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まさかこんな時にばったり正面から出会ってしまうとは。
正直驚いた。倉橋さんのことを最近ずっと意識してしまっていたから。多分意識の外にいたら、僕は何も感じずに彼女の横を通り過ぎることができただろう。しかし今は、完全に固まってしまってしまった。
どうするべきだろう。ここからまた何事もなかったかのように歩き出すのはどうにも不自然な様に思う。かと言って話す言葉も出てこない。要するに緊張している。テンパっているのだ。
倉橋さんとは何度も話したことはある。簡単だ。あの時みたくなんでもない話を振ればいいんだ。
「きっ…今日はいい天気だね」
残念ながら今日は雨だ。
ザーザーと言う音をBGMに僕はサーっと冷たい汗をながした。
しかし、突如彼女がわらいだす。
こんな間違いがそこまで面白いはずもない。何がおかしかったんだろう。
あははははっと倉橋さんはひとしきり笑った後で、おかしなことを言ってきた。
「七海ちゃんとおんなじこと言うんだね。ばっかみたい」
なんだか良く分からないけどすごく楽しそうだ。
けれどおかげで、僕の方も緊張がほぐれて、たった十分の休み時間の間にいろいろなことを話し込んでしまった。
おかげでトイレに行くことを忘れてて、僕は激しい尿意に耐えながら四時間目をやり過ごしたのだった。




