61.束の間の休息
ウェスカー侯爵達が拘束され、束の間の安堵を感じていると…テディーやオリビア様達に謝罪をされた。
何度もあの二人の言い分に異を唱えようとしたが、周囲の人間に立ちはだかられ、何度も阻止されてしまっていたらしい。テディーは、自分が平民で絡まれてしまったせいだと責任を感じている様だったので…
「私は、どの様な場面でも…どんな場所に立たされていようと、これからも皆の事を大切な友人だと胸を張って言うわよ!
テディー…あなたはそうじゃないの?公爵家の私と一緒にいると騒動にばかり巻き込まれてしまうから、友達辞めたくなってしまった?」ション…
「アリー!ちがっそんな事思う訳ないだろっ!
ただ…俺、アリーに恩返しも出来てないのに、迷惑かけただけじゃなく…せっかくのデビュタントをこんなに大勢の前であんな目に遭わせてしまったから、申し訳なくて…。本当にごめん…あそこで平民の俺が庇っても、余計にアリーが非難されるんじゃないかと…」
「テディー、謝るのは私の方だわ。憎悪渦巻く貴族間の問題にあなたを巻き込んでしまったのだもの…だって、本来のあなたは平民である事に引け目なんて感じていないでしょう?なのにテディーのお母様が用意した服装を貶されたあなたに謝罪をさせてしまったわ…。
悔しかったでしょう…?けれどテディー、あなたが国王様を心配して声を上げてくれた時…私安心したの。
あの人が魔法を使ったのを感じたけど証明出来ずにどうしようって思った時にテディーが臆せずに発言しているのを見て、私の友人はすごいでしょう?って、他人の為に動く時…そこに身分は関係ないんだぞって、本当に誇らしく思ったの!とってもかっこよかったわ!
オリビア様達だって、何も出来ずにって謝って下さいましたけど…この件で私や公爵家を見る周囲の目が、例え変わったとしても…オリビア様、クレア様、ミア様達はきっと変わらずにいてくれると…わたくしの心強い存在であり、わたくしにとって皆様は何物にも代え難い存在なのです!」
私がお友達に感謝を伝えていると…
ジェイお兄様とアデルバート様が会場へ来られた様だ。
アデルバート様は陛下のお側でご報告をされ、ジェイお兄様は一直線に私の元へ……来る途中ウェスカー侯爵を風魔法で傷付けている!?間違いない…ジェイお兄様ったら怖いお顔で侯爵を睨んでいるもの…。
更に傷を負い呻き声をあげている侯爵を見ると、お医者様が側に居て手当をしている様だ。……えっ?あらっ?あのお医者様…エミリーに似ている…?いいえ、間違いなく私のエミリーだわ!エミリーったら医療の心得もあるなんてやっぱり凄いわ!
とアリーシアはエミリーの優秀さを改めて感心していたが…当のエミリーはアリーシアを罵った侯爵がどうしても許せず、医者が到着するまで一秒でも長く苦痛を与える為…すぐにバレる様な白衣を着るだけの簡単な変装で、侯爵の傷口に食堂から拝借してきた塩を塗り込んでいた…。猿轡を噛ませて声を上げれない様にした上で、ジェイソンがつけた新しい傷にも満遍なく塗り込んだ。同じ様にリリーの手首にも"手枷が擦れると痛いですからね〜"なんて言いながら塩を振りかけ、衛兵の目を盗み…心配するフリをしてしっかりと塗りこんでいた…。
アリーシア以外はその事に勿論気付いていた。
テディー達は"うわぁ…傷口に塩って初めて見た…エミリーさんのやる事エグ過ぎる…。"と引いていたが、
アリーシアの母キャサリンはキャッキャッと無邪気に笑いながら、会場のテーブルの上にあった香辛料の瓶を片手に、侯爵達に近付こうとしている所をアドルフとアルフレッドに止められていた…。
「アリー待たせてごめんね!ここに来るまでに報告を受けたけど…よく頑張ったね、あとは兄様達に任せてゆっくり休むんだ。僕達はこれから城へ行くけど…」
「皆の者よ、聞いてくれ。
此度は、この様な騒ぎとなり…デビュタントどころではなくなってしまった。後日王家主催により改めて舞踏会を開く故、仕切り直すとしよう。
それとこれは一番大事な事であるが…ウェスカー侯爵は決して許されん過ちを犯した。事のあらましはきちんと発表するが、セイリオス公爵家とアリーシア嬢はその悪事に巻き込まれてしまっただけであり、一点の曇りもないと、国王である私がそう判断を下す。よって皆もその様に心得よ!よいな?
アリーシア…心配をかけてすまなかったね。」
一国の国王様に…大勢の貴族の前でしかも名指しで、謝罪の言葉を口にさせてしまった…。お父様の事も家の事もお咎めなしと陛下直々に下されたので…安心した直後の名指しでの謝罪……や…もうどうしましょう…と頭がクラクラしたが、私は無言で頭を深く下げ…臣下の礼をとり切り抜けたのであった…。
それから学園の舞踏会はお開きとなった。そもそも私以外の人達は王妃様や国王様へのデビュタントの挨拶も済んでいたらしいので、後日王家のパーティーはダンスパーティーとなるらしい。
お兄様達と両親がお城へ行くと言うので、私も行くと譲らなかった。事の成り行きの最後を…この目で見届けたかったし、妖精達のことも報告せねばと思ったからだ。
テディーやオリビア様達も、シリウスの事などを既に知っているという事も考慮され、私に付いて行くと言う本人達の希望も通った。その気持ちを有り難く受け入れ…お城へと決戦の場を移すのであった……
昨日2件目の感想(一言)を頂き…
本当に私のこの作品に読者様がいてくれたのだと
実感致しました。その事がとても嬉しかったのです。
感想頂いたお二人には、更に好意的なお言葉で
"面白い"と書いて頂いておりました。
今後もお時間頂いたからには、面白かったと思って頂ける様に頑張りますので宜しくお願い致します。 雪原の白猫




