異世界
一本の蔦がある。リンナは本能的にその蔦を掴みさっそうと森を移動しながらも
食べるものはないかと見回した。木の実がある。(名前)はそれを素早く取り、
貪り食う。リンナは怪物のように目が充血しており、人からは気味悪がられていた。ちなみにこの名前は人間たちから付けられたのである。
この周辺の動物たちも怖がって近づかない。身体も毛が生えていて、擦り傷だらけで
血が染みている。今日もまた、同じように木の実をグシャグシャにして貪り食う。
そして夜になると木に寝そべる。朝起きると木から別の木へ飛び移るのだが
木が見当たらない。それどころか風景すら変わっている。平面な地平に人間たちが器用に
二本足で歩いている。きれいな同じような衣服を身につけた人がこちらをチラチラと不思議そうに見て素通りしていく。
ある大柄な冠をかぶって偉そうにしている男が立ち止まり、それに比べて細身で質素な服を着た男と何やら話しているようだ。
大柄な男はこちらを指さし何かを言い終えた後、細身の男は自分の両手両足を
掴み、持ち上げた。
暴れて逃げようと試みたものの、他の同じような服を着た男たちが駆け寄ってきて
両手両足を縄で縛り付け、口は皮で喋れないように猿轡をさせた。
荷台には積まれ、意味がわからない。
身動きが取れず、暴れまくるが身体が倒れるだけで全く事態は変わらず。
時間がたつだけであった。