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89.(偽)聖女アルヴィナ


アリーシアの自室に転移してきたシリウスは、ソファーで眠っているアリーシアを見て胸を撫で下ろした…。


《あー!シリウス様だぁっ! シリウス様どうしたの?

ねーねーシリウス様聞いて聞いて! そうだっ、あのねひどいんだよー!》


〈待て待てお前達、静かにするんだアリーシアが目を覚ましてしまう…。〉


シリウスは風魔法でアリーシアを優しく抱き上げ、妖精達に指示をしてベッドへと寝かせた。


それから暫くしてエミリーが戻ってきたが、ベッドにいるアリーシアとその枕元で丸くなって眠るシリウスに気付き、静かに扉を閉めて自室に戻ってジェイソンにシリウスの事も含めた報告を飛ばしたのであった。


翌朝、昨日とは打って変わり元気に目の覚めたアリーシアは、辛い夢でなく…シリウスが夢に出て来たのだとエミリーに伝えていると…ベッドの中からシリウスがノソノソと顔を出したので再度ベッドに飛び込みシリウスを抱きしめ堪能しつつ英気を養った。


エミリーに支度を整えてもらいながら昨夜の報告をしてもらっていると、シリウスが…この国は聖獣や妖精信仰の国ではあるが、黒毛は厄災の象徴である為…自分は表立って動けない事を伝えた。


「あら!シリウスこっちに居てくれるの?そもそもシリウスは人間界に関与する事を良しとされていないのだから…私達で解決しなきゃ……。もし人間が妖精達に何らかの危害を加え今の状況に陥っているのならば、それは人間が…この国の人間が正し、そして過ちを悔い改めるべき事よ!」


〈ありがとうアリーシア…しかし人間は己の首を絞める事になろうとも目先の欲に取り憑かれる…。そういった人間は何をしでかすかわからない…くれぐれも気を付けて行動してほしい…。〉


「ええ、分かっているわ…でも私もシリウス達のおかげで沢山の魔法が使える様になっているし…妖精達の手掛かりさえ掴めれば…」


するとエミリーが、表向き教会と神殿に怪しい所はなかったが、深部には自分でも入り込めない様な場所があった事を明かした。それらは異常とも思えるほど魔法や魔道具で固く閉ざされており、城のセキュリティよりも複雑で侵入を諦めたとの事でその事を詫びてきた。


「エミリー!踏みとどまってくれてありがとう…。

無理はダメよ!一刻を争う事でも…急いては事を仕損じてしまうのだから、安全を第一に考えましょう!

大丈夫よ、ラシュカール様達と今度街の教会に行く約束をしているからその時に調べましょう。

学園へ行っている間、シリウスの事お願いね!」


そう言ってアリーシアは笑顔で部屋を出て行った…





そして学園の花壇で聖力を流し教室へと向かい、新しい友人達に昨日の事を心配されつつ…話をしていると、

そこへ聖女様のご友人Aがやって来て、聖女様に挨拶はしたのかと聞いてきたので…アリーシアが"いいえ?"と答えると、相手は今すぐに聖女様の所へ挨拶に行くようにと言ってきたので…


「ご親切にありがとうございます、しかし挨拶は昨日済んでおります。あらっ?そう言えばわたくしは名乗りましたが、聖女様からは…ご挨拶いただけませんでしたわね…でも、もうすぐ授業が始まりますので…

貴女様も教室が違うのであれば早くお戻りになられた方がよいのでは?」


アリーシアがそう必殺のキョトン顔で答えると、相手は何か言いた気に…アリーシアのすぐ近くの席に座った。


そう…彼女は同じクラスの令嬢であったのだ…

周囲はそのやり取りを見て、クスクス笑う者もいれば…ハラハラと心配する者もいた…


その日はこの様なやり取りが何度か繰り返された。


そして昼になり、アリーシアがオリビアや新しい友人達と食事をしていると、ついに聖女本人が姿を現した…


「貴女…わたくしに挨拶も来ず、数々の忠告を無視してくれたようね?その上わたくしからの昼食への誘いを断るだなんて……一体何を考えているのかしら?

たとえ公爵令嬢であれ正常な判断が出来ないだなんて…可哀想な方なのかしら?主にこちらが…」


そう言って、偽聖女アルヴィナは自分のこめかみを人差し指でトントンとするジェスチャーをしながらニタニタと笑いアリーシアをわかりやすく侮辱した。


オリビアが思わずガタンッと音を立て立ち上がったが、アリーシアがオリビアを優しく止めた。


昨日さくじつわたくしは貴女様に挨拶をいたしました。

貴女様の仰る忠告とやらには、きちんと返事をしておりますが…ご友人から伝言を聞いておられないのですか?わたくしは決して無視などいたしておりませんよ?

昼食についても…本日はこちらの方達とのお約束が先でしたので、日を改めて…とお伝えしたはずです。

そして、たとえなくともわたくしは公爵家の人間でございます。その上で学園のルールや時間、友人達との約束を守ったのですが…何かおかしいですか?正常ではないと仰るのであれば、どこが異常なのか教えて下さいますでしょうか?」(キョトン)


「あ…貴女ねぇ…何をとぼけた事をっ!」

「聖女様になんて事をっ」

「その様な屁理屈が通るとでも?」


聖女の取り巻きが騒ぐが…怒りを隠そうともしないアルヴィナが、自前の扇子を握りしめ怒鳴り始めた。


ただでさえ目立つ留学生のアリーシア…その上昨日の事も噂になっている上で始まった聖女達VS噂の留学生…

食堂にいる生徒達は、少なからず興味を持ち行方を見守っていたのであった…









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