58.ウェスカー侯爵とアリーシアの受難
お立ち寄り頂きありがとうございます。
ここからまた話が動きますので、もう少し
お付き合い頂き…楽しんで頂けると嬉しいです。
「おっと、失礼…ん?君は知らない顔だな、服装からして平民か?どおりで…無礼な奴だ早く謝罪しないか!」
「すっすみません!お怪我はございませんか?」
「ハッこれだから平民は…お前は私が誰か知らないのか?高位貴族にぶつかっておいて、その程度の謝罪で済むと思っているのか?全く…学園の生徒とは言え許されんぞ!このっ卑しい平民風情がっ!」
「それ以上の暴言はおやめ下さいウェスカー侯爵様…」
「これはこれは…セイリオス家の、アリーシア嬢ではないですか!本日は欠席かと思っておりましたが…流石公爵家は待遇が違いますなぁ…王妃様よりも後に参加されても許されるとは……あながち噂にも真実が混じっているという事か。おや?心当たりがない様ですな?この会場でもチラホラ聞こえておりますぞ!まぁそれすら公爵家が握り潰すのでしょうなぁ?怖い怖い…
それで?公爵令嬢ともあろう方が、何故この様な下賤な平民を庇うのですかな?」
「その様な物言いはおやめ下さいと申し上げたはずですウェスカー侯爵様。ここにいる方達は、わたくしの大切な友人達なのです。理由はそれで十分かと思いますが?」
「ほぅ、アリーシア嬢は身分差など関係なくご友人を大切になさると?それは是非うちの子達とも懇意にして欲しいものですな!ここに呼んでも?」
「申し訳ございませんが、わたくしはこれより両陛下へご挨拶に行かねばなりませんので後程…もしくは学園にてウェスカーご兄妹へご挨拶致しますわ…確か第三王子殿下と同学年で…双子でいらっしゃいましたわよね?」
「いやいや、こちらの顔合わせぐらいすぐに済みますぞ、両陛下への挨拶も今更なのだから…少しぐらい構わんでしょう?」
何かおかしい…この方先程からとても挑発的に話されているし、両陛下へのご挨拶よりも自分の子との顔合わせを優先しろだなんて…テディーやオリビア様達もその場を動かない様に牽制されている?
いつの間に私達は囲まれていたの?誰か…と周りを見渡したがウェスカー侯爵が双子を紹介し始めた…。
「お話するのは初めてですわね、お噂では爵位を傘に取り巻きを増やし、気に食わない者は排除されるそうですわね?」
「ああ、俺も聞いたぞ、皆も聞いてくれっ!
魅了だったか…怪しげな術を使い王子達を惑わしているとな!お前の兄達も小賢しく第一王子に取り入っていると聞く。公爵家は王家を取り込むつもりなのだ!」
ダメッそれはいけないっ!
挨拶どころか無礼な物言いも看過出来るものでは無いが…公爵家と王家を口に出してしまっては…
「お二人は何を仰っているのですか?その様な事を軽々しく口にするとは…不敬では済まされませんよ!」
嫌な感じを肌で感じつつ私が言い返すと…そこへ意外な人物が現れた。
「アリーシア様、認めたく無いのはわかりますが…見苦しいですわよ?貴女の本性は今日ここで暴かれるの、」
「貴女…もしかして…カーター様っ?今までどうされてたのです!ご無事だったのですね!」
「ちょっと!心配してるフリはやめてちょうだい!
そうやってまたいい子ぶるのね?私はねぇ…あんたのせいで身を隠す羽目になったのよっ!
まぁ…それも悪い事ばかりではなかったわ、あんたの本性とか真実を知る事が出来たし…他にも色々と…フフ
今日は私、お世話になっているウェスカー侯爵家の為に証言をしに来たの。これで貴女もおしまいよ!」
カーター様は以前の様に私にだけ聞こえる様に話す…。
ウェスカー侯爵が何か企んでいる様だ…一体何故?
それに…周りにいる皆様の様子がおかしいわ…
お父様達に知らせなければいけないのに、どうしたら…
「なんと!これは由々しき事態である、すぐに国王陛下に報告しなければっ!さぁ、ついてきなさい!」
ウェスカー侯爵は有無を言わせず、私達を国王陛下の御前に連れて行こうと、周囲の人達と結託している。
ここは下手に刺激せず、陛下に聞いて頂いた方がいいのかもしれない…そう考えた私は家族を探しながら国王様の元へ連れていかれた。
「陛下っ、国王陛下に申し上げます!この者、王家に対する謀反を企てております故、何卒厳正なる判断を!」
「何事だウェスカー侯爵、それにアリーシアもおるではないか、謀反とは穏やかではないが…侯爵、その方…確たる証拠があるのだろうな?」
陛下は私の方を見て頷いてらっしゃる…何かお考えがあるのだろう、ひとまず出方を探るという事かしら?
私が冷静にそう判断した時、後方から声が上がった。
「ウェスカー侯爵、うちの娘に用があるなら私を通せば良かろう?何故その様な暴挙に出たのだ、小癪な手を使い我々の足止めまでして…何が目的だっ!理由如何ではただでは済まないと覚悟の上であろうな?」
「セイリオス公爵よ黙っておれ、陛下へ上申中であるぞ………おいっ!何故貴殿の息子がそこにいるのだ………貴様は…瀕死であったのでは…」
お父様や国王様に聞こえたかはわからないが、小声になった最後の言葉を私ははっきりと聞いた。
お兄様がこの場にいる事を驚いていた。しかも危篤だった事は、討伐隊の方達以外は知らない筈なのだが…
「まっ…まぁよい…。陛下、この者は怪しい術を使い、王子を誑かし…学園内でも生徒達を惑わせ公爵家を支持させておるのです。このまま力を公爵家に集めてはなりませんぞ!よいですか…よくお聞き下さい、"私の進言は正しき正義のものであり真実なのです!"我が息子達も証言致します。それに被害者本人も証人として連れてきております。」
ウェスカー侯爵は…王子を侮辱している事に気付いているのかしら?そもそもこの様に信憑性のない事を断言して陛下に進言なさるだなんて…やっぱりおかしい…
アリーシアは今の状況がとても奇妙なものであると感じていたが、国王と家族を信じ…侯爵の言い分を冷静に見て判断しているのであった…
アリーシアは兄の事を乗り越え…
多少の事には動じない精神を手に入れつつ
アリーシアの怒濤の一日はまだ続きます…




