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98.危機感…


ーーキャルム視点ーー

 


(まずいまずいまずいまずいまずいっ!)


私の頭の中には警鐘が鳴り響いていた……


学園から急ぎ城へと戻り、父上の執務室へと向かう。


本来なら先触れを出し、取り次いでもらう必要があるのだが、それらを無視…いや省略して重厚なドアの前に立ち、呼吸を整えてノックをし声を掛ける。


「父上っ私です!急ぎご相談したき事がございます」


入室の許可を得て部屋に入ると、父である陛下は書類から目を離す事なく「しばし待て」と言い、執務を優先させる。


私は焦りと緊張から…ソファーに腰掛ける事なく、ドアの前で考えを巡らせていると…


「どうした?茶を飲む余裕もないのか?何があった」


父が手を止め、怪訝な顔でこちらを見ている…。


私の視線で、父が室内の人間を下がらせたので…私は覚悟を決め報告を始めた。


「父上、先程王立学園にて…サリヴァハーク国セイリオス公爵家次男ジェイソン・セイリオス殿にお会いしましたが…父上は彼の訪問理由をご存知です…か?」


私は…どうか父上が把握していてくれと…そう願う気持ちで尋ねてみたのだが…


ガタンッと音をたて、立ち上がる父を見て…


あぁ…訪問理由もなにも…入国すら知らされていないのだとさとった…。


「いったい…何があった…お前の様子からして吉報とは思えぬが…」


眉間に皺を寄せ席を立ち、「詳しく話せ…」と執務机からソファーへと移られたので私も父の向かいに腰を下ろした…。


父は心の準備をとばかりにお茶を用意させ喉を潤す。


高級な茶葉を使った香り高い紅茶でさえも、私の心を落ち着かせる事は出来なかった…




そして…私の感情はひとまず置いておき、事実だけを丁寧に伝えた。


今日一日の出来事……今朝レミントン司祭が学園に顔を出した事から始まり、聖女アルヴィナの暴言、そしてジェイソン殿が立ち去るまでを…。


父上はまず、レミントン司祭に反応を示したが…聖女の言動に対し、あからさまな怒りを表した。


私とジェイソン殿の会話の内容を聞き終えた時には…ガタンッと立ち上がり、人を呼ぶも省き…陛下自らが大声で「すぐに宰相を呼べっ」と部屋の外の人間に指示を出した。そして私に、


「お前は何か手を打ってあるのか!」と詰め寄られたので


「すぐに後を追うよう手配は致しましたっ」と、そう答えたが…父上は「チッ!」と舌打ちをし、再び声を上げる


「すぐさま各所に検問を!騎士団との連携を急げっ」


父親の普段にはないその様子に、私の鼓動は早鐘のように早く、大きな音で鳴り響く…。


この場に来るまでに予想が出来なかった訳ではない…まずい事になったと急いで報告に来た。頭ではわかっていたのに…


目の前の父の姿が全てを物語り…私の不安が現実のものとなった今、互いの焦りと緊迫が伝播する…。


何故なら…

我々は知っているから…あの男の、優秀さも…恐ろしさも…そして、決して敵対してはいけないことも…



とても綺麗な笑顔で、「よい午後をっ」…そう言って去っていったあの男の顔が、私の記憶の中の恐怖を思い起こさせた時、"ブルッ"と身体が震え…背中に嫌な汗が伝う感覚がした…。


思わずっ…反射的に私は立ち上がり父に提案をする。


「彼らには尾行を付けております。ですので、使者を通じて城に呼び、妹のアリーシア嬢を説得しましょう。

彼も、妹の言葉になら耳を傾けるでしょう。

学園にて、私は少なからずアリーシア嬢と交流を続けおりましたし、個人的なやり取りもございますので、彼女はきっと力になってくれるはずです!」


私が、情に厚く流されやすいであろう…これまでのアリーシアを思い出し、穏便な解決への道筋を頭で組み立てていると…


「お前が使った人間が優秀な事を願おう…」


私の打開策を聞いた父が、ため息混じりにそう言ったので…思わず反論してしまった。


「すぐに使える人間数人に指示を出しましたし、彼ら対象者は女性を含む四人で行動しているのですから…

さすがに…見失うという事はないでしょう…


きっと監視を続けているはずです、すぐに使者を立て連絡をとりましょう!」


そう私が息巻いた時…

側近により対象者を見失ったという報告が届けられたのであった……。










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