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96.


 いつもにこやか爽やか王子と麗しの留学生…


身分・性格・顔面偏差値…そのいずれもトップクラスである男子学生二人が、物憂げに佇む姿…


そしてそのかたわらでオロオロしている美女二名プラス静かに傍観している王子の側近一名…


ラシュカールの発言の意味を、正しく汲み取ったキャルム王子が若干の焦りを見せた時……


熱のこもった視線の女生徒達や、何事かと興味本意の視線を投げる生徒達をかき分け…声を上げながら聖女アルヴィナがやってきた。



「ちょっと貴女キャルム様と何をしてらっしゃるの」


肩で風をきる勢いでアリーシア達の所までやってくると、アリーシアを睨みつけて口撃を始めた。


「聞きましてよっ!今朝レミルトン様が貴女の忘れ物を届けにいらしたのですってね…

フンッ、勘違いしない事ね…レミントン様は聖女であるわたくしに会いに来たのっ!全く…王子のみならず、レミントン様にまで触手を伸ばすだなんてっ!

隣国に来てまで男漁り?…なんて品が無いのかしら、高位貴族としての自覚が足りないのでは無くて?

あぁ…貴女魔法も使えないそうね、フフッ無い無いづくしじゃない。爵位が高くても惨めなものね。


ひきかえ…わたくしは同じ公爵家でも聖女であり、

唯一無二の至高なる存在なのっ!この国だけなく各国から求められる存在なのよ!オーッホッホッホッ!」


悦に入ったアルヴィナは、途中キャルムから「やめないかっ」と止められるも、演説するかのごとく周囲の生徒達にも聞かせるべく声量を上げ、熱量高く興奮していた。


チラリとアリーシアの方を見ると、ラシュカールがアリーシアと向かい合う様な形で、自分とアリーシアの間に入っていた。


どんな顔をしているか見てやろうと「ちょっとどきなさい」とラシュカールの肩に手が触れる瞬間……


「触るな…」


自分に振り向きもせず、そう言い捨てられたアルヴィナは…"ビクッ"と動きが止まり…ラシュカールに対する怒りよりも先に恐怖を感じた。


慌てて手を引っ込めたアルヴィナは自分の手を確認した…。手を切り落とされたかと錯覚してしまうほどの恐怖…


先程まで興奮し上気していた頬は色を失い、文字通り血の気が引き…硬直しているのに手の震えが止まらない。己の意思とは関係なく涙が込み上がってくる…


キャルムの側近は咄嗟にキャルムを庇い、その行動で我に返ったキャルムがラシュカールに声を掛けようと"ゴクリ"と喉を鳴らす……


と、その時。


「ラシュカール様…大丈夫ですか…?」


ラシュカールによって両耳を塞がれていたアリーシアが、心配そうにラシュカールを見上げ声をかけた。


そして自分の耳を塞いでいるラシュカールの手に片手を添え…


「わたくしは大丈夫です。ラシュカール様こそ指先までこんなに冷たくなってしまって…」


そう言ってアリーシアはラシュカールの両手を自分の手で温める様に包み込んだまま小さな声で「ありがとうございます」と呟いた。


ラシュカールの殺気が霧散する…


アルヴィナ達はその場へとへたり込み、キャルムとその側近が警戒を解くと…ラシュカールは目の前のアリーシアをオリビアへと託し、アルヴィナ達の前に立ち、そして立ち上がらせようと手を差し伸べた。


しかしその手を取れないアルヴィナを見下ろし


「おや…聖女様に嫌われてしまいましたか…」


と、さも残念と言わんばかりに飄々(ひょうひょう)と言ってのけ、

更に…


「よい機会なのでお伝えしておきますが…アリーシア様は我が国の王家と肩を並べると言っても決して過言ではないあのセイリオス公爵家のご令嬢であり…

ご両親である公爵様ご夫妻…特にお父上の公爵様、並びにお二人のお兄様方に…それはそれは深い愛情を注がれております。屋敷の使用人達にしても然りです。


そして何より…両陛下を筆頭に王家の皆様方までもアリーシア様をとても大事になさっておいでです。

三人の殿下方に至っては…王太子の座よりも、アリーシア様の婚約者の座を奪い合っているのですから…私めとしましても恋敵こいがたきが強敵過ぎて、四苦八苦しているところなのです。


で、ありますので…あなた様は何をもって、そしてどの様な根拠がおありで、我が国の宝であるアリーシア・セイリオス公爵令嬢をこの様な公衆の面前でけなし…冒涜されたのか理由をお答えいただきますでしょうか?」



先程殺気を放っていた時とは打って変わり、丁寧な口調で表情も穏やかなはずなのに…


その場にいる誰一人動く事は出来なかった。


そんなラシュカールの背後で、アリーシアとオリビアが繋いだ手にお互いの力がこもった時…



「 …な…何よ…わたくしに対して…よくもっ… 」


アルヴィナは怒りと恐怖が入り混じりつつも、そう声をしぼり出したのであった…。










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