだけどね。トージはぼくを守ってくれたんだ!」

「ふむそうか……」


 いやー、シャルルも俺の事を救ってくれたしいなかったらマウントグリフォン倒せなかったぞー。でもそんな笑顔で言ってくれると嬉しいぞこのやろー。

 なんかウィガーさんは俺の方をじっと見ているし、リュリーティアさんは物凄い疑わしい目を俺に向けている。いやんそんな見つめられると照れるし、胃が痛みそう。


[敵意を確認、スキル発動、能力値の上昇を確認]


 な、なんだ急に?


[対象からの敵意が無くなりました。能力値が元に戻ります]


「ふぅ……そうか、なるほど。よく分かったお前達の言っていることは恐らく本当なのだろうな、しかし一応調査団を村に送らせてもらうが構わないか?」

「ウィガー団長!? 今の話を信じるのですか!」

「ああ、信じるに値すると俺が判断したからな。だが念の為に調査団を送るのだ、それで今は落ち着いてくれ」

「しかし!」

「村のみんなはちょっと人見知りだから気を悪くしないでねって騎士さんたちに言っておいてー」


 あぁシャルルや、今は会話に参加するべきではないぞ、キミのその胆力は一体どこから出てくるのだい。

 あーほらリュリーティアさんちょっと眉がピクピクしてるよ、綺麗な顔なだけに余計に怖いよあれ。


「今回は時間を取らせてすまなかった。もしこの町で困ったことがあったら遠慮なくこの宿舎に立ち寄ってくれ。俺の名前かリリィ、副騎士団長の名前を言えば無下にはされない」

「あっいえはい。ありがとうございました。じゃあ……失礼します」

「またねー」


 想像よりあっけなく帰してもらえたので拍子抜けしてしまった。

 そういえばリリィってのは多分リュリーティアさんの愛称みたいなものなのだろう、何とも可愛らしい。

 宿舎から出るとガラッドさんが待っていた。

 わざわざ待ってくれていたのか本当にいい人だな。


「おぉ二人とも、案外早かったな」

「ええなんか事情話したらアッサリと、こっちもちょっとびっくりしてます」

「まぁあの騎士団長殿だからな、やっぱりやばい事にはならなかっただろ?」

「はい、ガラッドさんの言う通りでしたね」


 ガラッドさんと話していると横からぐーという音が聞こえてきた。


「ねートージー。ぼくお腹すいちゃったし疲れちゃったよ。早く休もう」

「ははは! シャルルの坊やは闘司と違って肝が太いようだな! ようし、じゃあ私がとっておきの宿を紹介してやるぞ」

「いいんですか?」

「あぁもちろんだ! 私にとっても得だしな」

「?」


 色々あったが何にせよ無事に終わったし、いい人にも出会えたので良かった良かった。

 そうして俺とシャルルはガラッドさんの案内の元、とっておきの宿に向かうのであった。











 あれ、ガラッドさん門番の仕事は?

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