ピンクブロンドの男爵令嬢と、空を飛ぶ猫の話
『ミャー、ミャー』
『キャア、大変、猫ちゃんが、木から降りられなくなって、鳴いているわ。用務員さんを呼ばなければ!誰かいませんか?』
と、呼びかけていたら、
子猫ちゃんの体が光って、空を飛んだのよ。どこかに、去ったわ。
フワ~~~
『ミャア!』
『キャア!』
『どうしたご令嬢!』
『殿下!実は猫ちゃんが、いえ、何でもないです。失礼しました』
・・・・・
「と、こんなことがあったのよ」
「これで、5件目だわ。殿下が通りかかると、猫ちゃんが木の上にいる」
「まさか、学園の7不思議かしら」
「そんなことあるわけないじゃない!」
私は、男爵令嬢のサリー、髪が珍しいピンクブロンドである以外は、ごく普通の男爵令嬢だ。強いて言えば、フワフワして、可愛い?
そんな馬鹿な事があるのかと思っていたら、
本当に、木の上で、猫ちゃんが鳴いていた。
『ミャア、ミャーーー』
「大変だからね!」
靴を脱いで、裸足で登った。
「猫ちゃん、逃げないで~~」
「ミャン!」
「よいしょっと」
無事、降りたら、下に殿下と側近達がいた。
「・・・そこの生徒、事情は見て分かったが、危ないから気をつけられよ」
「はい!畏まりました」
「ミャン!」
そして、猫ちゃんは、王都のタウンハウスにお迎えした。ミミーちゃんと名をつけた。
ペロペロ~
「ミルク、沢山飲むのだからね」
「ミャン!」
「ミミーちゃんは、お空を飛ぶの?」
「ミャア?」
この子を観察したが、飛ばない。
まあ、普通の猫なら、空を飛ばないだろう。
と思って、今日の事を話そうと学園に行ったら、公爵令嬢様リンディア様から、話しかけられた。王太子殿下の婚約者だ。
「ごきげんよう、ダン男爵令嬢サリー様」
「初めまして!」
「貴女、フラグが立ったわよ」
「はい?」
話を聞くと、ここは、乙女ゲームの世界?
恋愛双六か?
知らんわ。
「貴女が助けたのは、フラグ猫よ。裸足で木に登って助けるのが、正解よ。フフフフフ、これを差し上げますわ」
「ヒィ、招待状!」
☆☆☆公爵家ガーデンパーティ
「殿下、こちらが、私のお友達のサリー嬢、ダン男爵令嬢ですわ」
「初めましてなのだからねっ!」
「下級生か、よろしく、今日は楽しんで行くが良い」
びっくりした。殿下と側近たちと、公爵家のファミリー、寄子の貴族たちが参加するパーティなのだからね。
「こちらが、騎士団長の子息、マックスに、宰相の息子、オリバ、大商会長の子息・・・」
「始めましてだからね!」
・・・・・
「サリー様、気に入った殿方はいましたか?」
「いません!」
・・・・・・
こんなことが、数ヶ月続いた。
そして、不穏なことが身の回りで起きる。
「・・・ヒドイ!私の私物が!壊されている!」
「誰か!サリー様の私物を壊した人、見た人いませんか?」
・・・・・
そして、
リンディア様から、話しかけられる。
「私たち、友達よね。身分の差はあれど、悩み事はない?」
「ありません」
・・・まだ、まだね。フラグは立っているはずよ。
私は、公爵令嬢リンディアよ。転生者だ。日本では、38歳のOLだった。
この世界は、私がやりこんだ乙女ゲーム。悪役令嬢が主役の『悪役令嬢戦記』よ。
フフフフ、裏組織に依頼をして、サリーが、ピンクブロンドのヒロインの行動を取るように、外堀をガッチリ固めるわ。同じ背格好の工作員に、ピンクのカツラを被らせるわ。
・・・・・
ヒソヒソヒソ~~~~
「公爵令嬢様が、ピンク頭の令嬢に、婚約者に近づくのはやめなさいと注意していたわ。後ろ姿しか見えなかったけど、もしかして、サリー様?」
「ああ、あんな。弩ピンクの頭なんて、サリー嬢しかいないだろう」
「あ、サリー様、実は・・・」
「え、え、そんな噂が?」
・・・知らないうちに、私の噂が広がっている。
私が、公爵令嬢様に虐められていると、私が訴えていると?
ガラガラ~~
「サリー嬢はいるか?生徒会執行部である!付いてくるように」
「はい!」
・・・・
「ええ、目安箱に、リンディア様から虐められているとの文が入っている?あたしじゃありませんよ!私のサインだけど、別人が書きました。字が似ているけど、あたしじゃないです」
「そうか、何者かがサリー嬢が嘘の告発をしているように仕向けているのか。リンディアも交えて、事情調査をしよう。放課後、王宮に来るように、馬車を出す」
「分かりました」
やだな。どうやって、何もないと信じてもらおうか。
☆王宮、中庭
「サリー様、殿下達が来る前に、ここで、お茶をしましょう。アンリ、お茶の用意を」
「はい、リンディア様」
メイドが席を外し、二人っきりになると、リンディア様は豹変した。ナイフを取り出す。
「あれ、何故、短刀を出しているのですか?」
「フフフ、それはね・・・【キャアアアーーーーサリー様やめて~~~~~】」
「え、何々?どうされたの。短刀で、ご自分のドレスをビリビリに破いて・・危ないですよ」
・・・どうしちゃったの。メイドが、お茶の準備で席を外した瞬間に、ナイフを取り出し。ドレスを破いているわ。
止めなきゃ。
「やめるのだからね!」
とリンディア様からナイフを取り上げたら、
ダダダダダダ!
「何事!」
「リンディア様!」
「おい、あの男爵令嬢を取り押さえろ!」
殿下達と衛兵たちに、周りを取り囲まれた・・・・
あれ、もしかして、私が、リンディア様を害そうとしているように見えている。
「リンディア様、状況説明をして下さい。これじゃ、まるで、あたしが、暴漢みたいじゃないですか?」
「ヒィ、サリー様、いくら、殿下が好きだからと言っても、これだけは、譲れませんわ!」
「リンディア、そうだったのか。気立てが優しく、低位貴族にも親切にするから、つけ込まれたのだな」
「さすが、次期、国母!」
「「「俺たちが守るぜ!」」」
「グスン、サリー様から、殿下を寄越せと、言われてましたの。でも、大事になるから、改心するように説得していたら、サリー様が虐められていると、訴えだしたのが、真相ですわ」
「何と・・」
「さあ、捕まえろ。しかし、ナイフを持っている!!」
「慎重に!」
「今、ナイフをしまえば、家を取り潰しだけですませてやる!」
「違うのだからね!リンディア様、正直に話して!」
「ヒィ、やめて、サリー様、私を殺しても、殿下だけは譲れないわ」
「リンディア・・」
・・・何、この茶番!
「ニャー、ニャー、ニャー!」
その時、猫の声が聞こえてきた。
え、この声は、ミミー、上から、もしかして、空から?!
ミミーの体は、淡い青色に光り。この修羅場の上をクルクル旋回してる。
「ミャー!ミャー!」
「何?猫が空を飛んでいる!」
「神獣か?」
「しかし、どうみても、猫だ!」
「ヒィ、フラグ猫?」
ストン!
とテーブルにおり。
ミミーは顔を上げ。目が光った!
ピカッ!
猫の目は暗闇で光るが、それの比ではない。
そして、空中に映像が浮かび上がった。
まるで、最近開発された魔道映写機のようだ。
『サリー様、殿下達が来る前に、ここで、お茶をしましょう。アンリ、お茶の用意を』
『はい、リンディア様、あれ、何故、短刀を出しているのですか?』
『フフフ、それはね・・・【キャアアアーーーーサリー様やめて~~~~~】』
『え、何々?どうされたの。短刀で、ご自分のドレスをビリビリに破いて・・危ないですよ』
・・・・・・
あの時の映像が、浮かび上がった。
「何?」
「リンディア、どういう事だ!」
「ヒィ、違う。これは、悪役令嬢戦記の中の、100万プレーに一回の、ピンクブロンドルート!バグよ」
「何を言っている!」
ザワザワザワザワ~~~~
「何が起きた!」
「伯父上!」
大公殿下も来た。
「その剣を下ろせ!」
フワ~~~
ミミーは空を飛び。どこかに去った。
私は取り調べを受けた後、
家に帰された。
☆☆☆ダン男爵家
「ミャン!ミャン!」
「ミミー!」
ガシ!
抱っこした。
もう、あれから、空を飛ぶことはないが・・・・周りで、不思議な事が起きた。
お父様が、領地から、王都に火急の用事でやってきた。
「大変だ。領地で、金鉱山が発見された!宝石も見つかった」
「まあ、旦那様、早く、王国に届けなければ!」
そして、お兄様も、
「大変だ!畑の中で、輝く麦を見つけたら、新種の麦だった。黄金の実をつける。俺、ただ、みつけただけなのに、表彰されるって」
伯爵に受勲された。
お母様も、
「オ~ホホホホホ、まあ、宝石鉱山も見つかりましたのよ」
「「「まあ、是非、当家とお付き合いを」」」
社交界で引っ張り凧だ。
私は、
「サリー嬢、すまない。お詫びに、観劇に行こう」
「ヒィ、殿下、それは無理です」
「リンディアとは婚約解消になった。どうも、いつ頃からか、別人にすり替わっていたみたいだ。今は修道院にいる」
「殿下!なら、私たち、側近もご一緒に!」
「皆の物、ならん。伯爵家令嬢では、王妃は荷が重い。是非、大公家に嫁に来い」
モテモテ状態だ。
ミミーは、あれから、普通の猫に戻ったが、時々、街中で見かける。
空を飛んで移動したのだろうか?
最後までお読み頂き有難うございました。