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66.罪の行方…


「夫人、貴女は侯爵家に古くから伝わる…禁忌の秘密…"開けてはならない箱"の中身までは知らなかったのでしょう…先代の侯爵は貴女の人間性や本質を見抜いていた為、女性が爵位を継いでもおかしくはないのに…爵位を譲らなかった。

だから貴女は[災いもたらす箱]を比喩的な表現とは捉えず、これまで長い間、歴史のひだに埋もれさせていた侯爵家の秘密を、好奇心ではなく…明確な悪意を持って秘密を暴いてしまったのでしょう…。

先代がご存命なら免れていた事ですから悔やまれます。


内容は…古い古い、侯爵を名乗る前の話。貴女達が"悪しき魔女"と呼ぶ女性に関する事、そして魔物や人間を操る秘術などでしょうか?


貴女は野心家である侯爵を自分の計画に引き入れる事から始めましたね?利害の一致した貴女達は、まずは故意に澱みを広めスタンピードの発生を計画し、同時に人々と王家を幻惑により公爵家に不信感を持つよう煽動した。その計画は、公爵家に忍ばせたこの者や、そこにいる双子、リリー カーター達により水面下で徐々に広がっていく予定だった。しかし、何故かアリーシア嬢に近い人間達ほど幻術…いわゆる魅了の効きが悪かった為、貴女達はいにしえの魔女の事や、アリーシア嬢の事を、より深く探り調査を進めました。

公爵家の失脚のみならず、隣国ヴァナルガンドをも巻き込み手柄をあげようと欲張っていたようですからね…。完璧な計画でなければならなかった。



しかし遅々として進まない計画に、痺れを切らしたヴァナルガンドによって、催促という名の脅しをかけられ…こちらでの計画を悠長に待っていられなくなった貴女達は、アリーシア嬢の紫の瞳と属性がない事を逆手にとり…計画を強行すべく行動をおこしたのですよね?


しかしそれは最大の悪手あくしゅであったと…貴女達も身をもって気付いたはずだ。

これまで述べてきた通り、悪事も企みも全て明るみになった訳ですが、大人しくばくくなら良しとし、抵抗するようであれば容赦はしない。

こちらは王家の名に懸け、裏どりも証拠も揃えている。それを踏まえ…何か申し開きは…」


アデルバートの最後の言葉を聞かずして、侯爵達が一斉に声を上げた…。そんな中、証人で呼ばれたメイドだけが膝をつき胸の前で手を組んでこうべを垂れていた。


双子達は親が勝手にやった事だと無関係を主張し、

リリーは侯爵家に騙され利用されただけだとわめいた、

侯爵はそそのかされ、従っただけで…主犯は妻だと訴えた。


そしてその妻、侯爵夫人は…先程までの態度とは打って変わり、しおらしい様子でさめざめと涙を流し訴えた…が、その訴えの先は、アデルバートでも国王でもなく…セイリオス公爵家の当主であるアドルフにであった。


「アドルフ様…話を聞いてください…。夫はこう申しておりますが…どうかお耳を貸さないで下さいませ。この男はわたくしを裏切り、子を成しただけでは飽き足らず…侯爵家そのものを手中に収めんとして、わたくしの事をあざむき…長年秘匿されてきた侯爵家の秘密を利用して、隣国との取引の材料としたのです。

今ここにっ!夫の企てをお話します!全ての悪はこの男なのです!

わたくしは…爵位も継げぬ…ただの憐れな女なのでございます…。どうぞっ…どうぞご慈悲を…アドルフ様…」


「なっ!カミラッ貴様…よくもそんな事が…殊勝なふりをしおって、この女狐が!」


「おぉ、恐ろしい!犯罪者と成り下がった男がわたくしの名を呼び捨てるだなんて…こんな男に我が侯爵家の名を、けがされ…地に落とされ…今後、一体どうすれば…

アドルフ様…わたくしは今後の侯爵家の事や自分の事を考えると…不安で涙が止まりません…。どうぞセイリオス公爵家のお力添えを!」



カーテンの向こうで繰り広げられている、醜い言い争いを静かに聞いていたアリーシアは…夫人の狂気を感じていた。

何故なら…第一王子が王家の名に懸けてと証拠の存在を示したにも関わらず言い逃れをするのは、無意味なのである。本来なら、せいぜい大人しく自供をし、少しでも心象を良くするしか選択肢はない筈なのだが…

その上我が子の心配ではなく保身にばかり走っている。家門の心配をしたところで、存在すらも危ぶまれるだろうに…しかも何故それを自分の父親に訴えているのか…

"あの人は一体何を考えているの?"と、いぶかしんでいると…アドルフが口を開いた。


あわれだな…夫人、心配するな涙を流さずともよ…」


「アドルフ様っ!それではっわたくしの事を助けて下さるのですね?アドルフ様であればきっと力になって下さると信じておりました!わたくしもまた貴方様のお力となりましょう。この男の企て事を全て、白日の下に…」


「ちょっ!何自分だけ助かろうとしてるのよオバさん!散々人に命令しといて…大体隣国だなんだは知らないわよっ…ただ私は惑わしの粉を霧状にした魔法を使っていただけで、そもそも私はあの女の」 バッシーーン!


「リリー カーターよ、お前は先程陛下が仰った事を聞いていなかったのか?お前ごときがアリーシアをそのように呼ぶなど…許されんぞ!

なんなら処刑を待たずして、この場で貴様のそのよく動く口もろとも首を刎ねてやろうか…」


会場の騒動から我慢していたのであろうエドワードが、国王の言葉を大義名分とばかりにブチギレていた…。

その怒りと迫力は凄まじく…エドワードの魔法はその場の誰のものよりも早くリリーを傷付け、リリーの戦意を

奪い…間近にいた者達にもその効果は絶大であった。










話が通じない相手との会話が、意図しない方向に進んでいくのって…ちょっとした恐怖を感じます…。



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