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サスペンス小説 【赤い糸】

作者: 虫松
掲載日:2026/02/09


挿絵(By みてみん)


第一話 親戚の離島へ


新婚の夫婦、中曽根 健と美咲は、都会での慌ただしい生活から逃れるように、美咲の遠い親戚が住む離島を訪れることにした。

人口わずか数百人。定期船は一日二便。

海に囲まれ、逃げ場のない島。


船が桟橋に着くと、島の住民たちは不自然なほど揃った笑顔で二人を迎えた。

拍手すら起こらない静かな歓迎。

潮風の中に、どこか鉄のような匂いが混じっている気がした。


「……ここ、少し変じゃない?」


美咲の小さな呟きは、波音に掻き消された。


滞在先の親戚の家の近くに、小さなカフェがあった。

看板には「Cafe Riku & Sora」と書かれている。


そこで健と美咲は、りくそらという二人の女性と出会う。

年の頃は二十代後半。

陸は無口で視線が鋭く、空は愛想がよくよく笑う。


だが二人には、言葉では説明できない“違和感”があった。

顔立ち、声の高さ、指の癖――

まるで鏡写しのように似ているのに、夫婦はそれを深く考えなかった。


その夜、健は夢を見る。

赤い糸が足首に絡みつき、暗い海の底へ引きずられていく夢だった。


第二話 赤い糸の謎


島で最初の異変が起きたのは、到着から三日後だった。


漁師の男が、崖下の磯で死体となって発見された。

首には、赤く染まった細い糸が巻きつけられていた。


島の人々は口を閉ざし、警察も「事故死」として処理しようとした。

だが、それは始まりに過ぎなかった。


次々と見つかる遺体。

共通点は、全員が赤い糸で“結ばれて”いたこと。


美咲の遠い親戚は、ある夜、健に小声で言った。


「……あの双子、関わらんほうがええ」


その夜遅く、親戚は偶然、陸と空が崖近くで話しているのを耳にする。


「次は、あの人ね」

「赤い糸、ちゃんと見えてる?」


低く、楽しげな声。


恐怖に駆られた親戚は美咲に知らせようと家を出るが――

闇の中で背後から突き飛ばされ、断崖から海へ落とされた。


翌朝。

海に浮かぶ遺体を見つめながら、美咲は震えが止まらなかった。


第三話 島の伝説


健と美咲は島の図書館で古い記録を調べる。

そこで見つけたのは、黄ばんだ紙に書かれた一つの伝承だった。


「この島には、双子の姉妹が生まれてはならぬ。

双子は赤い糸で結ばれ、

愛と憎しみを混ぜ、島に血を呼ぶ」


「呪いを解くには、

赤い糸で結ばれた運命の命を捧げねばならぬ」


さらに、古い小学校の卒業アルバム。

そこには、幼い頃の陸と空が並んで写っていた。


双子だった。


健と美咲は、彼女たちが犯人だと確信する。

しかし問い詰めた二人の答えは、予想を裏切るものだった。


「……私たちも、犠牲者なの」


陸と空は語り始める。

幼い頃、島の因習の中で引き裂かれ、

“呪いを鎮める器”として育てられたこと。

赤い糸の儀式により、愛する者を次々と失ったこと。


「でもね」

空は微笑んだ。

「殺したのは、私たちだけじゃない」


真犯人は島の長老を中心とした住民たちだった。

赤い糸の伝説を利用し、不要な人間を“事故”として消してきたのだ。


最終話 赤い糸の終焉


真実が明るみに出た夜、島は混乱に包まれた。

だが、すべてが終わる前に、陸と空は自ら罪を被ることを選ぶ。


「私たちは、殺した」

「だから、終わらせる」


健と美咲の制止を振り切り、二人は高台の崖へ向かう。


赤い糸が、二人の小指を固く結んでいた。


「ねえ、来世があるなら」

「今度は、普通の姉妹で生まれよう」


月明かりの下、

二人は手を取り合い海へ身を投げた。


赤い糸は、波に溶けるように消えた。


その日を境に、島で事件は起きなくなった。


健と美咲は島を去った。

だが今でも、夜の海を渡る風の中で、

かすかに聞こえるという。


赤い糸が擦れる音と、

双子の笑い声を。


【赤い糸 完】

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