51.賢王 フレディ サリヴァン(国王)
「あの……神獣様…俺いやっ、私にアリーの周りに光が見えるのも…先程仰った妖精達なのでしょうか?私は幼い頃から魔法の残滓の様な物が見える時があって…これまで不思議だったのです…
あと…アリーは否定するけど、妹の病気も治して貰ったと思っています…。」
〈うーん…それは少し面倒くさ…複雑なんだよね…
この世の四大元素を魔力によって変換するのが魔法であり、四大精霊は聖力によるものだから…根本は繋がっているけど別物として考えられているんだ。
どちらも自然界とは密接な関係であり源とされている、それを感じる事が出来る君は特別なんだろうね?
大方君が小さい時に、妖精となんかあったんじゃない?妖精達は基本自由で変化を求める…平たく言うとイタズラ好きって事。
それと…アリーシアの持つ力については…そもそも瞳が紫なのも…まぁこの事に関しては…、これ以上話せないかな…。おいおい分かる事だから気にしないで!〉
そう言われて余計気になったアリーシア、確かに家族で自分だけ瞳の色が違う。母親は自分の方の隔世遺伝だと言っていたし、何やら妖精達に関する事にも生家に何かしら秘密がありそうだった…
しかし、シリウスが話せないと言う事であれば諦めるしかないだろうと自分を納得させた。
対してセオドアは"?"だった。妖精のイタズラって何?とこれまでの謎が解けたのか、逆に深まったのか…更に頭を悩ませてしまっていた。
しかしシリウスの話から推測すると…聖力を吸い上げた草花が特別な力を持ち、痛み止め等の効果が出るのなら…その聖力を出しているアリーシアにもやはり治癒の効果に似た力があるのではないかという考えに至った。
とにかくここで聞いた話は…内容を考えても、自分達で判断する事ではない為、偉い人達に任せる事にしようと…一旦お開きになった。
オリビア達にはデビュタントの事を念を押されつつ…。
皆は土産を手に、公爵家の用意した馬車で各々の家へと帰って行った…。アリーシアは急な寂しさを覚えたが、腕の中にはシリウスがいた。
与えられた情報の内容も量も多く、処理が追いついていないが…取り敢えずシリウスと遊ぼう!と気を取り直したアリーシアは…デビュタントの事は後回しにする気満々で…意識の隅にそっと追いやったのであった…。
自室に戻り、メイド達にシリウスのお風呂や長い毛を揃えて貰った後、自ら鼻歌混じりにブラッシングをし、
ぬいぐるみ用のケープを着せてあげた。
途中まではシリウスも楽しそうにアリーシアの好きにさせていたが…レースのボンネットを頭に巻かれ、パールのブレスレットを首に巻かれそうになった時、流石に止めた。
「可愛いのに…」と着せ替えハイになっていたアリーシアがしょんぼりと…それはそれは寂しそうにするので…「頭以外なら…」とシリウスは妥協してしまった…。
言質がとれたアリーシアは、フリフリを着たシリウスを嬉しそうに抱っこして屋敷内を闊歩し、屋敷の人間達に可愛いシリウス紹介して回った。
神に限りなく近い存在である神獣は、
膨大な知識と、全てを見通す術をその身に宿し…
森羅万象に通じ、悠久の時を悟り、生きてきた……。
そのシリウスは…フリフリを纏い(わされ)…
キラキラを首に巻き(かれ)…遠い目をしていた…。
シリウスが衝撃的な初体験により….新たな悟りを開いている頃…王城でも真剣な目をした王子達が、国王への緊急かつ重要な報告会議を開いていた。
国王、宰相(アリーシアの父アドルフ)、三人の王子、アルフレッド、(アリーシアの上の兄)内容の機密性を考え、まずはこのメンバーでの会議とした。そこへ、
エミリーから妖精と魔女に関する新しい報告を受けたジェイソンが、慌てて登城し会議に参加する事となった。
それぞれからの話を全て聞いた国王は、長く息を吐き出し…しばらく神妙な面持ちで考え込み、口を開いた。
「アドルフ…私が君の屋敷に足を運ぼうと思うから調整を頼む。神獣様を連れたアリーシアを呼び出す訳にもいかんだろ?それに君の奥方の事もある。
それとエドワードとジュリアンは、直ちに貴族会議で先程の事を取り上げ、実現可能かの検証実験を同時進行で行ってくれ。ジェイソン、力を貸してくれるか?
アデルバートとアルフレッド、の二人は書庫の禁書閲覧許可を出すから、この件に関する事がどの様に記され、どこまで伝え残されているかを調べるんだ。
よいか?事の重大さに比べ人数は少ないが、君達は漏洩の心配も無く、心から信頼できると信じている。
神獣様の事、食糧の生産性にしても…隣国がきな臭い動きをしている今、嗅ぎ付けられる訳にはいかない…。
その事も念頭に入れ、皆!頼んだぞっ」
国王の激励の合図で、皆それぞれの役割を果たすべく速やかに行動した。そんな中とりわけジェイソンは頑張って動いた…アリーシアの助言も交え、土壌や肥料の改良、魔道具の開発に力を注いだ。こちらを軌道に乗せ、自分も禁書とされる書物を読みたかったからだ…。
自分の欲望に忠実なジェイソンが出した本気は素晴らしく、自らが土魔法を使えるのもあったが、土魔法の新たな可能性を導き、開発した魔道具により農業そのものの効率化も進んだ。
そんな貢献しまくったジェイソンを見た国王は、その原動力が禁書を見たい欲だと知り、王宮のみならず王立図書館の禁書閲覧の許可証をジェイソンに渡した。
アリーシアの母キャサリンとエミリー達の様に名前で呼び合う事はなかったが、ジェイソンは自分の欲する許可証で取引を持ち掛ける事をせず、すんなり授けてくれた国王の事が大好きになり、これまで以上に自分の能力で国に貢献する事になった。
そんな二人を見た王子達は"流石父上だ…"とジェイソンの扱い方に関心したのであった…。
有り難い事に、ブックマークの数やアクセス数も徐々に増えており、改めて読んで頂いているのだという実感が湧いてきております。
最初は、目に止まる事もないよね…ぐらいの自己満のみの投稿であったので、とてもとても嬉しいです。
完結させる事は勿論、読んで下さった方達に少しでも
"面白かった"と思って頂けるよう頑張ります。
引き続きこの作品にお立ち寄り頂ける事を願ってます。




