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廻天のアキラ  作者: 920
12/18

11話

 蔵とは言葉通り、屯所が蔵置場であった頃に建てられた巨大な土蔵を指す。

その蔵の内、旭を格納する土間の一画に座った五人の前で、月卿げっけいは書状を広げた。

かねてよりの勅諚に基づき、いよいよ浮鳴械備(かせぞなえ)出陣の次第と相成った。

出立は三日後。移動に数日みるとして、晦日には芸長の国境付近に着陣する。既に聞き及んでいる通り、後詰の手伝いとはいえ、諸君ら五名が浮鳴松平の名代であることに変わりはない。くれぐれも御家の…」

「何でそうなる」

 むしろの上で胡坐あぐらを崩しながら、春日はるあき月卿げっけいを見上げた。

「俺達は旗本連中の身代わりか」

械備おまえらは大阪方の要望だそうだ。世に聞こえる浮鳴械備を是非にも見たい、とな」

 月卿は満足気な笑みを浮かべる大宣ひろのぶと、それを横から睨み据える高美たかよしに顔を向けた。

「明後日、玉に移送用の船が入る。すぐ船積みできるよう、十分にしらべおくように」


 ぐごん、と重い金擦れの音とともに上蓋が開くと、半畳に満たない操縦室に光が差し込む。

「なんだこれは」

 皮張りの座席に幾重にも重ねられた毛布団と、縛るように麻帯をたすきに巻かれた座席を見下ろしつつ、春日はるあきが呟いた。

「奴が自分で設えたらしい。こいつもな」

席に降りた千間かずまが、足元から拾い上げた鉢金を裏返すと、内側に縫い付けられた

革張りの綿入れが目に入る。

「こいつは良い。揺れる度にコブを作る心配をしなくて済みそうだ」

「気に入ったなら、二番機のも付けるか」

 操椀把グリップに手をかけながら尋ねる千間かずまに、いや、と春日はるあきは首を振る。

「こうやわくちゃ、気が落ち着くまい」

「違いないな。 動かすぞ」

 千間かずまが内側の把手ハンドルを回すと、春日はるあきは閉まり始めた搭乗口から頭を引いた。


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