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「で、話って何?」
「あのさ、豊崎…すごく言いにくいんだけど…」
「いいから言ってみろ。ほれ、聞いててやるから」
「ああ、それじゃあ言うぞ?」
「来いよ」
僕は豊崎に、これまでの経緯と、七海との現状と、倉橋さんの存在について話した。
僕が話している間、豊崎は僕が話しやすいよう適度に相槌を入れながら聞いてくれた。
「んでよ、お前は狭山さんが好きじゃなくなったのか?」
「いや、それは無い…」
後ろに小さく、と思う…。と付け足す。
「じゃあ倉橋さんが好きになったのか?」
「え?」
「え?じゃねーよ、好きかどうか」
「いや、だって七海が…」
「今狭山さんは関係ねー。お前がどうかだよ」
僕は正直返答に困ってしまった。
一体何を聞かれているのかわからない。というふうに、頭がごちゃごちゃしてくる。
だって僕は七海が好きで、だから他の人は好きにならないだろ?
それでおしまいじゃないのか?倉橋さんの質問どう言う意味なんだ?
ずっと黙ったままの僕を見て呆れたと言う感じで、はぁ。と溜め息をつく。
そしてまた、言葉を被せてきた。
「あのな、好きな人が二人いてもいいんだよ。それが不誠実だっつー奴もいるけどそんなん気にする必要ねーの。どーせ俺らの間にしかこの会話はないんだから二人いたってたじろぐ事はないんだぜ」
あぁ、そう言う事…。
どうなんだろう、そういう考え方はした事がなかった。
そうなると…一体僕は倉橋さんのことをどう思ってるんだろう。
「わからない」
それが、今の僕が出せる精一杯の答えだった。
「そーじゃー仕方ねーな」
そう言って豊崎はニカッと笑う。
この笑顔には本当に救われる。シリアスな話に不似合いなこの笑顔があるから。だから僕はこいつを頼ってしまう。
事あるごとに話して、楽になりたいと思うんだ。
「まあ、狭山さんのことも倉橋さんのことも、よく考えることだな。たまたま狭山さんと仲の悪い時にたまたま現れた倉橋さんが物珍しくみえてるだけかもしれねーしな」
「うん、そうかもしれない。二人のこと、よく考えてみるよ」
「それじゃあ」
と言って豊崎と駅で別れた。
僕も、改札を抜けて駅を出る。
なんだか足取りが軽かった。こんな日には何かいいことがあるかもしれない。七海ともよく向き合ってみよう。




