ジンの魔法
あさだっていうのにまだトージは寝ちゃってる。
まったくもうお寝坊さんなんだから。
「トージー、朝だよ起きてよー、トージー」
「うぅん……」
ダメだこりゃ。
疲れてるからあんまり無理に起こすのはかわいそうだよね。
うん、起きるまで待ってよう。
なんてったってトージはあんな大きな魔物を倒しちゃうんだもん、疲れもするさ!
「むむー、あっそうだ! 神様に頂いた加護の力を試してみようかな」
神様が言ってたっけ、たしかジン様の魔法は雲とか雷とかてんこー? も操れたりもするんだよね。
風とかしか使えないと思っていたけど流石ジン様の魔法だね!
うーん、とりあえず風の魔法を使ってどうなるか見てみよっかな。
「えーとじゃあ……あっあの木にしよう。ウィンド!」
轟、と風が唸りをあげたと思ったら大人より少し大きい木は根元からバキリと折れて、そのまま更に数メートル先に木を吹き飛ばした。
「う……うわーすごーい!! あっとっと……」
いけないいけない、トージを起こしちゃうところだった。でもでも本当にジン様の加護ってすごいんだ。
いつもの魔法はあの木くらいだと揺らす程度だったのに、バーン! と吹き飛ばしちゃった。
「じゃあじゃあ今度は雲の魔法……ってどうすればいいんだろう? あの雲を動かす感じでいいのかな?」
魔法は結果のイメージが重要である。
詠唱、または言葉でその結果を連想しやすいから唱えることが多いだけで別に無くても魔法の発動は可能なのである。
シャルルはとにかく雲を動かすイメージを頭に思い浮かべてみる事にした。
シャルルの上に浮かぶ小さな雲を操るイメージを。
「むむむ、こう、かなぁ?」
とりあえず雲さん動けーと思ってみたら、僕の思った方向に雲さんが動いてくれてる。
おお、おもしろーい! じゃあ形をちょっと、変えて……。
できた! あはは、スライム雲さんだー!
うんうん、こんどヒマな時にはこの魔法で遊ぼ。
「最後は、雷の魔法かぁ……ちょっと怖いけど、多分大丈夫だよね?」
あの雲さんから雷がビリリっ!と出る感じで行くぞー。
結果のイメージをすれば魔法は発動できる。
しかし思い浮かべた魔法通りとは決していかないこともある。
シャルルは神様から与えられたジンの加護の強力さをまだ殆ど掴んでいなかったのだ。
シャルル自身は操る雲から小さく雷が出る程度を思い浮かべた、だが与えられた加護はその魔法を数十倍に跳ね上げた。
むむむと念じてみたら一瞬閃光が輝き、爆音と衝撃が包んだ。
雷は地面を抉り、その周りを少し焦がした。
トージは飛び起きた。




