砂漠の涙~エルートの村~
世界の外れ。
見捨てられた大陸に見知らぬ声が響く。
クワセロ……モットオレニ………ニンゲンノヤサシサノカケラヲ……モット………
「暑いわ・・・・」
優石を集めるため、私は砂漠をひたすらに歩いていた。
遠くで揺らめく蜃気楼をぼんやりと眺め、ついさっきまで話をしていた
次元の守人と名乗る男の言葉を思い出す。
『優石を集めることがあなたの使命です』
『貴女は、ある事情により優しさを失った状態にあるのです』
『そしてその優しさは、私が守る様々な世界に飛び散りました』
『優しさは石になり、力を持ちました』
『この力は世界を乱す強力なもので、私でも抑えることはできません』
『そこで持ち主である貴女に、手伝っていただこうと思います』
『そのために、記憶を消させていただきました』
『全てが終われば・・・きちんとお返しいたします』
『それでは・・・・お気をつけて』
そこで私はキーラが起こした青い渦に飲み込まれ、此処にきた。
断ることもできたが、記憶をとられていては従うしかない。
旅のためと着せられた長い幅のある布を巻きつけただけ
のような服の内側のはじにソーシャと刺繍されている。
これは仮につけられた私の名前。
少し変かとも思った。
でも悪くない。
そんなことを考えているうち、向こうに町らしきものが見えた。
思わず歩くペースが速くなる。
暑いから休みたい。
それで頭はいっぱいだった。
『エルートの村』
そう書かれた看板をくぐると、どこか懐かしい感覚に包まれる風景が広がっていた。
畑仕事をする村人
木で作られた立派な家
人と人との会話が絶えない大通り。
普通ならやっとついた村、感動や喜びの一つもあってもいいはずなのだが、私ははそれどころではないと数m先に見えた酒場に走る。
「そこのおじさん!…み、水をちょうだい!」
くらくらする頭から必死に信号をとばし、言葉を絞り出した。
店の主人が差し出した水を、一気に飲み干す。
「お譲ちゃん、見ない顔だな。旅人か?」
必死に水を飲む私を不思議に思う顔でそう聞かれた。
「ええ。今ここに来たばかりよ。砂漠は初めてだから、喉が渇いていたの」
それを聞いた店主はさらに不思議そうだ。
「砂漠が初めて??お嬢ちゃんはどっからきたんだい?」
そう聞かれ、なぜだか腹の底がふつふつと湧いたように感じる。
「うっさいわね!ほっときなさいよ!!」
つい、口からそう飛び出していた。
2話目です。
長いこと連載をしていなかったので、思い出したついでに投稿してみました。