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20.エドワードの百面相

エドワード視点です。

「はぁ……………」


高等科の校舎、生徒会室


「エード、また溜め息…いい加減鬱陶しいんだけど!」


「ああ…ジェイ、すまない…」


アリーシアの二番目の兄であるジェイソンは生徒会長をしている。本来なら俺が担うべきだったのだが、卒業して忙しくなった第一王子である兄の補佐もあり、ジェイに頼んだ。こいつは俺が頼んだ時は秒で断ったくせに、アリーシアが"高等科の生徒会長なんてすごい"と言った途端快諾した…。

とにかくこの兄弟はアリーシア至上主義なのだ。確かにアリーシアは初対面の時から可愛かった。この兄弟を見て、(多少の異常さは感じていたが)妹の居ない俺達は、妹に向ける感情がよく分からず…ただ微笑ましく感じる存在だった。

アリーシアが成長し、その優秀さと聡明さ、美しさに家柄…どれをとっても王家に相応しく、陛下や母上も気に入っていた。そうなると、王家に望まれるのは必然で…しかも弟のジュリアンは最初からアリーシアを殊更に望んでいた。そのアリーシアは、俺と兄上とは少し歳が離れていたが、その資質から王太子の妃となるべき、と…周りが動き出した…政略渦巻く貴族社会で、5〜6歳の歳の差は何もおかしく無かった。兄上は満更でもない様子で、更なる成長を楽しみにしている様子だったが、

俺の感覚はジェイ達に近いもので…むしろジュリアンに同情していた。だから…アリーシアが変な女に目を付けられていると知った時にはジェイ達と同じ様にいきどおったし、塞ぎ込んでる理由がわからないと相談された時は自ら動いた。ただそれも…兄達は公務で、ジェイは討伐に出ていたからだ。予定が空いていたから、ジュリアン達のおりとして公爵家へ向かった…はずだった…それが、あんなに感情が動かされる事になるなんて……


アリーシアに向ける感情は妹に向ける"それ"であったはずなのに…あの子の涙を見た時だろうか?むせび泣く姿か?それとも声をあげ、縋り付いて泣いた時か?…

初めて会った時から、幼い表情とは裏腹にどこか大人びていて、同年代かと錯覚する時さえあった。清々(すがすが)しいほど凛として、常に正しさを持っていた…そんなアリーシアが…ポロポロと、瞬きもせず涙を流していた…。それほど密な付き合いでは無かったとしても、あの子が弱音を吐いたり泣く姿を初めて見たんだ……

気付いたら腕の中に囲っていた…いや、抱き締めていた。とても華奢で…それでいて柔らかで…いい匂いが…って違う!そうじゃないっ違うんだっ、!俺は純粋・・に慰めたいと、守りたいとあの時強く思ったんだ…。…とことん甘やかしたい、この子に甘えられたい、頼られたいと思った。きっとジェイもアルもこんな気持ちなんだな、と…。でもあの瞬間…アリーシアが俺から離れようとした時、何故か意地悪をしたくなった、嫌がると分かっていたはずなのに…慰めて優しく話を聞くつもりだったのに…怯えさせてしまっただろうか?嫌われてしまったら……

自分の事なのにわからない事だらけだ…ただあの日は…アリーシアの涙が作った服のシミさえ愛おしく、乾いていく事には寂しさまで感じた…。


おかしな事はまだある…最近、ジュリアン達に警戒されるようになり、アリーシアが手ずから作ったプレゼントなんだと、ぬいぐるみを自慢げに見せられた…ぬいぐるみに罪はないが何故か腹が立った。


ジェイ達も…俺が知らないアリーシアの幼い頃や、知らない情報を、羨ましいか?と言わんばかりに伝えてくる…いや、アリーシアのマル秘情報は嬉しいが、何故か今までと雰囲気が違う…これまでは楽しくアリーシアの事で話に花が咲いていたはずなのに…その花にトゲを感じる…確かにジェイにはあの場面を見られて誤解を与えたので、仕方がないのかもしれない。しかし俺も、アリーシアの悩みを打ち明けられたのは俺だけだと、優越感を感じるのだから、なかなかいい性格をしているのだろう。

俺が悶々と思考を巡らせていると、ジェイが口を開いた


「エド?さっきから気持ち悪いよ?…顔っ、しかめたりニヤけたり…まさかアリーシアで変な想像をしてるんじゃっ?!!」


「おいっ待てっ、何故そこでアリーシアが出てくるっ?

いや、違わなくはないな…確かにアリーシアの事も考えてはいたが、へっ変な!とはなんだっ?」


「やっぱり……、敵はジュリアンではなく、君だったか…クソッ、油断してた…俺達と同じ様に妹愛だとばかり…至急兄上達に報告して手をまわ…いや…待てよ、エドにはハッキリ言わないと伝わらないしこたえないかもね?」


「ん?なんだ?どうしたんだ?ブツブツ言わずにハッキリ言ってくれ、じゃないと分からないじゃないか。」


何故アリーシアを思い浮かべていた事がバレた?

俺がにやけていただと?そんな顔でアリーシアの事を思い出していたのか?と少し動揺したが…ジェイが珍しく歯切れが悪く、何やら言いたそうにしていたから、この動揺を少しでも誤魔化す為ジェイに先を促した。


…ジェイによって爆弾を投下されるとも知らず…



エドワードのとジェイソンもう少し続きます。

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