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19.アリーシアの泣き顔

読んでくださる方が増えていて、とても嬉しいです。


今回も甘々な感じです…


楽しんで頂けるよう、日々精進します。

エドワードがアリーシアの顔を覗き込むと、大きな瞳から涙が次から次へとあふれている。それは瞬きせずともポロポロと流れ落ちた…。


驚きと、流れる涙のあまりの美しさに、思わず我を忘れたエドワードが口を開きかけた…その刹那せつな…アリーシアと目が合った。"吸い込まれる…"そう感じたエドワードは、こぼれ落ちゆく涙さえもスローモーションになったかの様な錯覚におちいるが…先に言葉を発したアリーシアによって現実に引き戻された。


「わっ私はっ 役っ…役立たずっでっ…ほっんっとうっはっ、ほんっと…の私っはっ…何っもっ出来っなっいのですっ! … まっまほーだってぇえっひとっつも!もってないっし、…がん…がんっばってもっつかっえっないっみんなっのやっ役に…たちったっいのにぃっ……」


せきを切ったかのように泣き出すアリーシア…まるで幼子おさなごの様に…あふれ出る涙を拭いもせずしゃくり上げ、言葉に詰まりながら…それでも真っ直ぐにエドワードを見つめ気持ちをさらけ出していく。


エドワードはアリーシアの頭を自分の胸にいだいた。何が起きたか頭が理解するよりも速く体が動いた…自分の胸にアリーシアの涙を染み込ませる、悲しみや不安な感情までも吸い取る様に。アリーシアの頭と小さく震える肩を優しく包み込んだ…。するとアリーシアはすがる様に泣きだした。

どれくらい時間が経ったのか…それとも時間の流れ方が変わったのか…エドワードは気にしなかった。ただ自分の胸で泣いているアリーシアを落ち着かせる為に、頭や背中を撫でた。次第に泣き声も小さくなり、腕の中のアリーシアがモソモソし始めた、どうやら両手で自分の顔を覆っているようだ。

「アリーシア?」

俺はアリーシアの背に両腕を回し、互いの体を少し離して声を掛けた。泣き顔を見せたくないのか…俯いたアリーシアの後頭部しか見えない…ただあらわになっているうなじが真っ赤になっている…


「エドワード様…わたし…なんて事を…。申し訳っございません!ど…どうか先っ程の事は、お忘れ下さいませ!もう大丈夫ですっので、あの…腕を…」


激しく泣いた名残でまだ少ししゃくり上げつつも、いつもの自分に戻ろうとしているアリーシアをみて…普段ならアリーシアの言う事を聞いて解放していただろう、いや、そもそも腕の中に囲っている状態が普段ではない事なんだが…俺は落ち着いてきたアリーシアの話を、適切な距離で聞くべきで、頭では冷静な判断が出来ている筈が…体と、腕が拒否をする…そろりと解かれた腕を感じたアリーシアがピクリと反応し、顔を手で覆ったまま、距離を取ろうとモソモソと動いている。

(何だその動きは…可愛いが過ぎる!…逃がさない…)

俺はアリーシアの腰に手を回し、もう片方の手で顔を覆っている手を掴んで言った。


「アリーシア…隠すな…顔を見せてくれ」


自分でも驚くほど甘く優しげな声だった…と思う…

アリーシアはどう感じただろう?怯えてはいないか?…

アリーシアの顔から手を剥がそうとした時、


「いやっ…やめっやめて下さいっ!…わっ私の顔…絶対ブチャってなっていますっ…こんなブチャった顔…エドワード様に見られたく…ありませんっ…」


アリーシアの拒絶の声が上がり、同時にサロンの扉が

バーーーンッッッ!と開いた………


この場面だけを切り取ると…ソファーの上で顔を隠し、のけぞるアリーシアの手首を掴み詰め寄るエドワード…

きっとアリーシアの声も聞こえていたのだろう…


そこに現れたのは、ある意味一番厄介な…セイオリス公爵家の次男ジェイソンであった…。勿論ズモモモモモッという効果音付きで周囲は風が吹き荒れている…よく見ると髪も逆立ち始めている…このままではスーパーな何かに変身してしまう……!!


いち早く動いたのは侍女のエミリー、アリーシアを庇いながら速やかに部屋を出ていく。後に残ったのは、怒りのジェイソンと、心ここに在らずのエドワード。

ジェイソンはアリーシアとの事を問い詰めたがエドワードはどんなに責められようが、アリーシアが泣いた理由だけは話さなかった。ジェイソンにはアリーシアの承諾なしに話せないと理由付けたが、本心としては、自分にだけさらけ出された感情を、今だけでもいいから自分の胸だけに秘めていたかったのだ。

どうにかジェイソンをなだめる事は出来たが、

帰る時もアリーシアには会えなかった。ジュリアンとラスカルの事は頭になかった。

城に帰り着き、事の経緯いきさつを聞きつけた兄上がやってきたが、大した話も出来なかった。きっと呆れられただろう。考え事がしたいと兄上の後は誰も部屋に通さず一人考えた…。アリーシアに謝りたいと、気は焦るが時間が必要だ…自分の事なのに上手く整理がつけられない…。部屋の窓から差し込む柔らかい月明かりで、時間の経過を知る…目を閉じると、揺らめく月光の様な銀髪をフワフワと揺らすアリーシアが想い起こされる…月明かりにさえアリーシアを思い出す自分に戸惑いながらエドワードの夜は更けていった。



エドワード……一歩リードとなるか?

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