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46.シリウスの願い


部屋に入ると…先程と変わらぬメンバーが、先程とは変わって緊張ほぐれた様子で歓談していた。

王子達に挨拶をし先程の失態を詫びる…。思い出したのか笑いながら"気にするな"と優しく傷をえぐられた。…まだ癒えていない生傷なのだ。

気を取り直して、父から家に帰り着いてからの事を聞き、私も夢で知り得た事をその場の皆様に伝えた。

私や昨日シリウスが顕現した姿を見ていたメンバーは驚きつつも納得していたが、王子達はそうでなかった…半信半疑とまではいかないが、なんせ目の前にいるのは…私に抱かれた可愛い…毛玉なのだから。このモフモフの毛が堪らないのに…と断腸の思いではあるが、早急に毛を刈って、ブラシで整えなければと心中焦っていると、〈アリーシア大丈夫だよ〉とシリウスが夢の中と同じ大きさにり、気品ある長毛犬の様にその存在感を知らしめたのだ。


第一王子であるアデルバート様を始めその場の全員が、シリウスの前で膝をつき頭を下げた。


「貴方様は神獣"フェンリル"様でお間違えないでしょうか?我らの前にそのお姿を顕現頂きました事、誠に有り難き幸せでございます。わたくしアデルバート サリヴァンが国王の名代にて馳せ参じました。この矮小わいしょうなる我ら人間にどうぞ御言葉を賜りたく存じます。」


〈うむ…その心意気やよしとしよう。昨日その者達と、アリーシアには伝えたが、お主達は初めてであるからな、なかなか信じ難き事であろう。我らの生は永く悠久である…故に正しく伝わっておらぬだろう事もわかっておるのだ…その上我らが姿を現す事はほとんどないのだからな…我はお主らの声が聞こえ、あらゆる事を可能にする力を持っておる…自然界、動物界、妖精界、人間界…あらゆる世界の真理、ことわりこれらに影響を及ぼしてしまうからだ。聖地から出る事なく神界と繋がりこの世の流れを見届け、必要とあらば神とこの世界を繋ぐ…その様な存在なので聖獣、または神獣と呼ばれておるのだ。まぁどちらでもよいし…我はシリウスだ。お主らにもこの名を呼ばせてやろう。アリーシアにもらった名だ、良い名であろう?


我の力はアリーシアのものだが力にあらず…

我と同じく大事にせよ…フッこれは釘を刺さずともよさそうであるな、あとは…そうさな…アリーシアと共にそっとしておいて欲しい…我の悠久の時の中、ほんの一瞬の"この時を"アリーシアと共にゆっくりと過ごす事が我の願いである。どうだ?我の願い叶えてくれるか?〉


「ーシリウス様の御心のままにー」


〈それとアドルフよ…この場には結界を張っておる故会話も漏れる心配はない…しかしな…この屋敷の敷地内にネズミがおるようだぞ?なに、この礼は肉でよいでな〉


そう言うとシリウスは小さな毛玉に戻ってアリーシアの膝の上に丸くなった。この可愛さと先程のおごそかなシリウスが結びつかない…夢の中でも大きくなってはいたが可愛いままだったのに…自分はとんでもない事をしたのではないかと、今更ながら震えてきた。父や兄達に助けを求めようにも、伝説の神獣様との邂逅かいこうに皆、夢現ゆめうつつとなっている…。


"エミリー"なら、と閃いたところでエミリーが小さく切ったお肉を持って来てくれた。生肉だけでなく…茹でたり火を通したり軽く味付けしてる様なものまで用意してくれている。本当に…流石私のエミリーだわっ!


シリウスは可愛いお鼻をヒクヒクさせて瞬間移動かと見紛みまごう俊敏さで、お肉を前に〈フォーーー〉と奇声を発した。エミリーから"お好きな物をお好きなだけご用意させて頂きます"と聞いたシリウスはモッチャモッチャとお肉を頬張りながら…


〈うむ、エミリーよ(ムグムグ)我は其方そなたを気に入った!アリーシアのお気に入りでもある様だからの、我の加護を授けるとしよう!(モッキュモッキュ)アリーシアと同じとまではいかんが…守護をかけた故アリーシアを守るのに役立つぞ!其方の本分はそれなのであろう?(ムッシャー)〉


"神獣シリウス様っ"とエミリーが泣きそうな顔で、お肉のお皿に顔を突っ込んでいるシリウスに跪いた。


〈よい、気にするな、それより我はこの味の付いた肉のおかわりを所望するぞっ!〉


「はいっこちらに適温の物をご用意しております!」


〈なんとっ!お主ほんに気が利くの、どれ追加で強化の加護を…いやそれよりも攻撃系か…?のうエミリーよ其方は何を望むか?〉


「畏れながら神獣様に申し上げます。私めにとりましては先程の御加護すら勿体のうございます。しかしながらアリーシア様をお守りするお力を授けて頂きました事でより精進する所存にございます。さすればこれ以上の神獣シリウス様のお力は、私めには過分となります故…ひらに御容赦頂きとう存じます。」


〈ハッハッハツ!流石はアリーシアの側近じゃ!アドルフよ、よい家臣を持っておるの!この屋敷は実に居心地がよい。これもアリーシアの聖力と妖精達のお陰じゃな!ん?王家の小童こわっぱどもよ…お主らも知らぬ事の様だな…国王に聞いてみるがよい、何やら知っておるやもしれんぞ…それとアリーシアの母よ、其方も心当たりがあるはずだ…我が存在する様に…伝説、言伝え、これらは確かに存在するのじゃぞ?

おっと話し過ぎたかの…肉〜肉〜美味しい肉〜〉


と再びお肉に夢中となったシリウスをよそに…室内全員が、情報量の多さに処理が間に合っていなかった…。

エミリーはシリウスのお肉係(お世話係)となり、おかわりの指示を出しながら他のメイド達とお茶の準備をしてくれた。アデルバート様達の表情が険しい…ジェイお兄様は落ち着きがないし…オリビア様達に至っては疲れ切っている様子だ…何故か非常に申し訳なく感じる…


「私のせいで…本当にごめんなさい…」シューーーン


「アリー、大丈夫だ。今はまだ混乱しているが心配するな、どうせ迷惑をかけて、なんて思っているんだろう?誰も思っていないからな!アリーはアリーのままでいいんだ。兄様達はいつでも、どんなお前だって味方になるからな!忘れるなよ?沢山頼ってくれ!報酬はクッキーでいいぞっ今度は私にもアリー特製のハート型と手紙をつけてくれ!楽しみにしてるからな?」


アルお兄様がそう励ましてくれる。涙が出そうだったので"全部ハート型で作ります"と耳打ちして誤魔化したら、ぎゅうぎゅう抱き締められた。(既視感!)

"アルお兄様ありがとう、大好き"とお兄様の大きな体に抱き締められたまま小さく呟いた。聞こえた訳ではないはずなのに更に強く抱き締められた。








続きを気にして下さる方、

アリーシアを応援して下さる方、

シリウスを気に入って下さった方、暇潰しの方…


立ち寄り読んで下さる全ての方に感謝を! 雪原の白猫


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