50.昔々のお話
50話まできました。
本当に読んで下さる方達のおかげです。
興味を持って頂き、読んで頂き、そしてここまで読み進めて頂き、本当にありがとうございます。
完結まではまだ先になりそうですが、変わらずお付き合い頂けるよう頑張ります( ˙꒳˙ )ノ
「アリーっ!キラキラしてる!アリーも、花も草も」
セオドアのその一言に皆が注目するが、やはり視覚的なものは何も見えない。しかし心なしか花壇の草花が生き生きとしている様にも見える…。いや、ここは公爵家自慢の庭であるからして、なんら不思議な事でもないのだが…はっきりとした判断がつかずにいると、シリウスがアリーシアの抱っこ紐から飛び出してきた。
〈アリーシア、妖精達が喜んでるよ。見えるかい?〉
「ええっ!妖精?シリウス、妖精達がいるの?」
〈いるよっ、君の周りにも花壇の花にも集まってる!〉
「セオドアさんが言った通りだわ…アリーシア様は妖精達にまで慕われていらっしゃるのですね…そもそもこの国で妖精がいるなんて…わたくし初めて聞きました。」
「わたくしは領地の鍛治職人に、小さい頃教えてもらった事があります。かまどには火の妖精や精霊がいて…気紛れに手伝ってくれる時もあると、そういう時は業物が出来るんだと言っていました。」
「私も絵本で…その絵本はこの国の物ではなかったので、父のお土産だったか…買い付けた物だったのかは分かりませんが…妖精の国のお姫様の話で、小さな妖精に羽根があって可愛いらしい絵が描かれてました。」
〈そうだね、その可愛い姿であってるよ。
そしてこの子達、元はお城の庭園にいたみたいだけど、昔アリーシアがお城に来た時に付いて来たんだって!
それからはずっとアリーシアの側にいるみたい。
あと、この辺の草花…僅かだけど聖力が感じられるからもしかしたら君達が探していた魔物除けの効果があるかもしれない。…ところで…気になってたんだけど、なんで君達はそんな草を探してたんだい?この辺に魔物は出ないだろ?〉
「シリウス、私もとても気になる事があるのだけどいいかしら?あなた…あの大きな姿の時と話し方が違うのは何か理由があるのかしら?勿論どちらのあなたも好きなのだけれど…気になってしまって…」
〈……だって、ずっとあの偉そうな口調じゃ…アリーシアに甘えられないでしょ?〉
「なんて事っ!そんな事を気にしていたの?あぁ…確かに大きくて風格あるあなたには、自然と敬ってしまう迫力があるわ…でも威厳があって素敵だと思うし、でもでも私の腕の中で甘えるあなたも、たまらなく可愛いから…あなたが無理をしていないのなら、私はどちらも全力で愛情を注ぐわよ!」
ウフフ、アハハとキャッキャッしている一人と一匹を除いて…セオドア達は"え?気になるのそこなの?"とか"てか神獣様って意外とあざとい…?"と口には出さず心の中で思っていた…。
〈フフ、アリーシアと戯れ合うのも楽しいけど、そろそろ皆の疑問に少しだけ答えてあげようか?
それと僕は"あざとい"んじゃなくて、純粋にアリーシアに甘えたいだけだからね。〉
そう…シリウスは知ろうと思えばなんでも分かる、要するに心の声でさえ聞く事が出来るのだ。
その事を身を持って知ったセオドア達は改めて神獣に対して畏怖の念を抱いた。
シリウス曰く、普通は根から聖力を吸い上げるが…アリーシアから漏れ出る聖力を浴びて、同じ事が起きているらしい。その草花は悪しきものを祓う力があると言う…
アリーシア達は魔物除けの草を探していた経緯をシリウスに説明したが、それらに魅了などの効力はないと言われた。
「振り出しに戻ってしまったわね…でもお兄様は幻覚を見せたりする様な効果もあると仰っていたわ…」
〈アリー、遥か昔の話だけど…古の魔女の話は知ってる?もしかしたら古い文献には残ってるかもしれないけど…それが真実だとは限らない…。
彼女はね精霊達の"良き隣人"だったんだ…遥か昔にはこの国にも妖精達が沢山いたんだよ、そして彼女達は互いに信用し合い…助け合う関係で、その力は国に大きく貢献していた筈なのに…その力を妬み、恐れた人間達に悪しき魔女として糾弾されたんだ…。
その際宗教的な集団が結束され、民衆を洗脳し、煽動する為に…ある植物が使われたんだ。
精霊達は優しくて良き隣人だった彼女が、そんな目に遭わされた事で、彼女を追いやった人間達に怒り、力を貸さなくなってしまった。
結果…その怪しげな宗教団体もなくなり妖精達もこの国からいなくなってしまったんだ…。
人々を洗脳する事に用いられたその植物を…時の王様は事態を収束すべく全て焼き払ったんだけど…その植物はキノコだったから…胞子が飛んで、人知れずどこかに根を下ろしていたのかもしれない…。
これは僕の想像だから、もしかしたらそうかもしれないし、そうでないかもしれない…
それと…これも想像だけど、そのキノコの成分や聖力を掛け合わせると…濃度によって誤差はあるだろうけど…多分君達が探してる様な、精神に干渉する様な薬になると思うよ。〉
と…シリウスはこの国の歴史に関わる様な…しかも秘匿されていると思われる逸話を…なんでもない事の様に、アリーシア達に話して聞かせたのであった……。
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