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83.花壇にて…


「殿下っ!頭をお上げくださいっ!

他国の私共わたくしどもに殿下自らが頭を下げるなどっっ!」


「いやっ!殿下ではないっ、確かに私はこの国を担っていく王族ではあるが…今は君達に隣国の友として頼んでいるのだ…頼む…この通りだ…」


慌てて王子を止めようとするアリーシア達の言葉も聞かず、かたくなに顔を上げようとしない王子を見てアリーシアが折れた…。


「分かりましたっ!殿下っ!殿下の仰る通り……友人として、私共わたくしどもに出来る事は協力いたしますので……」


「殿下…ではない………」


「!!…キ…キャルム王子」


「………………………………」


「!!!!   キャルム…様」(ボソッ)


「ありがとうっ!アリーシア嬢っ!頼りにしているよっ

君達も同じくよろしく頼むっ!」


顔を上げ、満面の笑みでそう言った王子に対し…アリーシア達の王子に対する印象は真っ二つに分かれた…


アリーシアは"まるでジュリアン様みたい…"と感じ、

オリビアは、わたくしにまでお声をかけてくださるなんて…と感動し二人は王子への警戒心が一気に薄らいだ…

しかし、ラシュカールだけは違った…。


穏やかな表情で王子の要望に応えてはいるが…内心では『しまった!やられた…』と唇を噛んでいた。

…先手を、しかもアリーシアが弱い所を打ってきた王子に対し油断ならないと警戒を強め、

同時に自国の王と王子達の顔、そしてセイリオス公爵家男性陣の圧が…国を離れているにも関わらず迫ってくるのを感じたのであった……。


そんなラシュカールの複雑な心境を読み取ったかの様に、それまで挨拶以外では、口を開こうとはしなかったこの国の王女、アンリエッテ ルシア ヴァナルガンドその人が質問をしてきた。


「貴方はアリーシアの…騎士ナイトなのかしら?それとも子守役?…婚約者ではないのよね?

まぁいいわ…アリーシア、そういう訳なのよろしくね。でも、こちらに滞在中はわたくしの事を姉だと思って頼ってくれていいわよ。

それじゃあわたくしはこれで。 キャルム、貴方も早く案内を終わらせてきなさい。」


そう言って王女は部屋を出て行ってしまった。


王子に学園内を案内され、その間も王子は生徒達から声をかけられるなどして、その人気振りを発揮していた。


中庭には手入れの行き届いた大きな花壇もあり、色とりどりの花達が生徒の目を楽しませている事が分かる…。


しかし、そこに妖精の姿は無かった。


アリーシアはその事を寂しく思いながらも…後で訪れようとそのまま通り過ぎようとしたが、アリーシアの耳元で声がした。


《アリーシア、傷付いた妖精がいるよ!花壇のとこっ》


この国にまでアリーシアについて来た妖精が慌てた様子でアリーシアに伝えてきた。


王子には疲れたのでベンチで少し休みたいと願い出て、その後の案内を断った…何かを感じ取ったラシュカールがすかさず、


「キャルム様、本日はありがとうございました。

後は食堂と寮だけのようですし…そちらで聞けば大丈夫だと思います。私達はこちらで少し休憩をとり…花を楽しんだ後寮へと向かいまので、こちらで失礼してもよろしいでしょうか?」


「そうか、まだ旅の疲れもあったのかもしれないな……私こそ詰め込み過ぎてしまってすまなかった。

学園の事は、おいおいでいい…ゆっくりと休んでくれ。それと例の件だが…気づく事があればなんでも報告してくれるか?頼んだぞ!」


そう言って心配そうにアリーシアを見て去って行った。

アリーシアは急いで花壇へと向かい、傷付いた妖精を探す…


「スピネル、ラピス、スフェーン、アンバー、みんな!さっき話していた妖精はどこにいるのっ!」


《アリーシア!こっち!この花の中にいた!》


アリーシアが花壇に入り、屈んで花を覗き込むと…そこには自分が知っている妖精の姿よりも…とても小さい妖精が花びらに包まれて、体を丸める様にしていた。

アリーシアはその傷付いた妖精に聖力を少しずつ流してみた…すると、顔を上げこちらを向いたが……


スーッと、消えてしまった…。"えっ?"とアリーシアが戸惑っていると…


《アリーシア…間に合わなかったみたいだ》


そう言われたアリーシアは思わず、"どこに消えてしまったの!どこへ行ったの!"と叫んでしまった。


…花壇へ入り込み声を上げる、見かけない顔の女生徒…


十分に目立ってしまう…

アリーシアの容姿だけでも視線を集めているのにこれは"まずい"と感じたラシュカールが、


「アリーシア様の見間違いですよ、この様な場所に子猫はいません。迷い込んでいたとしても驚いて逃げてしまったのでしょう…。さぁ食事に行きましょう!」


オリビアもラシュカールの機転に気付き、"子猫じゃなくて残念でしたねぇ"なんて言いながら、アリーシアの手を取って支えながら一緒に食堂へと向かった。






アリーシアについて来た妖精達は古株の子達で

アリーシアから名前をもらっています。


風 緑 スフェーン


火 赤 スピネル


水 青 ラピス


土 茶 アンバー


その色にちなんだ鉱石や宝石の名前です。



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