1通目 つの字獣道
※注意※
この物語はフィクションです。
実際の人物・団体・事件・人種などとは関係ありません。
それはある10月の夜のだった。
その時の気持ちは「塾帰りでだるい」
めいいっぱいにつけた推しのぬいやラバストの中に、半ば無理矢理につけさせられた合格祈願のお守り付きのバックへ、テキストだとかバインダーだとか入れられて自転車で毎夜毎夜塾と家を行ったり来たりする日々。
いつになったら終わるの?いや高校受験までなんだろうけど…でも!長い!長ーい!
苦痛ほど長く感じるものというか、本当に塾も長い!
終わるのは9時!そんな時間帯は開いている店も少なくなる、楽しみなんてない!
景色も変わらない、変わるのはテキスト上の問題文だけ。
つまんないし、楽しくないし、そんな状態だと気分も憂鬱になってくる。
もういっそのこと死んでやろうか!?なあ!とか考えて、そのまま明日に目覚める日々。
もーこんな状況になったの原因はなんだ?
そうだ、私だ!自慢ではないが、なんと中学3年生の受験期真っ只中であるのに、いまだに進路先を決めていないのである!
私の父さん母さんは、それを心配してこんな塾漬けの日々にしてくれやがったけど、はっきりいっていらない!
もう学力は十分でしょ!
これもうあれじゃん、毒親じゃん!
無駄に学歴求めてさ。
いや君が進路を決めればよくない?と読んでるみんなは思うかもしれないけど、きっかけがないんだよね。それがないと始まらないっていうか。
それで父さん母さんはきっかけを考えてくれずに、勉強勉強言ってくるからムカムカする。
一緒に考えてよ!そんな急かして決めれるものでもないじゃん!
…まっそんな、いつもの文句を唱えながら帰ってた時だった。
パッ
突然空の一点が強烈に光った。
「えっ?」
漕ぐ足が止まった。しばらくその光に釘付けになる、光った一点から強烈で豪快な爆発が私の目に降り注いできた。
ドオオォォォォ… . .
雷のように少し後から爆破の音が轟いてきた、そう遠くはないところで爆発したのかな?
「…なにあれ」
好奇心と恐怖心が混ざって、ただボーっと眺めてた。爆破で燃えた破片が散っているのも分かった。
「ん? あれ?」
ただもっと大事なあることに気づいた。
「こっちに来てね?」
ひときわ燃える破片が、こっちにきてる。
「やばい……やばいやばいやばい!」
超ヤバい!もう、すぐさま自転車をギュンってUターンさせて漕ぎはじめたの!
ヴォオオオオオオ
でも残念なことに、破片の飛ぶスピードは自転車よりもはるかに速かった。
ゴッッ!
後頭部に激突した
「!!!……いったあ!」
あれはかなり痛かったなー 口から魂が飛び出る感覚があった。そのあと自転車とともに崩れるように倒れた、これもエグいすり傷できた。
「ぅぅぅ…なに…に…?」
痛みが回る中、ふと何に当たったかも気になった。
「…」
ふらふらな視界で認識できたのは。
「」
人の形だった。
「…?…?..?.!」
痛みなんか忘れて思わず駆け寄った、顔がすごく推しに似ている。
小学生男子が持って行くような水筒に収まりそうなくらい小さく、だけど触れている手からはこう…呼吸とか命を感じた。
特徴的な触角が生えてて、ずっと見ていると僅かに動いている。
「これ……って!」
最初はフィギュアと思ったけど
「だ…れ」
この小人は生きていた。
・ー・
暗闇の中でいろんな声が反響している。
「〜〜〜!」「〜?」
「〜。〜。」
誰が何を言っているかは分からない。ただ、聞いているとどこか懐かしくて寂しくなる。
「〜!」
「〜〜、〜?」
でも一つだけはっきりと聞こえた。
「俺はここにいる、ここで待つ」
視界が戻り始める。
「ぉ-ぃ」
「んん…?」
ここはどこなのだろう?なんだか周りのものが遥かに大きく見える。
「おーい」
霞が晴れていく中、誰かの姿と声が見えてくる。
「おー…おっ起きた?」
巨人が覗いていた。
「…」
理解するまで時間がかかった、巨人を見るのはこれが初めてだったからだ。
「…あなたが助けてくれたの?」
「おっ喋れるんだ!そうだよ。」
「…ありがとう」
「いいよ、それで君ってなにもの?あっ私は村上ヒナタ!」
「え?」
「名前とか!どんな存在なの?」
なんだか熱苦しい、興味が隠せないキラキラした目で迫ってくる。
「あっごめん、初対面なのにあれこれ聞くのはよくないね」
「いや大丈夫だよ」
慌ただしい人、でもなぜか悪い人とは思わなかった。
「えっ?なら聞いちゃおっかなーどうしようかなー」
…なんだかこの感触を前にも感じたことがある、熱くて、明るくて、どうしようもないくらい真っ直ぐで、誰もが光を取り戻す恒星のような存在…そうだ、思い出した!
「えぇ!?ちょちょっと……」
「お願い!ショウの…みんなと!出会わせて!!!」
無我夢中でヒナタという人に迫っていた、ーなんで忘れていたのだろう。
「ぁ…!」
忘れてはいけない、忘れてはならない
「…から!」
あんなに苦しんだのに、あんなに辛かったのに
「ねえ…」
今に至るまで全く思い出せなかったことに嫌になる…
「ちょっ!ちょちょ一旦落ち着いて!」
その言葉で焦りが止まった。
「何かしてほしいんでしょ?私を頼りに地球に来たんだし」
そう…そうだ
「なおさら教えてよ、そのショウのこととか」
「わかった」
焦っていた心を鎮まらせて、あの時のことを伝えよう。
「わたしは生まれつき特異な遺伝子を引き継いでるんだって」
その一言から始まった。
「それに目をつけられて、母親と共にある研究所の実験体として育てられた。だけど産まれてからすぐに母親は死んだ、何も覚えてない」
「研究所ではずっと同種のような扱いはされなかった。敬遠されているような感覚だった、道端に出された糞のように意識的に嫌われる対象として。生きていくうちに僕はみんなと同じじゃないんだ、なら同じ仲間が住む故郷はある、ここなんかじゃないそう考えて脱走した」
「脱走した…」
「逃げたあとはすごく楽しかった。いろんな人と出会って助けられて繋がって仲良くなって、毎日がすごく色づいた。ここが本当の居場所なんだ。
「幸せなんだ」
うん。脱走してから最初にショウという人出会った。ショウは誰にも壊せないくらい明るくて透いてた、誰もが嫌っていた僕を好きになってくれた。研究所だとそんなのを感じなかったから、恋をした」
「うんうんうん!」
なんだか私の気持ちも明るくなってくる。
「でも追ってきた研究所に出会った仲間と引き裂かれたし、ショウも殺された」
「」
あまりに軽く発せられた事実に、驚きと悲しさが混ざった。
「あ、ああ、大丈夫だよ、ショウのおかげでもう傷は癒されてる」
「…え…どういう?」
「生前になんとなく自分は死ぬのを感じてて、もし本当に死んでしまったら寂しがらずに墓参りに来てくれないか?って約束したの“俺はここにいるここで待つから”だって」
「待つ」
「墓はどこにあるかは分からない、もしかしたら研究所の話を考えると墓にすら入れられてないかもしれない。でも待ってるから行かないと。わたしだってまた会いたい」
「…」
「地球人は僕達には出せない力を持っているって聞いた、色々手伝うから一緒に墓を探してくれませんか?」
真剣な眼差しで私を見つめる。
「…好きな気持ちは一緒だね」
棚に飾られてるアクスタを取り出した。
「あなたを助けたのは、この大好きな推しに似てたからなの」
よし!これでリアの共感をとってやるぜ!
「…?…なら似てなかったら助けなかったってこと?」
ん?あれ?思ってた返しじゃないぞ?
「え?あ!そういうことではなくて〜ただ寄り添えたらなーって気持ちでね!似てなくても!助けた!」
「そっかごめん」
「大丈夫。それに、その話を聞いてたら願いの手助けもしたくなった」
「それって」
リアの目が輝き始める。
「できることは少ないかもしれないけど、その少しを全力で捧げてみせるから!一緒に探そう!」
手の代わりに小指を出すヒナタ。
「私への手伝いはいらないから、よろしく!」
「ありがとう!」
リアは笑みをこぼしながら、小指にもみたないほどの小さな手で握手をかわした。
・ー・
「ヒナタごはーん」
扉の奥から声が聞こえた。
「あっはーい!他にもいろいろ聞きたいけど母さんに呼ばれちゃった」
「わかった」
「すぐ戻るから!あっ部屋から出ないでね!」
バタンッ
奥から母親との会話が少し聞こえる。
「友達となーにで盛り上がってたの?」
「えっ?ああ!まあいろいろ」
「そっかあいろいろか」
「あんま詮索しなぃ…」
徐々に離れていく。
「…」
扉を見続けたあと、部屋を見渡した。身の回りの物がほとんど僕より遥かに大きく、巨像に囲まれたような威圧感を感じる、なんだか研究所を思い出すようで少し気味が悪い
ふとアクリルスタンドを飾っている棚を見た時だった。
「あっ!」
ヒナタが置いた位置が悪かったのか、今にもアクリルスタンドがグラグラと落ちかけていた。
(飛ばないと!)
しゃがんだ。
ボッ…ゥン
周りに光の膜ができると同時に
ドガァ!
飛び上がった。
パシ
空中でキャッチ。
ダンッ
勢いのまま部屋中にぶつかった音が響いてしまった。
「?」
ヒナタの部屋から離れたところで何かが気づいた。
アクリルスタンドを見渡した、幸いにも傷はついていなかった。
「ふー」
安心したのも束の間ドアの奥から何かが近づいてくる。
「?」
すかさず身を隠す、荒い呼吸音が聞こえてくる。
「ハッハッハ」
ドアがバタバタと不規則に揺れ始める。
ガチャ
夕食を食べている私と両親。
「ねえ本当に進路どうすんの?」
「考えてるから」
あーまた始まったよ。
「考えてるって言われてもなあ」
「ヒナタは良い生徒って聞いてるからねえそれだけが心配よー。このままどこにも行かないだと、就職できるとこもできないよ」
うるさいなー
「分かってるから」
今リアのことで頭がいっぱいなの!
ほとんどノリと勢いで拾ってきちゃったけど、これとんでもない爆弾だよね。やばいー!どうしよう、というか親からどう隠そう?
少し冷や汗をかき始める。
(戻るまで、なにもしないでいてくれ〜)
そう願っていた時だった、階段がドタドタと騒がしくなる。
「なに!?やめて!」
「ワン✨ワフフ!ワウワン!」
飼い犬がリアを咥えながら雪崩れてきた。
「あ」
「えっ…?おっおい何を咥えてるんだ!?」
「ちょっとタケノコ!なんなのよそれ!」
獲物仕留めたり!というような達成感たっぷりの飼い犬タケノコに、お母さんたちが駆けよっている。
「あっああ…」
両親の間から覗いていた。
(あー終わったー)
家族会議開始
「で?これは何?」
そう母さんは言う。
「拾ってきたの、あまりにボロボロだったから」
「拾ってきたじゃないでしょ!!」
母さんが怒鳴る。
「あんた今受験期だってのに何馬鹿なことしてるのよ!そんなの戻してきなさい!」
なんだよ“そんなの”ってリアをうんこ扱いするなよ…
「聞こえんかったか!戻せと言ってるだろう」
父さんが間髪入れずに言葉を刺してくる。ふざけんなよ。
「‥わかったよ」
仕方なくたって庭に持っていく。
「明日の10時にまた会いきてね」
ボソッとリアに伝える。当たり前だ見捨てるわけない。
ガララッ
リアを庭に置いて。
「じゃあバイバイ」
離れようとした時だった。
「!」
何かに気づいたリアが光り、ヒナタのもとへと飛ぶ。
「えぇ?どうしたn
「逃げて!!」
慌てた様子のリア、すると突然背後から母親から回し蹴りが飛んできた。
「危ない!」
「うわ」
ダンッ
リアに倒されることで間一髪避けた。
「おいカエコ!」
「ワウ!」
「なにやってんの母さん!?」
「あれは母さんじゃない!」
「えっ?」
「目を見て!」
母親の目を見る。明らかに地球人ではない目に変わっており、私をいつも叱っている目から、修羅場を潜り抜けてきたような肝が据わった目で見ている。
「追ってきた部隊だ。口に入れて!」
「えっ!?」
「早く!
何も分からないままリアを口に入れる。
『させるか!』
しかし母親から平手打ちを喰らわされ、入りかけたリアが身投げされる。
「うっ!」
投げられまいと私の歯に掴まった。
「いっ…」
だが痛みで悶えため、リアの手を噛んでしまう。
「ぐああっ!…噛まないで…」
「あ!ごへん!」
すかさず口を開け、入るリア。
「!」
口内でピリっとした感覚がくるとともにリアと同じ目に変わった。
『あとは任せて』
私の口からリアの言葉が出た。
何もかも分からなかった、突然変貌した母さん達、口に入って私の体を使い始めるリア。
おそらくはリア達の能力なのだろう、人間の体を乗っ取る。
(わかった)
今はその状況に流されることにした。さっきと同じように光り、母親を押し除ける。
母親から蹴りが飛んでくる。
ブオ
それも避けるが。
「あ゛あああ!」
脇腹に鋭い痛みと共に急に体が私へ戻る。
「う゛ぅぅ」
脇腹に目を送ると、工事現場で見られる作業床が刺さっている。
(なに!?これ…
倒れ込んだ、そこに父親が駆けつける。
「父さん…母さんを止め
『リアを出せ』
「…えっ?」
その言葉に驚く。
『交渉だお前の中にいるリアを渡せ、そうすれば両親を返そう』
「…」
乗っ取られた母さん達に囲まれる中私は別の気持ちで満たされてる。
私が操作を代われたのだから母さん達も代わらないの?
嫌いなの?
まあそっか今はそうだから…
『黙れ!』
突然乗っ取られた母さんの口からその言葉が出た。
(誰に?)
(私が何か言った?)
(いやもしかして、中?)
両親が中でヒナタを守ろうとしているのだろうか。つまりは代われない、だから心の中で必死に止めようとしている。
「…」
その状態を知って込み上げてきたのは、
「ふざけんなよ!」
両親への怒りだった。
私を大切にしてるのに、なんでその感情をリアにも向けてやらないんだよ!」
「リアだけ腫れ物扱いして、私はエコ贔屓か?」
「リアは私が守った家族だ!」
何も反応しない両親の体
「あーわかったよ。家族だと思わないなら、私だってお母さん達を家族と思わない!勝手に連れ去られろよアホ!」
「ちゃんと助けてほしいなら…娘を守りたいなら…認めてよ!リアを家族として!」
「娘の大切なものを認めてよ!一緒に悩んでよ!一緒に守ってよ!」
「それができないならお前ら親じゃねえ!」
「ハアハア」
スカッとした。
全てを言い切った。
何も嘘ではない気持ちを
嵐が去った後の荒野のように。さえぎるものは何もなく開かれていて風が吹く。
乗っ取られた両親の体が一瞬ピクッと動いた。
「わかったじゃあ行くよ」
乗っ取られた両親に向かって何も遮るものはない
ただ走っていけ。
星々が照らしている。
私の目にその光が反射する。
そして
開眼する。
その眼はまるで一等星が輝く星空だった。
「目が変化した!?開通状態か…」
隊員がなにやら言ったがヒナタには聞こえていなかった。
足を一歩出す
星座のように線で結ばれたヒナタの残像が、入り乱れる
これはなんだ?異変への恐怖を感じる隊員
ここにいては危ないだろう、避けようとした
だがその線に沿ってもう動き出していた
背後から回り
口に手を入れ
隊員の足を掴む
踏み込み
投げた
自らを照らしたあの夜空まで届きそうなほど、
速く
遠く
飛んで行った。
「…ッう」
飛ぶ姿を見送りながらヒナタは崩れる。
口の中が光り、リアが勢いよく出る。
操りが外れた両親のもとへ行く
「ごめん‥ヒナ…」
両親の心配を跳ね除けて問う。
「リアのこと。家族として認めてくれる?」
「…わかったわ、ちゃんと面倒見てあげてね」
「うん」
「…ヒナタ来て」
母親からボソッと出た、その言葉でヒナタが駆け寄る。
「ごめんね」
母親がヒナタを抱きしめて頭を撫でる。
「…お母さんは悪くないよ」
父親もヒナタを抱きしめる。飼い犬のタケノコも寄り添ってくる。
「…」
遠目からリアが見ている、リアは過去の自分と照らし合わせてしまい。
「いいな」
と呟いてしまった。
「ん?」
それに母親が気づく。
「あなたも」
「えっ」
「来なさい」
「、」
ヒナタの肩へ乗り。
ギュ
ヒナタを抱きしめた。
・ー・ー・ー・ー・
地球に着陸している軍の宇宙船、近くにヒナタが投げた兵隊が降ってくる。
ドッグォオ゛オ゛オオォン
土を押し上げ、根を破り、石がひび割れながら隊員は着陸…いや墜落した。
「どうした!」
他の隊員が落下地点駆け寄って行く中、ひとり他の兵隊とは違う容姿の男がいる。うさぎ耳のような触角が生えた男だ。
「ハクト隊長!」
そう隊員が呼ぶ。
「怪我は?」
「大丈夫です、それよりご報告です!被験体が地球人と接触して、暮らし始めました!」
周りの隊員やハクトが驚く。
「…わかったこの件は本星に持ち帰る、その被験体の確保を中止して観察を開始しろ!救護班!」
「はい!」
そう言うと救護班が隊員を担架に乗せて去っていく。
歩き出すハクト。
(前々から行方不明者は地球人と同居しているという仮説は多く出ていたが、事実として確認はされてなかった)
自分の部屋に戻り電話をとる。
(観察をする中で地球人の思想や暮らし方が、我々に危害を及ばさないものだと証明されたなら)
コール音が鳴る。
(地球移住計画への大きな一歩だ)




