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29.ジェイソンの愛情

いつもより少し長めのお話です

兄としてのジェイソンをお楽しみください。

“コンコン コン”

「アリー、入っていい?」


「ジェイお兄様、お帰りなさい!お疲れ様です」


「アリー聞いたよ、お友達と楽しい時間を過ごせた様だね!この部屋に可愛いのが溢れてる状態も久しぶりだ!ジュリアン様達が来た時に片付けてたもんね!あっごめんごめん、それで話って何?僕だけが聞いていい話?」


「ジェイお兄様、お忙しいお兄様のご負担にならないかと心配なのですが、ご報告をと…何から話せばいいか…とにかく私はお友達に恵まれていて、ただ解決策が…最善がわからないのです…カーター様がどの様な考えなのか…なので、」


「アリー、あの女に何かされたのかい?」


お兄様の表情が変わった…私は慌てて今日聞いた事を伝えた。きっと上手く話せていなかった、でもお兄様は私の頭を撫でながら急かさず聞いてくれた。その時エミリーも一緒にいた事と、エミリーが気になっていた点も話した。


「よく話してくれたねアリー相談してくれて嬉しいよ。エミリーが言う様に…アリーに対する嫌がらせだけでは済まないかもしれない、どれほどの計画性があるか…それとも操られているのか、どちらにしても協力者とやらが気になる。エミリーにも詳しく聞いておこう。後の事は任せてくれる?」


「お兄様…私考えたのです…狙いが私の孤立で黒幕がいるのであれば、私が囮になって…次の段階に進ませるなり、報酬の協力者とやらを特定するのはどうだろうって…勿論表向きだけの孤立とはいえ、寂しいかと思いますが…危険は無さそうですし、相手の出方や様子を見てみてもいいのではないかと思ったのです。お願いします、お兄様…私は何も知らないまま守られるのが心苦しいのです。私のせいでお友達や公爵家に被害が及ぶかもしれないのに…何も出来ず…役に立たないのはもう嫌なのです!」


「アリー……誰がそんな…事を…役立たずだなんてっ!

まさかっあの女っリリー カーターに言われたのかい?

あぁ、アリーそんな事ある訳ないだろう?皆君が大切で大好きで頼りにしてるんだよ?お友達だって、そんなアリーに助けられて感謝してるんだ心配しなくていいっ!

アリーの役割は明日ゆっくり考えよう…今日はもうおやすみ、お兄様がついていてあげるから、ね?」


お兄様はそう言って指で私の涙を掬い取ってくれた…

ソファーからベッドに移り、お兄様が手を握ってくれている。添い寝をしようか?なんて言いながら唄を歌い、私を安心させてくれる。どこまでも甘やかしてくれるお兄様……心配かけてごめんなさい、ありがとう…と言えたかわからぬまま、私はウトウトと眠りについた…



寝顔まで可愛いアリーの頬にキスを落とし、繋がれた手をそっと離して部屋を出ると、エミリーが控えていた。


部屋で詳細を聞くと、アリーの話よりも陰険さが滲み出ている。友に関しては、アリー自身の功績だが本当に良い友達を持った、友の裏切りではなく友情を確信できた事は大きいだろう、さっきのアリーの様子と提案してきた内容をエミリーに話してみる、思案した後、エドにアリーの様子と発言をそのまま伝えて相談する事をすすめられた。エミリーのこの手の助言は無視できない…

その後遅くに帰ってきた兄と父にも報告して公爵家の動きを決める。アリーの提案については一旦保留として

俺は諦めに近い気持ちで、エドワードに挑む事を決めた


翌朝アリーは兄に、アデルバート殿下への伝言を頼んだ後、兄の耳に口を寄せ掌でそれを隠しながら何か言っている…(何だそれ、羨ましいっ)伝え終わったアリーの体を兄がぎゅうぎゅう抱き締めていた…(何だよ、最初に頼られたのは俺だぞっ)隣にいた父は明らかに憮然とした態度で馬車に乗り、兄はご機嫌でそれに続いた。多分俺は父と同じ顔をしていたのだろう…アリーが不安気に、自分のせいで寝不足なのでは?と心配してしまったので大丈夫だと伝え、一緒に馬車に乗り込み学園へ向かう。


朝の仕事の為生徒会室に入るとエドワードがいた、挨拶をするとすぐにアリーの事を聞いてくる。今接近禁止だからその反動が俺にくる…面倒くさい。

放課後相談したいと時間をもらう…以前とは違いコイツに相談するのが躊躇ためらわれる…

反してエドは内容がアリーの事だと確認すると部屋を出て行き、戻ってきた時には授業免除の許可を二人分貰ってきたからすぐに話をしようと、自らお茶を淹れ出した。何でも最近、アリーに飲ませる為に練習しているのだと…第二王子が何をしているんだとツッコミたかったが、意外に美味かった。何でも器用にこなすエドらしい。喉を潤した俺は、お互い先に仕事を終わらせようと提案し、二人で急ぎのものと、そうで無いものまで終わらせ時間を作った。時間はあっという間に過ぎ、昼前になっていた…俺は自分が聞いた事を細かく話し、アリーの考えや提案を伝えた…するとエドは紅茶を一気に煽り、音を立ててカップを置いた…何か考えている様だったので静かに待っていると、重い口を開いて、以前公爵家でアリーに打ち明けられたという、アリーが抱えていた思いを…その時のアリーの様子とともに話し始めた…。


「そんな…アリーがそんな事を?…俺が、俺達の存在が…アリーを苦しめていたのか…声をあげて泣いた?」


「ジェイ、そうじゃないっ思い違いをするな!

アリーシアはお前達の役に立ちたいと、幼い頃からそう願って頑張ってきていたんだ…羨んで、羨んでも…どうもならない事を悟り、自分で自分を築いてきたんだ…ずっと抑え込んでいた気持ちが呼び起こされたんだ、自分が持っていないものを、いくつも持っているお前達に認められたいと、頼られたいと。お前達と共に公爵家の力になりたい、とな……。あの日、兄上達が学園に来た日だ、アリーシアの反応から察するに、リリー カーターが関係している様だった…大方あの女になじられたのだろう、魔法に通じて無い女は役立たずだとか…おいっ!俺に殺気を向けるな!とにかく、アリーシアの深い愛情を向けられているお前が、そんな悲観的な感情でアリーシアの健気な思いを潰すなっ!」


「そ…うだな…でもアリーが囮になるなんて…何があるかわからないのに…危険なんだぞ?エドもそう思うだろう?」


「ジェイ、守るんだ。アリーシアの思いを汲んで…その上で、全てから守るんだ。お前達に出来ないとは言わせないぞ、勿論俺達も手を貸す。なぁ…ジェイ、アリーシアはもうお前の後を付いてくるだけの幼子ではないだろう?大丈夫、あの子は賢く強い子だ。信じて見守る事も大事だと俺は思うし、俺はアリーシアを何があっても守る! …だから接近禁止を解除する様公爵に掛け合ってくれ!アリーシアに会いたいんだ……頼む…」


「フハッ最後ので台無しだなぁ…、エド、俺だってわかってはいるんだよ…そして普段ならアリーの思う様にさせている。でも、心配なんだ…アリーが悪意に晒されているなんて…そもそものあの子は、とっても気が弱くて、臆病で…とても優しいんだ。自分の為だと言いながら、結局は人の為に尽力し心まで尽くし助けてしまう。そうだ、エド君は覚えてるかい?俺の幼い頃を…アル兄さんに嫉妬してるくせに、魔法の才能で鼻を高くして、まぁ傲慢なクソガキだった。そんな俺が真っ当になったのはアリーのお陰なんだ。とにかく純粋で天使みたいで…そんな小さな子が"おにぃたま"って言いながら必死に俺の後を付いてくるんだぞ?父上と兄上の事は怖がって、俺の優しい顔が好きだと慕い、俺が使う魔法を喜び、そばから離れなかったんだ…俺が守らなきゃって思ったんだ……アリーの成長は嬉しいよ?でも同じ様に、俺から離れていくのが嫌なんだ…まして悪意満ちた危険に自ら飛び込むなんて…」


「泣くなっジェイ、大丈夫だ。まずアリーシアの周りを綺麗にしよう、そしてキレイサッパリ不安や憂いをなくしてやろう!それで更にアリーシアが成長し、兄離れしたとしても、お前達を繋ぐ愛情が変わる事も、無くなる事もないだろう?だったら兄であるお前の方から手を離してやるんだ、あの子はきっとお前の判断に感謝し喜ぶと思うぞ…"兄から認められた、信頼を得た"ってな」


「泣いてないっ!……でもエドの言う通りだ、何よりアリーに俺や兄の事で、悲しませたり辛い思いをさせるのは嫌だ…それはアリーを愛しく思う気持ちと変わらないほど強い……アリーの提案込みで作戦を考えよう。」


昂った気持ちを落ち着かせていると、エドが紅茶を淹れなおしてくれた。


「エド、君のとこの兄弟関係も色々あった?」


「うちはそんなに可愛いもんじゃないぞ、俺は兄を尊敬しているし、弟は…ずっと真似をしている様だ…

ジュリアンがな"愛の形は人それぞれ様々だ"と言ってたんだ。どうやらラシュカールに諭され、尻を叩かれたらしい…アリーシアとの婚約をもぎ取ると本気らしい、どうする?公爵家で引き取ってくれるか?」


「いらない、いらない。アリーは結婚なんかしないで、うちにずっと…いや……アリーが望む相手が現れたら…その時は腹を決めるよ……父上もまだ若いし、何よりうちにも優秀な長男がいるからな。公爵家は安泰だっ!

ジュリアン様には悪いが、辺境の遠い地で爵位貰って頑張ってくれるといいんだけど…

エドはそういう訳にはいかないだろうね…

全く、ジュリアン様にもアリーにも兄の顔してるけど

一番油断出来ないからっ!」


「おいっ何故だ?それよりも禁止令早く解除してくれよ?今後の事もあるしアリーシアとも話をしなければ」


エドのアリーに対する思いが妹に向けるものではないと俺は知っている…でも、本人が自覚する迄、手助けなんかしないぞ!とせめてもの抵抗をするつもりだ…。

さっき、エドならアリーの相手として認めても…とよぎった事には気付かないフリをして…


さぁ!アリーの平穏の為、作戦を立てようっ




ジェイソンの思いは親に近いのでは?

と思えるほどの深い愛情です。

旅をさせても後ろからついて行くと思います。

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