84.妖精の粉と小さなシリウス
ラシュカールとオリビアの機転により、周囲から騒がれる事なく食堂へとやって来た三人は、他よりも少し離れた場所に席を取り座った…。
こちらの学園では給仕する人間がテーブルに付き、注文を聞き、食事を運んでくれるようなので…三人とも同じ物を頼み…運ばれて来た食事を前にようやく口を開く。
「アリーシア様…何があったのですか?…」
ラシュカールの問いに涙ぐむアリーシア…慌てたラシュカール何周囲を見て声をひそめる…
「アリーシア様、王子達と別れた後から視線を感じます。私どもの影とは別の人間のものなので…おそらく…王子か王女達の監視が付いているのだと思われます…。なので、学園内であっても言動にお気を付けください」
「心配をかけてしまってすみません…
先程の花壇に傷付いた妖精がいたので、私の力を流したのですが…間に合わず、消えてしまったのです。その為取り乱してしまって…」
「そうでしたか…アリーシア様の妖精達はなんと?」
「詳しい事は聞けていないのです…寮の部屋で聞いてみようと思います…。」
「そうですね、ここは…どこに誰の目や耳があるか…」
「こちらに来て初めての妖精だったのに…あんなに傷付いて…一体何が起こっているのかしら…」
「アリーシア様…急いては事を仕損じてしまいますわ…まずは食事をして、エミリーさんと合流しましょう…。
監視が付いているとなると…不敬ではありますが、殿下方の事もあまり信用しない方が良いのかもしれません」
無言で頷くアリーシア…
三人は食事を終え…生徒達の注目を集めながらも、初日に交流を持つ事なく寮へと向かう途中、図書館へと寄ってみる。
王子の説明では使用は自由で、歴史的資料も所蔵されているとの事であった…。それぞれ何冊かを借りて情報収集をする事にして寮の前で別れた。
王子の私室にてその報告を受けた王子は…
「別段変わった事はないか…まぁ初日ではあるし、この国の歴史に興味を持っただけでも良しとするか…引き続き頼むぞ、特にラシュカール ボールドウィン…奴は、第三王子の側近でもあり切れ者だ。あの柔らかな物腰に騙されぬ様にしなくてはな…お前達も油断するなよ?」
王女の私室…
「サリヴァハークの王子達を、意のままにしてると聞いていたから…どんな子かと思えば…取り越し苦労だったようね。まぁ賢そうではあったけれども、情に流されてキャルムに利用されるのがオチね!
どちらにせよ…聖なる秘密を聞き出すならば、協力者となるのが手っ取り早いようだから…些細な事も逐一報告なさいね!」
王子と王女の思惑がどの様な物かはわからないが…
小さな警戒心が芽生えたアリーシアは、妖精達の事だけが心配であった…。
寮の自室でエミリーに、王子達の事と花壇での事を報告をしているとジェイソンからの手紙を渡された…
アリーシアは慌ててシリウスにコンタクトをとる。
「シリウス!シリウス!私のシリウス!連絡が遅くなってごめんなさいっ!返事をしてちょうだい!」
〈もうっ!アリーシア!遅いよっ!どうせ浮かれて僕の事なんて忘れてたんでしょ?〉
「ああっ!シリウス…ごめんなさいっ!…
今小さい姿なのね?貴方を抱っこしてブラッシングしながら話をしたいわ…聞いて欲しい事が沢山あるの…」
アリーシアから話を聞いたシリウスは…
〈アリーシア…心配しないで、その妖精は少し休んでるだけだよ…きっと戻って来るから…〉
《シリウス様ー!でもね…その子羽もボロボロだったよ
そうそう、粉もなかった! 僕達の事にも気付かなかったし… そもそもここ気配がないんだよな〜》
「あなた達、それどう言う事?」
《あぁ…アリーシアは知らないかもね! 僕達にはアリーシアがいるからね〜! あのね、僕達元気だと妖精の粉を振りまくの! あのねあのねっ、魔法使う時とか…嬉しい時とか、楽しい時っ!》
「あっ!キラキラしてるのはその粉なの?」
〈そうだよアリーシア、ピクシーダストやフェアリーパウダー…光の粒子に視認出来るそれは、色んな呼ばれ方をしているけど…見る事が出来る人間は限られている。セオドアはそうだね、見えていたね…きっと幼い頃、瞳に妖精の粉がかかったのだろう…〉
「シリウス?私初めて聞いたわ!セオドアにも教えてあげればよかったのに…確か、妖精のイタズラとしか話してないでしょう?」
〈アリーシア…僕達の事に関する事で、知られてはいけない事もあるんだ…決して君達を信用していない訳ではなく…自ら話してはならない"定め事"…規則みたいなものがね…。ごめんね!
でも今は違うよ、アリーシアは特別になったから…
聞かれたら何でも話せる。だから怒らないで…?〉
「そうだったのね!シリウス…私があなたを怒るはずがないでしょう?私達はこの国について知らない事ばかりなの…あなた達の協力が必要なの!力を貸してね?
それと…毎晩お話ししましょうね……」
小さな姿になりアリーシアに甘えて話すシリウスの様子を覗き見たジェイソンは、自分の行動が間違っていなかったと安心し…
そして自分達も手紙ではなく直接声が聴きたいと…技術と能力の粋を結集させ、通信石なる物を作り出すのに時間はかからなかったのであった…。
ヴァナルガンドの王子と王女…
果たして二人の思惑は一致しているのか…別物か…
アリーシアはこの国で妖精達の存在を辿れるのか…
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