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92.レミントンの憂い…


アリーシア達は、修道士やシスターではなく、責任者であるアロイシクゥレフ・レミントン司祭自らが、学生である自分達の案内をしてくれると言う事に驚きつつ改めてそれぞれが挨拶と自己紹介をした。


ラシュカールは…高位貴族といえども他国の、しかも学生の自分達の案内をこの高名な司祭が何故?と何か情報が漏れたか、裏があるのでは?と身構えた…。


そのわずかな警戒を感じ取ったのか、レミントンは穏やかな笑みを浮かべ…


「高位貴族の方達に失礼があってはいけませんからね、司祭である私に話が回ってきたのですよ。

あぁ誤解なき様に…私も事務仕事から離れられるので、皆様のお時間許す限りしっかりとご案内させていただくつもりなのでどうか気にされないでくださいね。」


では参りましょうか、と物腰柔らかくレミントンに促され大聖堂の中を見せてもらい…一通り見て周り、休憩の為レミントンの部屋に通された。



レミントンの話は本などで調べた事と大差なく、

フェンリルと妖精達による国の成り立ちから今の現状が伝えられた。"何かご質問は?"と言うレミントンに…アリーシアは臆せず聞いてみた。


「こちらのヴァナルガンドでは黒が不吉とされ忌み嫌われているとの事ですが…それは何故かお聞きしても?」


「なるほど、他国の方には理解し難いでしょうね…

遥か昔、聖域に棲まう神獣フェンリル様によりこの国は興され発展して来たと話しましたが、実は…


古い言い伝えには…原初の神獣様は黒いフェンリルであったとも伝えられているのです…穢れを祓うはずのその神獣は穢れを纏い黒い姿となり…森の聖力を奪い尽くさんとした…見かねた神が新たな神獣を使わし穢れを祓い、森を取り戻し妖精達と豊かにしたと…。

しかし神獣フェンリル様の存在自体が伝説であるので、あくまでも言い伝えであり…長い年月の中で黒を不吉であくなるものという考え方だけが根強く残ってしまい今に至っている訳なのです…。」


「シリウス……」


話を聞き肩を落とすアリーシアの手を、隣に座るオリビアが優しく包んで慰めた…。


「妖精達が激減し恩恵も減っているとキャルム殿下にお聞きしたのですが…神殿や教会の方達は何が理由だとお考えですか?」


ラシュカールがストレートに質問すると、


「文明や技術が発達して…私達は妖精達に感謝する事を忘れていったのです。

数年前にもこの国の王子が…この事はあなた方もご存知の事と思いますが、大変な過ちを犯しました。


私としましては人々の信仰心…と言いますより感謝の心を持って妖精達と共存出来る環境を取り戻したいのですが…それでは遅いと考える方達ばかりなのです…。

現に妖精達は姿を消してしまったこの国では難しくなってしまいました……

しかし神も見放してはいなかったのです、有り難い事に聖女様が誕生されましたので、これからはこの国も良い方に向かっていくと信じております……」


「あの方にその様な大義が務まると?いえ…横から割り込んでしまい申し訳ございません。他国のわたくしが口を出すべき事ではございませんでした。」


オリビアが思わず口にした皮肉まじりの疑問に対して、困惑…とも思える様な表情のレミントンは


「そうでしたね、貴女方は聖女アルヴィナと同学年…

彼女に関する噂でも耳にしましたか?

まだお若いですが、大司教様が認められているのです…私達は見守りお支えする事しか出来ないのです。」


そう諦め…いや悲しそうに笑顔を作るレミントンを見たアリーシアは、レミントンの先程聞いた妖精に対する考え方もそうだが…まだ敵か味方かわからない段階ではあるものの何故かとても惹かれるものを感じた…なので無意識に声をかけてしまったのだった…


「司祭様、貴方様ならば妖精達と助け合い共存し合う…在るべき姿にこの国を導く事が出来ると思います。

貴方様のお心は必ずや妖精達に届き、そして思いも通じる事でしょう…ご自分を信じてください。」


そう静かに言葉を伝えながらレミントンの側へいき、肩に手を置きアリーシアは微笑んだ…。


一見すると、たかが女学生が初対面の高名な司祭に一体何を偉そうに…となるところなのだが…その場にいる誰もが、レミントン本人でさえも素直に受け入れた…


何故ならアリーシアからは聖力が溢れ、キラキラと光に包まれながら慈愛に満ちた笑顔で話しかけているのだ…


アリーシア慣れしているラシュカールやオリビアでさえその神聖さに心が震えた…で、あるからして…直接対峙したレミントンに至っては、驚きながらも自然と胸で手を組み、込み上げてくる涙と感情が"女神様…"という言葉とともにあふれでてしまっていた…。




ステンドガラスも祭壇もないはずのレミントンの私室がこの大聖堂の中で一番神聖な場所となった瞬間なのであった…。





こちらヴァナルガンドでは

妖精や精霊を司る女神を信仰神と崇め、豊穣の女神と呼んでいます。神獣フェンリルはその女神の眷属とされ、同様に信仰の対象とされていると…そんな感じです。


他国でも信者を増やしたアリーシアです。

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