80.街でのトラブル
「泥棒だーー!!」
街中の広場で大声が響いた。その瞬間エミリーと護衛達が、すぐさまアリーシア達を庇う様に取り囲み…辺りを警戒する。
そんな中小さな影が近寄り、オリビアが持っていた小さなバッグを引ったくって走り去って…行こうとしたが、ラシュカールが腕を取りそれを阻止した。
「さっきの大声の主とは仲間なのか?こんな事しちゃダメだろ?大人しくお姉さんに返しなさい。」
「うっせー!この成金ボンボンのカッコつけ男め!この手を放せっ!」
「おっと、このまま警備隊に引き渡されたいのか?」
「ラシュカール様、わたくしなら大丈夫です。それにこんなに小さな子が…盗みを働くなんて…
ねぇ、坊や…これを何かの足しにしてちょうだい…」
「うるせー!ブスババア!余計なお世話なんだよっ!」
そう言って、その子供はラシュカールの手を振り解き…入り組んだ暗い路地の方へ逃げていってしまった。
口汚く罵声を浴びせられたオリビアは、驚きとショックで固まっていた…。
エミリーや護衛が無事を確認してくるが…自分の善行が拒否された上に、小さな子供に罵られたのだから無理はない…。
「オリビア様…大丈夫ですか?お怪我は?」
「あ…アリーシア様…一体何が?…」
「オリビア嬢、気にしない方がいい。あんな幼い子が盗みなど、意外と治安が悪いのだろうか?…
アリーシア様どうされました?あぁ驚かれましたよね」
「ラシュカール様…あの子大丈夫でしょうか?…」
「ええ、あの様子じゃ警備隊に捕まる事もないでしょうし…手慣れてる様子でしたから仲間もいるのでしょう」
「いえ…そうでは無くて…あの子、盗みを働くほど何かに困っていたのでしょうが…オリビア様の施しを拒否したでしょう?"自分は物乞いでは無い"というプライドかもしれませんが、ならば強行に及んだ原因は何だったのだろうかと気になりまして…」
「なるほど、しかし…ゲーム感覚で盗みを働いたり、世直し感覚だったりと…困窮からだけでは無い可能性もありますからね…しかし我々はまだこちらへ来たばかりですし、下手に介入すべきでは無い事も沢山あると思われます。
アリーシア様?我々は貴女の事が大好きで、とても大切に想っています。ですのでご要望とあれば極力叶えて差し上げたいと思っておりますが、危険や問題があると分かれば…貴女に嫌われてでもお止めしますので、その辺はご理解下さいね。」
「そうですわね…ラシュカール様の仰る通りだわ…
"余所者"ですものね、お兄様達にも決して目立つなと言われておりましたし…え?…ラシュカール様…今なんと…」
「フフフ、アリーシア様…さぁっ!気を取り直して街を観て回りましょう!お腹は空いておりませんか?
オリビア嬢も美味しい物を食べて、さっきの事は忘れてしまいましょう!」
"あっ"と声を掛ける間もなく歩き出したラシュカールの耳が赤くなっていたのを…エミリーとオリビアは見逃さなかった。
こうして小さなトラブルがあったが、アリーシア達は街を散策し…そろそろホテルへ向かおうとした時、街の中心部にある大きな教会の鐘の音が鳴り響いた。その音の大きさに驚いたアリーシア達は、思わず音のする方を見上げた…しかし街の人達は平然と露店の商品を片付けたり、灯りの準備をしていたりと慣れており…鐘の音は街の人達の暮らしに溶け込んで時を知らせていた。
そしてアリーシアは、先程引ったくりをしようとした子供が教会の中から出て来るのを見かけたのだが、しかし一瞬であったし、辺りも暗くなり始めていた為自信が持てなかった…。
闇が出来始めてる細い路地…そこへ走って行った子供の後ろ姿を見つめながら…何故か引っ掛かりを覚えつつも皆とホテルへと向かったのであった…。
頑張れ!ラスカル!もっとおすんだ!と思った方は
ぜひ高評価をっ( ˙꒳˙ )ノ




