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Noah【ノア】~天空都市ブルーローザへの旅立ち~  作者: 奥森 蛍
2章 飛空艇ガリバルダ号
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7 たからもののへや

 部屋に入ってたいそう驚く。高い天井にびっくりするほどのガラクタがうず高く積まれてれていて、まるで色彩豊かなゴミの山。というとノアは怒りそうだけれど、本当にガラクタだらけだった。

 無数の宝物の中に一見しても宝剣はない。なにしろ目的外の物が多すぎる。これほどの物を調べるのにいったいどのくらい時間がかかるのか。


「見ろよ、これ。ビックリ箱だ」


 エドが、箱から顔が飛び出したままでバネの伸びきったビックリ箱を手にしている。垂れさがった人形の頭を叩くとケタケタケタと笑った。


「うひゃひゃひゃ。面白れえ」

「エド、遊んでないで宝剣を探せ」

「そう、宝剣だ、宝剣」


 エドもビックリ箱をポイッと投げ捨てて、宝の山へと登った。

 足場の悪さに気を配りながら懸命に探索する。探る度にガラガラとどこかで崩れる音がして、宝物が滑り落ちていく。離れていく物は気に留めない。目的の物じゃないのだと諦める。これだけあるから気にしているとキリがないのだ。


「あっ、これ」


 ウィーンはピンク色の物体を掘り出した。長い細首をつかみ、引きあげたのはウィーンの半身はある大きなピンクの鳥の人形だ。しかし、あまりの精巧さに本物ではないかと疑ってしまう。まるで生きているように感じられるが……


 どこかで見たことがあると思考して、ノアの帽子のピンクの羽だと気づいた。


「一番大事な親友に貰ったっていってたよね」


 ますます不審になる。大事な親友に貰った物をそこら辺の物と一緒に保管しているなんて。アレもやっぱり嘘なのか。


「お前たち本気で探す気はあるのか」

「あっ、アーサー兄さんこれ」


 エドの言葉に二人は振り返る。手には弓のような物が握られていた。


「ボウガンか、使えなくはないけれど」


 射る物の無い武器を手に入れてもあまり心強くなった気はしないが、なにも無いよりはいいのかもしれない。


「一応持っていこう」

「了解」


 エドが子気味良く頷いたとき、前方からシュウウッと何かが素早く滑る音が聞こえた。入り口とは対極の船首側をよく見るとなにやら持ち手のついた紐が地表近くまでぶらさがっている。そこだけはガラクタに埋もれず、綺麗に保たれていた。


「ここにいたんだね」


 声を聞いてどきりとする。

 音と共にノアが持ち手に足をかけて、さっそうと天井からおりてきた。よく見るとその場所の天井には小さな穴が空いていた。


「朝食はいつでもいいっていったけれど、今何時だと思っているんだい」


 声は地の底を這うようにどこか不気味で、優しく穏やかに話しているけれど音程でとても怒っていることは分かった。


「ボクはあまり怒ることが好きじゃないけれど、ルールを守らない子たちにはお仕置きが必要だ。さあ、おいで……」


 ノアは持ち手からおりて着地すると、宝物の山を登ってくる。

 乱暴に宝の頂上にいたアーサーに手をかけようとしたとき、アーサーがノアの手を振り払い、宝物の山の中からなにかをがっとつかんで勢いよく振りあげた。空を切る音がする。


 きらりと光った切っ先を見て、ウィーンは息をのむ。


「いいもの見つけたね」


 ノアは警戒するように半歩後ずさりした。


「宝剣だ」


 ウィーンは呟く。アーサーの手にしているそれは、キラキラと派手な装飾のついた金の細みの剣だった。


「ピロー・ソードだよ、知ってるかい。枕元に忍ばせる護身用の剣さ」


 ノアの余裕ぶった説明を聞かずにアーサーは眼差しを叩きつける。


「殺されたくなければオレたちをセシルブリュネに戻せ」


 ノアは口元をにやっと吊りあげる。


「それは出来ないといっただろう!」


 大声で叫ぶとノアは宝物の山から後ろ向きに飛びおりて、足元を見ずにだんっと片足を迷いなく持ち手へと乗せた。アーサーが追いかけるとノアは逃れるようにぐっと持ち手を蹴る。

 持ち手はがこんと音を立て、その後ノアの体を上方へと勢いよく引きあげた。ノアが穴の中へと消えていく。どうやら上階と行き来ができる昇降機のようだ。


 ノアが去ったあとで三人は寄り集まり穴の上方をのぞいた。


「逃げられたか」


 穴から微かに光が見えて、どうやらどこかに通じているらしかった。数えると昇降機ノアが使用した物を除いてまだ四本ある。


「追いかけようぜ」

「どこに繋がっているのかな」


 勇んだアーサーが足をかけ、昇降機をグッと蹴る。音の直後アーサーの体が瞬く間に天井の穴の中へと引っ張りあげられ、遠ざかる姿はすぐに見えなくなった。


「オレたちもいこう」


 兄を追うように二人も昇降機に足をかけてぐっと蹴った。

 直後ぐんっと体が引かれる。はるか上方でローラーの回転音がして、重力に逆らいながら体がどんどんと加速し、体が恐怖ですうっと冷めていく。目を見開き迫りそうな壁を見た、木の竪穴が延々と続いてそれが下へと流れていく。無機質な景色であったが、その景色すら楽しむ間もなく目的地へと到着してしまった。


 止まった勢いの反動でくんっと体が跳ねあがる。ウィーンは綱を握りしめ踏ん張った。


「あっ、ここ」


 穴から床へ降り立ち周囲を見渡して、たくさんの人形と毒々しい色のキルトのベッドカバーで気がつく。


「船長室だ」


 ノアはおそらくロープ一つでこの部屋と船の深部へと行き来していたのだ。船長室のドアは開いていて、そこに先にあがった二人はいない。前方のガラス窓からアーサーがノアを追いつめているのが見えた。


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