42.アリーシア森へ行く
オリビア編を挟んだので少しだけあらすじを入れました
〜前回のあらすじ〜
「わたくし森に行こうと思いますのっ!」
アリーシアのこの斜め発言により、皆で楽しくピクニッ…(ゲフンゲフン…オッホン!)もとい、皆で魔物除けの草を探す為、森まで調査に行く事になった。
「いいこと?エミリー、この事はジェイお兄様には秘密にするのよ。もし報告する事があれば………あれば…とても嫌な…悲しい事になるわよ!え?例えばですって?何故そんな事を聞くの?あぁ確かに具体的に想像した方が強迫観念が湧くわね、さすが私のエミリーだわ。そうね…貴女に沢山我儘を言って、沢山連れ回すわ、そして貴女が"黒い悪魔"と呼んで食べれないあのチョコレート…いつも私にくれるけど今回はあれを森に持って行くわ、皆でオヤツを食べる時に貴女だけ食べる物がなくて悲しい思いをしたくないのであれば秘密を守ると誓いなさい!」
「はいっ!誓いますっ!ただしお嬢様…私の大嫌いなあの黒い悪魔は溶けやすいので、長時間の移動には不向きです。どうしてもと言われるならば…アルフレッド様にご相談の上、氷の魔法で溶けない様な工夫をされると良いかと。ただそうなると長距離の理由と、目的地を必ず追求されてしまいます。どうなさいますか?」
「そっそうなのね…さすが私のエミリーだわ、ならば…チョコを持って行くのは諦めましょう…命拾いしたわねエミリー」
うちのお嬢様は、悪女をジェイソン様に禁止されてから、こうして私と二人の時にだけ悪女になる…。私の至福の時だ…。そもそも脅し方を迷う辺りでもう可愛い、そして脅す相手を無意識に褒め、出した答えが我儘て…連れ回されるのもご褒美です。私をお側から離す事は選択肢にないのですね…フフ。チョコだって好物だ、でもお嬢様もチョコがお好きだから食べてもらっている。そもそも侍女の私が一緒にオヤツを食べている事がおかしいのですよ…きっと森に行く時も私用の別のお菓子を準備されるおつもりなのでしょうね。流石に他の方がおられる時に、一緒にいただく訳にはいきませんが、お嬢様も皆様も、気になさる方はあの中にはいらっしゃらないでしょう…。最近はずっと私の…を強調されているし…私、全く命拾い出来ておりませんってお嬢様…今の会話だけで私が何度、萌え死にしそうになったか……
こうして迎えた調査の日、王都から離れた森へ集まったのは…先日と同じメンバー➕1名……
「何故…ラシュカール様が?」
「アリーシア様、皆様ご機嫌ようでございます。快晴で何よりです。いえね、丁度、偶然、たまたま居合わせたのです。か弱き女性達を守るのにセオドア君一人では何かあった時が心配ですから、私もお供いたしましょう。ふんふん…ほーぉ、あの草の調査ですか…なるほど〜ピクニックと称してですね、はい理解しました。絶対に口を割らないと約束致します。(そもそも私の子飼い達の情報から…ジュリアン様に叱られる覚悟で、内密にこの場に来たんだし…。それにしても王家と公爵家…両家が探してる物がこんな所で見つかるとは思えませんが、まぁ何が出るか…魔物や蛇でない事を祈りましょうか…)それでは、張り切って出発致しましょう!」
こうして森の探索が始まった。勿論エミリーから報告を受けたジェイソンが、影を付けているので安全面も心配なく、絶好のピクニック日和…あ、快晴の為森の中でも光がよく届き明るく歩き易かった。なのでアリーシア達御一行は、傍らの草や薬草を集めたり観察しながら森の奥へと足を踏み入れた時…アリーシアが何かに反応した。他の同行者には聞こえないのだが…しきりにアリーシアが気にするので、脇道とも言えないような草が生い茂り鬱蒼とした場所へ、その何かを求めて分け入った。流石に戻る為の印をつけながら慎重に足を進めると…アリーシアが"見つけた"と大木に駆け寄った。その根元の大きな洞の中に何かいたようだ…
「アリー!無闇に近付くなっ、そんな無防備に手を出しちゃダメだっ!」
セオドアが追いつき、言うが早いか…アリーシアは躊躇なく手を入れ、中にいたものを確認している…他のメンバーも集まりその様子を見守るが、何がいるのかわからない…みんなの心配を代表してラシュカールが覗き込みながら声を掛ける。
「アリーシア様どうされました?そこに何かいるのですか?危険ですので私が代わりに…」
「大変…怪我を…してるのかしら?…外傷は無いようなのに…この子グッタリしているわ!ラシュカール様どうしましょうっ!…あらっ?目を開けたわっ!」
「キャッ!やだ…どうしましょう…うゥぅ…」
「アリーシア様っ!どうなさいましたっ!?穴の中に
何が?お怪我はっ? 皆さん下がってください!」
慌てるラシュカールがアリーシア大木から引き剥がすと…アリーシアの腕の中に小さな…?黒い毛玉が丸まっている…動物?なのか?いやっ魔物かもしれないと掴み取ろうとすると、毛玉が牙を剥いた!とてもとても小さな口から覗く小さな犬歯…え?何これ…とラシュカールが動揺していると
「ラシュカール様っ、この子が怯えますので手を出されないでください。それとご心配おかけしてすみません、わたくしは大丈夫です、怪我もしておりません。この子のあまりの可愛さに少し動揺してしまったようです…」
アリーシアと毛玉とラシュカールは皆と合流した。毛玉の正体を探ろうと手を伸ばすが、アリーシア以外には決して触らせまいと威嚇してくる…モサモサの毛の中の小さな口を開き、一丁前に"シャーッ"とか"フーッ"とかやってくる。その姿が見たいが為に途中から皆交代で手を伸ばし触るふりをしていると、アリーシアから注意が飛ぶ。取り敢えずそれ以外の害はないようなので、そのまま開けた場所まで移動して昼食の準備をしていると、セオドアが身体に異変はないか聞いてきたので大丈夫だと答えると、
「さっき、木の前でこいつから何かされなかった?俺しか気付いてないけど、アリー…また光ってたんだぞ?一瞬だったけど…いつもと、いや…いつもよりファーってなってシュッて…まるでこいつが光を吸い取ってた感じだった…だから、なんか魔法とか使われたんじゃないかって思って…それにずっとアリーに引っ付いてるし…
アリーは怖くないのか?この毛玉動物か魔物かもまだわかんないし、なんかの子供ではぐれたのかな…?」
「平気よ?なんともないわ、それにこの子はおびえてるみたいだもの…きっと甘えてるんだわ。食事をしながらゆっくり考えましょう。」
各自持ち寄った軽食が並べられ、すっかり準備が整っている。ラグをひいただけの地面だが、そのやわらかな座り心地に皆が驚いていると、ミラが自分の魔法で座る場所の土を柔らかくしたのだと、ちょっと恥ずかしそうにしている。アリーシアがなんの気なしに、"耕された土の上ってこんなに気持ちがいいのね"と感心していると、ミラ達が不思議そうな顔をしていた為、何か変な事を言ったのだろうかとアリーシアまで不思議に思った。
「さぁ、皆さん食事にって皆さん同じ様なお顔をしてどうされたのですか?…まぁ取り敢えず頂きましょうか、あっ!アリーシア様は両手がその黒いので塞がっておりますので、わたくしめが責任を持ってお口に運んで差し上げますからご安心くださいね!」ニコー!
ラシュカール ボールドウィン…侯爵家嫡男・歳上・第三王子の側近…それらの肩書きがチラつく為、皆何も言えないが大体同じ事を思っていた…
安定のラシュカール!




