22.アリーシア、レベルUPする
読んで下さりありがとうございます。
久し振りのアリーシア編です。
「お嬢様、紅茶のお代わりはいかがですか?」
「ありがとうエミリー、紅茶は後でまた頂くわ…何か本が読みたいから書庫から選んできてくれる?エミリーのお薦めの本でいいわ。」
「かしこまりました、では少しお時間頂きますね」
そう言って私は部屋に一人になった。
エドワード様達がいらっしゃって数日が経つが…
あの日の事を思い出すと………未だに叫びたい…
ベッドに飛び込んで枕に顔を当て、大声で…ちなみに
今朝もやった…そろそろエミリーにはバレてそうだ。
『だってジュリアン様やエドワード様にも…あんな風に頭を撫でられて…エドワード様には盛大に泣きついてしまったし、その上見られたくないだなんて…きっと呆れてしまわれたわよね…でもっ、でも!エドワード様もいけないんだわ、乙女の泣き顔を無理矢理に暴こうとするだなんて、そうだわ!あの時はエドワード様に優しい言葉を頂いて思わず感情が昂ぶってしまったけれども、その後は絶対にエドワード様が強引だったわ、そもそも最初から…てっ手を握られて…いらしたし、私が泣いてしまったのは不可抗力としても…むねっ胸に抱き締めるだなんて!……でも慰めてくださろうとしていたのよね……もうっ、もぅっ、』
アリーシアが悶絶しながら自問自答しソファーのクッションに八つ当たりをしてる頃、アリーシアに本の選定を任されたエミリーは恋愛小説の棚の前で、
①"許されない禁断の兄妹愛"
〜妹は兄の本気を身を持って知る〜"
②"お願い私の王子様"
〜お姫様より貴方の特別になりたい私〜
③"不遇執事の叶わぬ恋"
〜主人を敵に回しても僕は貴女を諦めない〜
④"真実の愛はすぐそばに"
〜性別を超え、愛を探し求めた男達の物語〜
迷いに迷って、②を選んでアリーシアの元へ戻りながら
『私のお薦めでいいと言われて、つい熟考してしまったけれど…危うくお嬢様にクセの強い本をお渡ししてしまう所だったわ…これなら一番マイルドよね…』と若干の不安を胸に本をアリーシアに託した。
それを読んだアリーシアは聖書を手に入れたっ!と一気に読み終わり…シリーズ制覇の為エミリーに頼み王都まで買いに行って貰うなどして、しまいにはキャラの挿絵を増やし姿絵として売り出す事を推奨した……結果、原作共に関連商品も爆発的な売り上げとなった。
その後、アリーシアの推しへの愛を勘違いしたジュリアンが迷走したり、王子達がこっそり愛読してたりと色んな所に影響を与えたのだった…
一番ビックリしていた本の作者はアリーシアのお陰と心酔しアリーシアを題材にした物語を執筆中だと…それを嗅ぎ付けたアリーシアの兄達が加わり超大作感動スペクタルものにして観劇の台本になったりと、更に影響は広がり続けたが…真の功労者はエミリーなのであった…。
恋愛ごとに疎いアリーシアは屋敷の書庫に恋愛小説を増やし徐々に知識を増やしていくが、アリーシアの兄達によって内容は精査されていた…なので…エミリー好みの刺激の強い本は軒並み撤去されていたのであった…。それに気付いたエミリーは書庫の本棚の前で"私の糧が…"と膝をついた。しかし、それまでの経緯を侍女長から報告を受けたアリーシアの母がエミリーの功績を讃え、自室の隠し部屋の秘蔵書と書庫から避難させていた本をエミリーにも開放した。二人は"エミリー・キャサリン様と呼び合うほど同志と(なかよく)なり、普及活動に勤しむのであった。
時は戻り…
エミリーに頼んでいた本を読むと、どうやら本の中の登場人物は、それまで気にしていなかった身近な男性に惹かれていくようだ…相手の事が気になり出した原因は何かと読み進めていくと…これ…私だわ…!…チョロいが過ぎるほど見事に感情移入してしまった。恋愛若葉マークのアリーシアは夢中になり、自分の身に起こった事を小説の内容で答え合わせをしていった。この最初の一冊目は、兄達の目を逃れており、幸か不幸か…絵本に毛が生えた様な恋愛物…いわゆるベッタベタのお約束ストーリーであったのだが、アリーシアにとって恋愛とは未知なる新ジャンルであったので、この本こそが…今自分が置かれた状況や、もどかしい感情を理解、肯定し、正しく導いてくれる聖書になるのだと確信に近いものを感じ、"これであのスキンシップ過多の王子様達に立ち向かえるわ"と
アリーシアは曇りなき眼(乙女フィルター)でもって意気込むのであった………。
ベッドに入り、夜が更けても続きが気になり悶絶しながら小説を読むアリーシアが…自分の悩みや不安やリリーの事で眠れない夜を過ごす事はなくなっていた…。
アリーシアのお母さんのキャサリンとエミリーは、
まさかの趣味被りでした。
アリーシアの今後が気になってもらえたら、
またお立ち寄り頂けると嬉しいです。




