33.アリーシア後光がさす
小さい子が遊びながら寝る瞬間て尊いですよね…
急に落ちる子もいれば、必死に抵抗したり、甘えん坊が発動したり…ご機嫌斜めになったり…
本当バイタリティーに溢れてるなぁと感じます。
アリーシアは二人の小さな体を抱きしめたまま、二人が落ち着くのを待った。そしてルーナに身体はきつくないかと横になることをすすめると…
「アリーお姉ちゃん…私ね、きつくないの…だからこの子達と遊んでもいーい?ステラお姉ちゃんとも一緒に」
「え?ルーナちゃんが大丈夫なら…でも無理は良くないわ、後で沢山あそ…」
「んーん、本当にいつもと違うの。お願い少しだけ…」
「わかったわ、でも後からきつくならない様に…横になりましょうね、そうだ、この子達に名前を付けてあげましょうか。」
アリーシアはそう言いながらルーナに上掛けをかけてやり、隣の椅子に座っていたステラを自分の膝の上に乗せ、二人がミーちゃん達を可愛がる姿を、楽しそうに…優しく見守っている。するとこれまで黙っていたセオドアがアリーシアの側に跪き…"聖母様"…と呟いた。妹二人は兄のその様子にはあまり気付かず、無邪気に貰ったものを"すごく可愛いでしょ"と見せていたが、アリーシアは慌ててセオドアに立つ様に言い、さっきまでステラが座っていた椅子に座る様促して、隣に座らせた。
「初めてなんです…この一年、ルーナが病気になってからこの子達がこんな風に泣いたり笑ったりしてるのは…ずっと二人とも色んな事を我慢してて…まだ小さいのに…俺が学園に入ったせいで、二人にも母親にも負担かけてしまったから…辞めて働こうとしたんだけど…母さんが…卒業しなさいって言ってくれたんです。でもルーナの病気は治らないし、俺…どうする事も出来なくて。いつだったか…ステラが教会で配られたぬいぐるみを貰って来たんです。アリーシア様のぬいぐるみを…二人ともとても可愛がって…ルーナもとても喜んでました。でも最近は体を起こすのも辛そうだったんです……。それなのに、今日のルーナはまるで…病気になる前みたいに…声も大きくて、こんなにはしゃいで…そんな事有り得ないのに…本当に病気が治ったみたいで…全部…全部アリーシア様のお陰なんだと思います…いや、アリーシア様のお陰です。ぬいぐるみ達もですが…こんな高価なものまで…それに…この子達の気持ちを受け止めてくれて、…本当にありがとうございます、俺はどんなに感謝しても足りないほどっ!…」
アリーシアは感謝を伝えるセオドアに、静かにと口に人差し指を当てた後、膝の上のステラとベッドのルーナを指差す。二人とも遊びながら眠ってしまった様だ…
セオドアはアリーシアからステラを受け取りルーナの横に寝かせる。二人は続き間のキッチンのテーブルに行き、セオドアがお茶を淹れる、それをエミリーが手伝いながら持参した茶菓子を出しているとアリーシアがルーナ達が寝ているベッドを見ながら、
「二人とも、とても優しくていい子ですわね…パペットとブレスレットはわたくしが作ったものですが、ぬいぐるみや小物はここにいるエミリーと、お針子達に頑張ってもらいましたの。あんなに喜んでもらえて頑張った甲斐がありましたわ、ねぇエミリー?それとブレスレットは中に気泡が入っていたり、形が不揃いで商品から弾かれたものを、わたくしが手芸道具として集めていたものですから、高価でもなんでもないんですの…なのでセオドア様も気になさらないで下さい。フフフ、どんなに幼くても、女の子ってキラキラしたものが大好きなんですもの、だから…わたくしルーナちゃんの病気が少しでも良くなる様にってお願いしながら作ったのです。本当、喜んでもらえて良かったですわ!」
そう笑顔で話すアリーシアがキラキラ光っている…比喩ではなく本当に…セオドアは目を擦り、カッと見開いてアリーシアを見直すが、やっぱり…キラキラしているのだ…侍女のエミリーを見ると、驚いてた様子は全くなく、"うちのお嬢様の笑顔可愛いでしょ"的な顔でこちらを見て、うんうんと頷き返している…。公爵家ではこの現象は普通なのだろうか?いや、アリーシアにとっては通常装備なのかもしれない。心なしかベッドの辺りもキラキラして見える…俺の目がおかしくなったのだろうか?それともアリーシアが本当に聖母様、女神様なのだろうか…セオドアは混乱しながらも椅子から降りて、胸の前で手を組み再びアリーシアに跪くのであった…
エミリーは、また信者が増えてしまったわ…ジェイソン様にご報告しなければ。と半ば予想していた事ではあったが、改めてアリーシアを誇らしく思った…。ただ、少しだけ引っかかっていた。あまりにも…子供の扱いが上手かった事…そして、小さな子供と気安く話す事にとても慣れていた事に…若干の違和感を感じていたが、アリーシア至上主義のエミリーは"お嬢様だものね"で済ませてしまった。もちろんエミリーにはアリーシアのキラキラのエフェクトは見えてはいなかったが…普段からそれに近いフィルターが、アリーシアの周囲の人間にはかかっている為、例え目にしてもさほど驚く事はなかったであろう…。
こうして無事お見舞い訪問を終えてアリーシア達は
セオドアの家を後にした。目を覚ました二人はアリーシアがいない事を残念がったが、"また一緒に遊びましょうね!"と猫のイラスト付きの手紙を見て、次もあるのだととっても喜んだ。仕事から帰った母親は二人を見てとても驚いた、特に…ルーナが椅子に座ってご飯を食べていたからだ…何があったのかとセオドアに聞く前に、ルーナを抱きしめた。今朝までベッドの上で…食事も沢山摂れない状態だった…夢かと思ったのだ。抱きしめて現実だと実感していると、姉のステラが嬉しそうに、新しい妹が増えたのだと…自分だけのぬいぐるみなんだと可愛いぬいぐるみを見せてくれた。よく見るとテーブル端に初めて見るぬいぐるみなどが沢山置かれている、母親の腕の中でルーナが、一緒にご飯食べてたのと嬉しそうに笑っている…声を出して喜んでいる…。セオドアがハンカチを渡し、今日あった事を全て母親に話すと、公爵家へお礼に行くと言うのでセオドアが止めた。先ぶれもなく、自分たち平民が行ってはダメだと…そして母親は…感謝の気持ちを最大限込めて手紙を書いた。綺麗な文字ではないし、言葉もきっと間違っている…それでも息子に聞きながら、心を込めて書いた手紙を息子に託した。自分の感謝の気持ちが伝わります様にと…セオドアはアリーシア様ならきっと喜んでくださるよ!と…少し前まで学園を辞めると深刻に悩んでいた息子が、本当に嬉しそうに、晴れやかな笑顔で学園へ向かったのだ。母親はその姿を見て、息子までも救ってくれたのだと改めてアリーシアへ深く感謝をしたのだった…。
エミリーの報告先は…
1.ジェイソン(公爵家次男)
2.キャサリン(アリーシアの母)
3.アドルフ(アリーシアの父)
4.公爵家の家令、執事、侍女長
5.侍女仲間
6.アルフレッド(公爵家長男)
と明確な順位付けがされてます




